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テキーラ・サンライズ
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いつもの溜まり場。
普通の人は有りもしない噂に怖気付いて近寄らない俺達の溜まり場に。
そこには昔っから馴染みの顔や、まだ新しい顔ぶり、そんな仲間達が揃っていた。
「集まってもらって悪いな。 一つだけ報告がある。 俺は説明も不満もめんどくせぇからしねぇし受け付けねぇぞ。 不満があんならお前らが好きな様に喧嘩でも何でもして好きに変えりゃあいい、けど卑怯なことした奴は許さねぇからな……。 って、まあたまにはらしくない事言ってみたけど早い話次のリーダーを決めた」
「ま、マジっすか?!」
「やっぱり耀さんリーダー下りるんですね」
「耀さん……居なくならないっすよね?」
集まった奴らに手っ取り早く説明をすればそれなり批判を含む声も上がる。揉めたら面倒臭ぇなこりゃあ。 でもまあその時は喧嘩でも何でもさせればいいかとそんな気持ちでもう一度口を開いた。
「文句は後でな。 肝心の次のリーダーは、俺が信頼してる怜だ。 ……文句がある奴から今この場で喧嘩でも何でもしろ。 俺が見てやるから」
「……いや、無いっすよ」
「俺も俺も!」
「怜は耀さんから直に育ててもらった様なガキだしな」
「……だってよ怜? 良かったな認められてんじゃねーか」
「うるさいな耀」
しかし案外、怜を新リーダーに推薦した事は思う以上にすんなりと受け入れられた。
驚いたのは怜も同じだったのか、珍しく緊張していた顔はいつもと変わらない不敵な笑みへと変わりあっという間にいつもの調子に戻っては皆をからかい回って遊んでいた。
そうして暫く、チームも怜を先頭に纏まって来た頃、今度は夏紀の結婚式が目前に迫っていた。
「耀」
「ん」
「結婚式本当に来ないの?」
「そんなに来て欲しいか?」
「当たり前だろ……幼稚園から一緒なのに。 耀は俺の親友だけど、本当の兄貴みたいなものだから」
「そーかよ」
悲しそうに眉を垂らして呟く夏紀には悪いがどうにもおめでとうと言える心の広さは無かった。
お前が俺を兄貴みてぇに慕ってきたこの十数年。
俺はお前を性的対象でずっと惚れてきたんだから、最後の意地でぜってぇ言ってやらねー。それが唯一俺が夏紀に出来る嫌らしい悪足掻きだからだ。
「ちょっとでも来れないの?」
「行けねぇもんは行けねぇよ。 駄々こねんな」
「……」
タキシードを着て、隣にあの綺麗な女を連れて歩いて、誰かのもんになる夏紀を見送るなんて御免だ。
今迄のお付き合いとはわけが違う。
書類上でも何でも夏紀はそいつただひとりのもんになるんだ。
そのうち沢山の餓鬼もできるだろう。
温かい家庭を築いて負けねぇぐれー温かい笑顔で笑うんだろう。
その一方で俺はふらふらと変わんねー性関係を続けていつまでもお前の傍に居るだなんて事は出来なかった。
「いつまでも一緒て約束した癖に」
「……今迄一緒に居ただろ」
「いつまでもじゃないじゃんよ」
「これからは百合にいつまでも居てもらえ」
「百合とはまた別だろ。 俺にとって耀はーー」
「グダグダうるせぇぞ夏紀。 そろそろ黙んねぇとその口塞ぐぞ」
「……どうやって?」
「お喋りな口だな」
「……どうやって塞ぐか、教えてくれないの?」
「教えて欲しいのかよ?」
「ッ、ん……」
「……」
片手で掴んだ小さな顎を手繰り寄せて噛み付く様に顔を近づける。
けれど、その寸手の所でピタリと止めて顔を離した。
「耀?」
「おかしな事言ってんなよお前来週結婚するんだろ」
「……あははっ、うん、そうだね」
「……。 もう帰れ、今から店の修理するんだ邪魔だ」
「分かった。 あんまり無理しないでね」
「おう」
何手を出そうとしてんだか。
やけに挑発的な夏紀の態度にまんまと煽られた。
日本とイギリスのハーフである夏紀の瞳はブルーの硝子玉の様に綺麗だ。
そんな瞳を見る度、この気持ちはずっと言わずに居ようと理性を働かせる。
普通の幸せを掴める夏紀をわざわざこちら側へ連れ込もうとは、思えなかった。
どれだけ腹の中が灰で覆われても夏紀を汚そうとは一度も思わなかった。
例えば女だったなら、なんてそんな事も考えたことも無かった。
俺は男だ。
男である事に後悔をした事もアイツが男な事に嘆いたことも無い。
男の俺が惚れるほど、男であっても綺麗な夏紀をただただ誇りのように愛していたからだ。
「……結婚か」
考えたこともなかったな。
俺が誰かと結婚して所帯を持つだなんて考えただけでゾッ、とした。
俺に結婚だなんて言葉はこの世で一番似合わねぇ組み合わせだと思う。
女も男も好みなら抱ける。
ただずっと夏紀を好きで生きてきたから女を好きになれるかは分からなかった。
もっと言うならば夏紀以外を好きになる俺も想像が出来なかったんだ。
「子供は少し見たくなくもねぇな……アイツの餓鬼なら可愛いんだろうな」
買い戻した店内の照明を直しながらポツリと呟く。カウンター席になるであろう間接照明は、夏紀の瞳と同じブルーのライト。
それにこれから届くであろう店の前に置くスタンドもブルー色だ。
離れる気でいる癖に未練がましいこの考えに笑える。
青は夏紀を連想させた。
けれど、どれだけ綺麗な青色を見ても、夏紀の瞳の青に勝るものは無いといつも気付かされる。
あんなに綺麗な瞳を俺は知らない。
あんなに愛しく思える人間は夏紀しか知らない。
何よりも守りたくて何よりも愛したい、だけど絶対に触れる事の出来ない奴。
それが俺の幼馴染みで、好きな奴だった。
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