アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
時間×距離=二人愛
-
◇
まだ寒い冬の朝、ひんやりとした空気に包まれていつもと変わらない事務所にたどり着けば中は暖かな暖房に体が温まっ、体の芯がホッとした。
「おはようございます」
カードキーを差し込んでドアを開けると、中では案の定怜さんが裸でウロウロとしている。マフラーを外しながら怜さんの横を通り抜けるとそこら中に散らかった服を手に取り畳んだ。
「あっら〜早いわね、おはよう」
「……怜さんここ会社」
「あたしの事務所なんだから好きにしていいでしょ」
「そうですけど。 新人が怖がったらどうするんですか」
「あたしの裸を見て怖がるなんてとんだ失礼なやつね。 こんなイケメンそうそういないわよ」
「いやだから……そのモロ出しを何とかして欲しいんですけど。 あ、もういいや何言っても無駄でした」
綺麗なロングの髪を束ねながら怜さんが艶っぽい表情で見てくる。女だと思っていた人が男で、しかも男なのに美人で、そこに加えて下半身丸出しなんてどう考えても女の子が見たら絶叫ものだ。
怜さんは良く事務所に泊まるから、朝早く来るとたまにこうして裸の怜さんと遭遇する。
俺はもう慣れて居るけど、今年入ったばかりの人は顔を真っ赤にしてフリーズしているのを度々見ていた。
「今日も結葵の担当?」
「はい」
「専属契約貰えばいいのに」
「……それは有り難いんですけど」
「はいはい分かってるわよ。 別にあたし一人でもやってける事務所だし好きな様にしなさい」
「すみません」
「叶うといいわね」
あっという間に着替えていく怜さんを見ながら少し罪悪感に苛まれる。
直輝の専属になりたいから、何度か声がかかっていても断っていた。結葵君だけじゃなくて他の人からも話は貰っていたけど、せめて直輝がこっちに戻ってくる迄はなんだか嫌だなって気持ちがあってもっぱら仕事は化粧品メーカーとの契約だったり、結葵君は事情を分かった上で依頼をしてくれる。
それにたまに爽さんもくれたりしている。
我侭な事をしていても怜さんは特に文句も言わず放任主義のように黙ってくれているのだから頭が上がらないんだ。
「よし、今日も仕事しますか」
「はい」
綺麗に着飾った怜さんにコーヒーを渡すと、仕事モードに入る怜さんに挨拶をして俺も担当の現場へと向かった。
今日撮影する現場に着くと、やっぱり俺よりも早くに結葵君は着いていてしっかりしていて偉いと思う。
人気だからと言って怠慢するんではなく誰にでも親切丁寧な態度は結葵君の根がいい子で真面目なんだって性格が伺える。
「結葵君おはよう。 今日も早いね」
「祥さんおはようございます」
「今日は一緒に居ないの?」
「あぁ、今日はーー」
いつも見かける姿が見えなくてキョロキョロ辺りを見渡せば、どこか憂鬱そうな顔をした結葵君の言葉を遮って声が聞こえてきた。
「祥君おはようッ!」
「今日は別々に来たんです」
「そうなんだ。 おはようございます、爽さん」
明るくキラキラなオーラを振り撒いて現れたのは爽さん。元気な声で挨拶をする爽さんの後に、結葵君は付け足す様に説明をしてくれた。
いつからなのかは知らないけど、結葵君と爽さんはいつの間にか仲が良くなっていた。それもちょっと分かりづらい仲の良さなんだけども……
「おいそこは俺の席だ退けちんちくりん」
「……」
「おい、聞いてんのか」
「……祥さん煩い人を黙らせるのってやっぱり一度」
「ちょ、ちょっと結葵君顔が怖いよ? ね?」
「はぁ」
仲が良くて、仲が悪い。
犬猿の仲みたいな感じで、きっと犬猿に例えるならひょいひょいと交わして行く犬は結葵君で、キーキー怒ってる猿は……爽さんだ。
「そこが空いてるんだから座ればいいじゃないですか」
「俺はそこがいい」
「めんどくさいな」
「いいから退けよちんちくりん」
「僕がちんちくりんなら爽さんはミジンコですね、ふっ」
「な、っな?!」
こう言う感じで、必ずいつも結葵君が上手で爽さんは結葵君の辛辣な毒舌にプンプンと怒っている。
でもそんな感じで二人でご飯食べに行ったり何だりしているんだから仲が良すぎて悪いのかもしれない。
「ムカつくなお前!」
「うるさい」
「いでっ!」
うん、まあ……脛を蹴る程仲が良いんだろう……
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
365 / 507