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時間×距離=二人愛
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この一年は結葵君と爽さんと良く居ることが多かった。後一つ変わった事と言えばーー
「祥さん彼、仕事出来てますか?」
「うん、今日も学校が終わったら怜さんのところに行くんじゃないかな?」
「そうですか」
「心配?」
「まあ……。 何かやらかさないか心配ですね」
「大丈夫だよ、隣には怜さんだし」
「そうですね」
変わったことは、今話した彼との出会いだと思う。
結葵君が前ロケの時に話していた幼馴染みの彼は、不思議な縁があるのか怜さんの下でバイトとして働いていた。
バイトと言えば聞こえはいいけどやらせてる事はほとんどパシリで、深くは知らないけれど結葵君の幼馴染みである龍騎(リュウキ)君は、怜さんと同じ高校の後輩らしく、怜さんはそこの高校の有名人だったらしい。
とっても喧嘩が強くて、今でも怜さんの名前は皆が知って居る程なんだそうだ。昔はやんちゃをしていたらしく、龍騎君はそんな怜さんが昔リーダーをしていたグループの現リーダーだと話していた。
それから瑞生さんの恋人でもある耀さんの事も知っていて、怜さんと耀さんは幻の人だとか言われてるらしくて二人を知っている俺は人に過去ありだとしみじみ思ったのが懐かしい事だ。
「喧嘩しかして来なかった馬鹿なので何かあったら問答無用で殴って黙らせてください」
「あははっ手厳しいね結葵君」
「龍騎は昔から手が直ぐ出ますからね。 こっちが制御しなきゃ暴れ馬みたいで」
「ちんちくりんにそんな危ねぇやつ止められんのかよ?」
「ミジンコさんは黙ってください。 微生物の声は本来なら聞こえない筈なんですけどね」
「だから俺はミジンコじゃねぇっての!」
「体はね。 心はミジンコみたい」
「このッチビ!」
売り言葉に買い言葉の二人は気づけば直ぐ喧嘩になる。怒りが脳天を突き抜けた爽さんが拳を握って殴ろうとしたが、それよりも先に結葵君の蹴りはまた見事に脛へと命中していた。
「いてぇーッ!」
「はぁ……」
「爽さんも結葵君に構わなきゃいいのに」
「だってコイツ腹立つから!」
「どっちが。 本当いい迷惑です大人の癖に」
「そういう所が気に食わないんだよ! 俺よりも年上ヅラしやがって!」
「精神年齢低すぎるのが悪いんです」
「この〜ッ! けちょんけちょんにしてやるからな!」
「ふっ、けちょんけちょん……アホっぽい」
「あっ、もう二人とも……」
本格的に始まった喧嘩を見かねて二人の間に立てば、結葵君はため息を着いて再び椅子に腰掛けた。また喧嘩が始まる前に仕事に取り掛かろうとした時、乱れた服を直した爽さんが思い出したかの様に話し出す。
「そう言えば祥君、アイツの見た?」
「アイツ?」
「直輝だよ、直輝。 向こうで有名なブランドの香水にイメージモデルとしてついたの聞いただろ?」
「ああ! 聞きました、昨日電話で話してましたよ」
「やっぱり祥君とは電話してるよな……」
「え?」
「あ、いや。 アイツ俺のには返さないからさ」
「それはミジンコさんが日記みたいなメールするからでしょ。 誰だってあんなメール送られて来たらそれだけでウンザリして消しますね」
落ち込む爽さんにトドメを刺すかの様に結葵君が口を挟む。それを聞いた爽さんはまたムキーと怒り出して結葵君は素知らぬ顔で雑誌に目を落としていた。
それにしても日記みたいなメールか……確かに爽さんには悪いけど直輝は読む前に消しそうだ。ましてやそれが何度か繰り返されれば読む前に名前を見ただけで消してそうだ……。
「俺のメールはどうでもいいんだよっ! 本題は直輝の話だっての」
「直輝の話って、何かあったんですか?」
「特に大袈裟な事じゃなくてさ、ただ向こうから帰って来た時にお帰り会でも開いてやりたいなって」
「あー! 良いですね、楽しそう」
「天使さんってそういうの嫌いそうじゃないですか? 煩いのとか特に苦手そう」
「んー、確かに煩いのは好まないけど……案外喜ぶと思うよ。 普通に考えてもお帰りって言ってもらえるの嬉しいしね」
「まじか! じゃあ決まり!」
パチンっと手を合わせて爽さんが頷く。俺も笑って賛同すると爽さんは楽しそうに考えてくれた案を話してくれた。
「……日本の雑誌にも載ってますね」
「え?」
「ほら、噂をすれば天使さん」
「……本当だね」
雑誌の見開きに載っているのは今話していた海外有名ブランドの商品、新作香水のモデルとして選ばれた直輝のモデル写真。黒のスーツに赤と黒の斜めストライプのネクタイ。黒い背景にサラサラの白髪が輝いていて、鋭く見つめてくる切れ長の瞳に胸がドキッとした。
……あんまりにもかっこいいから、この雑誌買おうかなぁなんて思ってしまったのは誰にも言わず内緒にしておこう。
「天使さん、向こうでも通用するんですから凄いですよね」
「背が高いだけだよ」
「……」
「な、なに?」
「顔。 ニヤけてますよ?」
「〜〜っ」
「本当、天使さん相手だと素直じゃないですね」
「そ、そんなこと」
「そんなことありますよ」
「……ごめんなさい」
「僕に謝ってどうするんですか」
「はい」
痛いところを突く結葵君にグウの音も出ない。鏡越しに目が合ってなおのこと気まづくて下を向けばそこには雑誌越しに直輝と目があってまた一弾と顔が熱くなる。
恥ずかしさに騒ぐ心を落ち着かせる為、黙々と作業に没頭する。その後も喧嘩をしたり仲良くしたりと忙しい二人と談笑をしながら楽しく変わらない一日を過ごした。
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