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意地悪な態度
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◇
「直輝……」
「……ッ!」
寝言で名前を呼ばれてドキッとした。長く濃い睫毛が白くて雪のような肌に影を差す。目元にある泣きボクロが扇情的で、瞳は閉じられているのにそれでも十分な程に色っぽい。
「本当、祥ちゃんも結構狡いよな」
眠ってるくせに煽って置いて、起きない。擦り寄ったままふにゃりと頬を緩ませて、祥はぐっすりとまた眠ってしまった。
驚かせる為に、ニューヨークから直行便で帰ってきたんだ。誕生日になる瞬間を一緒に居て誰よりも先に、一番に、お祝いしてやりたくて。仕事が入ったのは本当だったけど全て一発で終わらせた俺は真っ先に日本へと戻ってきた。
「祥、起きないの?」
「……」
「祥ちゃん?」
「…………」
ベッドの上へ優しく寝かせてすやすや眠る寝顔を見つめながら頬をスルリと撫でてみる。一年ぶりに触れた祥は相変わらず細くて、抱きしめた時、そのまま腕の中で壊れるんじゃないかと思うほど危うく感じさせた。
ちゃんと飯は食っていたんだろうか。そのままコタツで寝ていたのを見る限りあまり食べて居ないのかも知れない。
おまけに玄関の鍵も開けっ放しだったのだから、言いたい小言は腐るほどあった。
けれどそれよりも先に伝えたい事が沢山あって少し寂しく思う。
こんなに傍に居るのにスヤスヤと安心して気づかず眠る祥を見下ろすとその華奢な体の上に被さった。
微かに差し込む淡い月の光が俺達の影を一つに重ねた。
「起きないと悪戯しちゃうよ」
「……」
「悪戯してもいいよね?」
ぎしっ、と静かに軋むベッド。
一つ舌なめずりをすると上半身を倒して祥の首元に顔を近づけた。ふわりと香る花の蜜の匂いは変わらず甘い。
頭の奥をクラクラとさせる様なその甘い毒に引っ張られるまま、ペロリと首筋を舐めあげる。
「っ、……ぁ」
「……ふっ、可愛い」
ピクッと体を揺らす祥に堪らず興奮する。
もうずっと、4年もの間お預けを食らっていたんだ。
今すぐにでも組み敷いて泣かせてやりたい。ぐちゃぐちゃに愛してやりたい。
そんな燃える様な欲情を噛み殺して押し込める。酷くしない様にと、また腹の奥へと閉じ込めた。
じりじり焦げる様な熱さに目を細めて、祥を見下ろす。熱くなった手のひらをシャツの中へと滑り込ませた。
「あばら骨、なぞられるの好きだったよな」
「……っ」
「鎖骨噛まれるのも弱いし。 悪戯終わるまで起きちゃダメだよ」
「ぁ……っ、……ッ」
肋骨の溝に指を添えて、背中側から胸へと撫であげる。スルリと優しく触れればヒクッと体を捩る祥を抑え込んだ。
まだ、ダメだ。まだ逃がしてはやらない。もっと追い込んで苦しくなる迄、攻める手は止めてやらない。
「あ……っん……、っ、ん」
「ふっ、感じてる。 気持ちーんだ」
掌を使って肌の上を撫で回す。段々と熱っぽい声を上げだした祥の小さな口に指を侵入させた。
熱い、熱く濡れていて、舌が生き物の様に指に巻き付く。口蓋をなぞりながら、尖り、主張を示す乳首をシャツの上から口に含んだ。唾液で濡らしてジュウッ、とやらしい音を立てて吸い上げる。
「ふ、ッ、んぅーッ」
「……、はぁ」
ピクピクと震えた祥が喉を反らし体を跳ねさせる。切なそうに甘い声を上げる姿に、堪らず吐息が漏れた。
ああマズイな……歯止めが効かなくなりそうだ。
祥の事をこのまま抱くつもりは無い。少し意地悪してやりたくなっただけだ。何度注意しても無自覚に警戒心の薄い事を咎める為に、寝込みを襲ってやっただけだ。
