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時間×距離=二人愛
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仕事を終えて家に着けば丁度いい時間だ。
直輝と電話をするのは毎晩夜の八時。何か予定が無かったり仕事で伸びたりしない限り、この時間は直輝が学校に行くまでの間電話を出来る時間だった。
パソコンを立ち上げてインすれば直輝のアイコンもインをしている事を示している。一日の中で一番幸せなこの時間に胸をドキドキと弾ませて通話ボタンを押せば数コール目の後に、パソコンのウィンドウ一杯に愛しい人の顔が写った。
『お帰り、仕事お疲れ様』
「ただいま、ありがとう。 それと、直輝はおはようだね」
『ん、おはよ』
パッと切り替わった画面にはどこか少し眠たげな直輝の顔。テレビ電話越しに見れる笑顔に胸の奥がぎゅうっと締め付けられた。
『今日はどうだった?』
「今日も変わらないよ」
『変わらず俺に会いたいって?』
「そんな事いつ言ったんだよ」
『顔に書いてある』
「勘違いだバカ直輝。 調子乗るなよな」
『ふふっ、そんな必死になっちゃって可愛いね祥ちゃんは』
「う、うるさいっ!」
いつもと変わらない調子で意地悪な笑顔を浮かべた直輝がからかってくる。変わらないこのやり取りだけど触れ合えない違いはやっぱり何度も胸を切なく締め付けた。
「直輝の方は? 学校どう?」
『ん? あぁ、まあ普通だな。 俺は祥に会いたいよ』
「ッ!」
『ふっ、顔赤いけど。 どうかした?』
「べ、別に……」
ほんの少しだけ憂いた表情を浮かべてそんな事を言う直輝にドキッとする。何だろう、なんて言うのかな。すぐそばに居ない分、表情の変化とか言葉に物凄く敏感になる。きっと横に居たら顔を背ける場面でも、限られた時間の中で直輝を充電していたいから最初こそはテレビ電話自体が恥ずかしくて目をそらしてばかりだったけど半年過ぎた頃からはしっかりと目を見れる様になったし、今ではからかわれても何とか堪えて画面から目を逸らさない程成長した。
「そうだ直輝」
『ん?』
「爽さんが今日、直輝からメールの返事が来ないって落ち込んでたよ。 ちゃんと返さなきゃ駄目だよ心配してくれてるんだから」
『あーいいのいいの。 アイツはそうされて喜ぶマゾだし』
「マゾって……」
爽さんの話をしても興味が無いのか直輝は聞き流している。マゾとまで言われて居るし爽さんも何だか可哀想だ。
『それより聖夜なんだけど』
「聖夜?」
『アイツ、俺にメールする度綺月先生の事を相談してくるの鬱陶しい。 そろそろ相談料取ろうかと思うぐらいだな』
「ふふっ、聖夜が?」
『挨拶の次には綺月先生の名前だから聖夜のメールも読んでないよ。 それでも送ってくるんだから、聖夜も爽も似た所あるよな』
「あー! 確かに、言われてみればどっちも素直だよね色んな意味で」
二人の顔が浮かんで色んなことを思い出す。直輝に言われて初めて気づいたけど、二人共騙されやすかったり純粋な所が似ている。そんな事に意識を持って行かれていた時パソコンの向こうから直輝に呼ばれた。
『ま、聖夜の事もどうでもいいんだ』
「今の聖夜が聞いたら泣くよ。 この前ご飯食べ時に直輝はどうしてるかってずっと聞かれたからね」
『泣かせとけばいいよ』
「こら、直輝」
『仕方ないだろ? 折角、祥の顔が見れる時間なのに聖夜と爽の名前ばっか聞いてたら俺ヤキモチ妬いて寝込むよ?』
「や、ヤキモチって……!」
『俺独占欲強いから聖夜でも嫌だ。 聖夜よりも俺の名前呼んでよ、しょーちゃん』
「何だよそれ子供でもあるまいし。 それにちゃんと呼んでるじゃん……」
『呼んでない、さっきから聖夜か爽の話だろ。 俺と話してるんだから、デレ祥みたいな〜』
「は、はぁ?!」
『この前と同じ事してくれたら機嫌直るかも』
「や、やだよ」
『俺、子供だからさ』
「うっ」
わざと「子供」の部分を強調する直輝にやってしまったと後悔しても、もう遅い。画面の向こうで頬杖をついた直輝が煽る様に見つめてくる。少し細められた瞳の奥がギラギラと光っていて完璧サドスイッチを入れてしまった事に早くも後悔した。
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