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テキーラ・サンライズ
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「あの後ッ、部屋出て行った後……もしかしたら耀さんが走って追いかけて来るかもって……ッ……もしかしたら来てくれるかもって……俺、そうやって一人で家まで帰ったんだよッ」
「……」
「でも耀さん電話一つだってしてこないじゃんっ!」
「……出来ねぇだろ」
「〜〜っ口答えすんなバカッ!」
「瑞生……泣くな……っ、お願いだから泣くなよ」
「アンタが泣かせてるんだよっ」
分かってるさ……
俺が泣かせてるなんて分かってる。
分かってるから電話なんて出来るわけねぇだろ……。
電話なんてして、なんて言うんだよ。
悪かったって、会いたいって……?
さよならって言われた癖に諦めの悪いヤツだって待つことも出来ねぇのかって?
そんな事保険も付けず出来る程、俺はもう若くない
「……俺がじゃあねって言ったらそんな簡単に諦められるの? 耀さんの好きって、本気って結局そんなもんなんだろ……本当に俺のこと好きなんかじゃ無いんだよ」
「っ、それは違う」
「何がッ、何が……違うんだよ嘘つき」
「ッ」
「だったらもっと必死になってよ……何で俺ばっか……どうして俺ばっかこんなに好きなの……ッ、辛いッ、耀さんの事なんか……ッ、こんな親父なんか捨ててやるの簡単だったのに……」
「み、ずき……」
「耀さんの事……本気で好きになっちゃったじゃん……っ……最低っ、馬鹿……好き……っ、大好き……ッ」
「ーーッ」
気づいた時には体が動いていた。
瑞生の言葉に突き動かされて伸びた手のひらは濡れた瑞生の体を抱きしめて、嗚咽を漏らして泣きあげる瑞生の濡れた唇にまるで息をするかの様にキスをして……驚いた瑞生は静かに腕を背中に回す。
久しぶりの瑞生に、瑞生の涙に、俺まで目の奥が熱くなる。
「ふ……っ、ん……」
「……悪い」
「謝、んなよ……っ」
「悪い」
「だからーー」
「違うんだよ」
「なに、が」
「凄ぇ好き……瑞生が好きだ」
「ーーッ」
「瑞生の事、誰にも渡したくない……。 瑞生とずっと居たい……今だって泣かせてるの分かってんのに瑞生に好きって言われて死ぬほど嬉しい。 こんな歳の癖にバカみてぇに舞い上がってる」
キツく瑞生を抱きしめてる手がカタカタと震えている。
何もかも怖いんだって今になって気づく。
触れた時、手を振り払われたらどうしたらいい?
もう二度と瑞生が戻って来ないんだってその事を受け止められるほど軽く無いんだ。
本気で瑞生が好きで堪らない。
瑞生が好きで堪らないんだ。
失うのが怖い。
「っ、嘘……」
「嘘じゃねぇ」
「夏紀さんの事好きな癖に」
「……ああ、好きだった。 中学の頃から好きだったヤツなんだ夏紀は。 ずっと夏紀を好きで終わると思ってた……なのに瑞生に惚れちゃったんだよな……気づいたら瑞生の事ばっか考えてた。 瑞生にも愛して欲しいって初めて誰かに見返りを求めた、期待した……それほど好きでそれほど終わるのが怖い。 何十年も変わらなかった気持ちが瑞生のお陰であんなあっさりと消えたぐらい……今は、今の俺が好きになったのは瑞生なんだ」
「……でもっ」
「俺はさ……瑞生に一生なんて言ってやれない」
「ーーッ」
「一生一緒に居るつもりがねぇからじゃねーの。 俺は……どうしたって瑞生より先に死ぬからな……どれだけ強くても歳には勝てねぇだろ?」
「そ、んなのッ」
「関係ある。 瑞生は……ははっ、思ったよりも我侭で泣き虫で甘えん坊で寂しがり屋だろ?」
「ッ違う」
「本当にか?」
「……う、るさい馬鹿……。 耀さんのせいだ……全部全部、耀さんのせいだ」
「そっか。 俺のせいか」
「……そうだよ。 俺がこんなに泣き虫になったのも寂しがり屋になったのも甘えたいと思ったのも我侭言って困らせてやりたいのも……全部全部耀さんのせいだよ……」
「……」
「だから……責任取ってよ……っ。 俺と一緒に居てよ……なんで言ってくれないのっ」
ああ本当に……泣かないでくれ瑞生……
最低な気持ちに胸が痛む。
胸が痛むのに瑞生が俺の為に泣いてる姿が愛しくて、あともう少し俺が若かったらなんてどうしようもない変えられない現実を恨んでしまう。
俺だって言ってやりたいよ。
お前とずっと死ぬまで一緒に年取って行こうなんてそんなプロポーズみたいな言葉、好きな奴に言えたならどれだけ幸せだろうか。
好きな奴に好きだと言える事がこんなに幸せ何だって事を俺はこの年になるまで知らなかった。
こんなに嬉しくなったり悲しくなったり心が乱れる程誰かを好きになったのは初めてなんだ。
「……俺が先に死んだら瑞生はどうすんだよ」
「……っ、そんなの……分かんないっ」
「だから言えねぇんだよ。 一人が嫌いなの知ってる。 それなのに瑞生の事途中でほっぽって俺は一人でいい気分で先に逝くなんてしたくない」
「だから……だから俺と居るの諦めるの?」
「……」
「何十年も先の事考えてッ、何十年も一緒に居れるかもしれない時間を諦めてッ、耀さんは俺から逃げるの……ッ?!」
「ーーッ」
「俺が……俺のこと好きなら、今、1人にしないで」
「……」
「耀さんが……耀さんが死んじゃう迄に沢山強くなるからッ……俺も……俺も夏紀さんみたいに耀さんに愛されたいよっ……夏紀さんばっかずるい……俺だって耀さんの事欲しいのに」
「瑞生……っ」
「耀さんの隣に居たいんだよッ」
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