キスだって、まだしてやるつもりは無い。
もっと大切にしたい。やっと触れ合えるんだから丁寧に愛したい。
そう思うのに早く奪ってやりたいとも煽る欲情がギラギラと顔を出す。
「あ、っァ……ふ、んぅ」
「ピクピクしてる。 ここも勃ってるし、眠ってるくせにヤらしいね、祥?」
「ッ」
赤く染まる耳たぶに舌を這わせて歯を立てた。
祥がふいっと他所を向けば、首筋はさっきよりも露になり、浮き出た血管に突き刺す様噛み付く。そのまま舐めあげて吸い上げながら、勃ちあがっている下肢へ手を伸ばした。白い肌にくっきりと残る俺の印を付けながら。
「〜〜ッ、っ、ぅ、ッあ」
下着の中に手を差し込んで、想像通り濡れている先端を腹の指で擦る。気持ちいいと示すようにさっきよりも激しく体を震わせた祥に思わず笑みを零した。
「ねぇ、祥ちゃん」
「アッ……ッん、ひ、っや」
「俺さ」
「っ、ふ……ぁあっ」
「何度も祥の寝込み襲ってきたから」
「ンンッ、んぅ……ぁ」
「今、祥が起きてるって知ってるんだよね」
「ーーッ! ッ、あ、ぁあっ、〜〜んッ!」
ドピュッ、ドピュッ、と勢い良く掌に白濁液がかかる。腰を浮かせて射精を続ける祥はぎゅうっと咄嗟に俺の首に顔を埋めて長く絶頂を迎えた。ハフハフと苦しそうな乱れた呼吸が髪にかかって、頭の奥を溶かすかのような色っぽい吐息に腹の奥が燃えそうだ。
「おはよう祥」
「ふ……っ、うっ、うぅ、ばかぁ……っ」
「俺が? それとも祥が?」
「ば、ばかなお、ぅぅ……っ」
「寝たふりするなんて俺にバレないとでも思った? 祥は本当お馬鹿さんだね」
「〜〜ッ」
クスクス笑って祥を追い込めば真っ赤な顔をして潤んだ瞳が真っ直ぐに見上げてくる。
恥ずかしい思いをして、怒るでもなく、八つ当たりをするでも無い時は、泣きそうな時だ。
案の定腕の下に居る祥は子兎の様に目元を赤く染めて必死に唇を噛み締めている。プルプルと震えて、泣かないようにぎゅうっと手を胸の前で強く握り締めては居るものの、目の端にはジワジワと涙が溜まってきた。
「ふっ、泣くなよ」
「〜〜っ、だって……!」
「なに、いじめたから?」
「ちが……っ、そうだけどぉッ、そうじゃなくて……っ」
「そうじゃないなら、何だろうなぁ」
「うぅっ、いやぁ……ッ」
ふるふると首を横に振って、口に出来ない想いを感じ取って欲しそうに見上げてくる。言わんとすることは分かっている。分かっていて、知らないフリをした。一秒でも早く祥に迎え入れられたかったのに途中で起きた癖寝たふりを続けた祥が悪いんだ。
「嫌なの?」
「ふ、ぇ……っ、直輝ッ」
「なに?」
「直輝……っ、意地悪、やだよ……っ」
「じゃあどうして欲しいの?」
「っ、ひ、う」
「ほら、言わなきゃ分からないよ」
「……っ」
「ん?」
「……優しく、して……っ」
「それだけ?」
「意地悪、しないで……っ、優しくして、ッ直輝」
「うん」
「……っ、き、キス……キスも、して……?」
「いいよ」
「沢山ッ、ぎゅうも……っ」
「おいで」
「直輝ッ」
起き上がり手を開けば、バッと飛びついてくる。苦しいほど、細い腕が首に巻きついて、後ろに倒れそうなほどにグリグリと擦り寄ってくる。祥の体を抱き締めてやっと心が満たされた。生きている感覚が戻ってくる。祥の隣が俺の生きる場所だと改めて感じる。
やっと、帰ってきた……
長かった一年に、漸く実ったこの幸福感と共に祥を抱きしめると、濡れた愛らしい唇にキスをした。
「祥、ただいま」
「ーーッお帰りなさい直輝!」
濡れた瞳。愛しい花笑み。
俺の大好きな祥の笑顔で迎えられた夜は焦げ付く程に愛しさがこみ上げた。
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