アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
夢の時間、光るキス
-
「まだ拗ねてるの?」
「……別に」
「ほっぺた餅みたいだけど」
「っ、触るな!」
「あははっ」
つんつん頬を指で指してくる直輝の手を振り払う。
あの後フラフラする足取りで買う予定も無かった下着を買った。
それからトイレで履き替えたけど、ぐっしょり濡れている下着を見て一度鎮火した筈の怒りが恥ずかしさによってまた湧き上がって来たんだ。
直輝があんな事しなかったらこんな気だるく無かったし、持たなくていい荷物も無かった筈。
冷静になればなる程自分の痴態に気まずいし恥ずかしいで刺々しい態度ばっか取ってしまった。
「折角お揃いでカチューシャ付けたんだし機嫌直して?」
「……やだ」
「へそ曲がり」
「だって俺やだって言ったもん。 でも辞めてくれなかったじゃん」
「それは祥の方から腰擦り付けてくるから」
「なっ、なぁっ……!」
「顔真っ赤だけど」
「煩い馬鹿直輝ッ!」
ニヤニヤしちゃって。
謝る気なんてゼロな事お見通しなんだこの変態魔王め。
おちょくるためにわざと言ってくる、意地の悪い直輝に腹が立って持っていた袋で思い切り殴りつけた。
「また言ったら今度はグーで殴るからなッ」
「避ければいい話だし」
「避けたらダメなのッ!」
「何そのルール。 初耳」
「今決めた、今俺が決めた!」
一人だけ楽しそうに笑っちゃってなんだよ。
ああ言えばこう言う直輝にムカムカして先に歩き出した時、ぐいっと腕を引かれた。
また今度はなんだよって振り返ったら直輝がアッチと指差している。
言われた方に目を向けると、着ぐるみを囲む人の集まりが見えた。
それもちょうど俺達が今付けているカチューシャのキャラクター。
そんな着ぐるみが愉快そうな動きをして楽しそうに跳ね上がる度、俺まで釣られて笑う。
「折角だし一緒に写真撮って貰おう」
「え……!?」
直輝の口から出るとは到底思わない発言に耳を疑う。
直輝は基本写真を撮られるのが嫌いだから。
前、聖夜が思い出に撮ろうと言った時、当たり前のように「金よこせ」なんて下衆な王様みたいな態度で言っていた。
まあ結局直輝はそう言っても撮ってくれるんだけど。今迄の知ってる直輝からは想像出来ない提案で、驚いたまま固まってしまう。
あ、もしかして俺だけ撮って来いって感じなのかな?
「直輝も撮る?」
「ん? 当たり前だろ」
「……で、っでも、周りの目とか」
「今更隠してもな。 さっきから気付かれてるし、だったら思い切り楽しんだ方が良いだろ」
「……」
「行かないの?」
チラリと周りを見ながら直輝が話す。
確かにその通りだった。何度か声をかけられたりもしたし、遠くから隠れて写真も撮られていた。
本当にこんな所に居て平気なのか尋ねてもプライベートなんて皆好きにしていいだろの一言。
傍から見れば確かに友達とここへ遊びに来てる位にしか見えないんだろうけど、無理させてないか時折不安になる。
「祥ちゃん?」
「でも、多分向こうで着ぐるみと撮ってもらったら他の人も堂々と撮れちゃうと思うから……」
「まあそれはサービスで」
「だけどッ」
「祥、今日は誕生日なんだから我侭言ってよ。 それ気にしてたら折角来たのに楽しめないだろ?」
「……」
優しい声で、優しい目をして直輝が頭を撫でてくれる。本当に甘えて平気かな。直輝と堂々と写真を撮れるならそれこそとっても嬉しい。
グズグズ悩んでいたら、直輝に手を掴まれて笑われた。振り向いて大丈夫と言ってくれる。
たったそれだけで、不安だった心が溶けていくから直輝の言葉は不思議だ。
「……直輝も、本当にダメな事はダメって言ってよ」
「ああ、約束な」
綺麗な顔して笑う直輝にドキドキして慌てて目を逸らす。
こうやって急に優しい目するから狡い。さっきまであんなムカムカしていたのに今はもう全くだ。
直輝にくっついて歩きながら心はポカポカしていた。
「わ〜可愛い〜!」
広場に行けば、遠目から見た時よりも可愛く動く着ぐるみにワクワクする。直輝と一緒に眺めていたら着ぐるみの方からこっちにやって来てくれて手を大きく広げた。
「え、え?」
オロオロしていたら、目の前でぎゅう〜っと着ぐるみが自分の体を抱き締めて、また腕を広げてくれる。
だ、抱きついていいのかな!?
ドキドキしながらも直輝にも行っておいでと言われて、緊張したまま抱き付けばぎゅうって抱き締め返してくれる。
それが嬉しくてニコニコ笑っていたら黒いお鼻がチュッとほっぺたにキスまでしてくれて、子供のようにはしゃいでしまった。
「ではお写真撮りますねー!」
わちゃわちゃした後、係員のお姉さんに誘導されて写真撮影のために横に並ぶ。
携帯を渡して直輝と着ぐるみを挟んでピースをすると、また着ぐるみが横から抱き締めてくれてニコニコしてしまう。
くすぐったい様なふわふわする気持ちで胸がいっぱいだ。
写真を撮って貰って、お姉さんにお礼を言うと着ぐるみにバイバイと手を振って直輝と歩き出す。
「着ぐるみ、すっごい可愛かったね!」
「……」
「ぎゅってしたらぎゅうってしてくれたんだよ!」
「…………」
「……あの、直輝?」
撮って貰ったばっかりの写真を見返しながらホクホクと高揚した声で話せば、隣の直輝は逆にどこかツンとしていた。
俺ばっかり着ぐるみに構って貰ったからつまらなかったのかな?
不安に思ってもう一度撮ってもらう?と聞けば、上から思い切り見下ろされて心がヒヤッとする。
なんだよ、何か俺悪いことした?
直輝だって行ってこいって言ったのに。
「なんで直輝が怒ってるの」
「……」
「直輝!」
「祥さ」
「なに……?」
「着ぐるみの中が何か知ってる?」
「へ?」
急に聞かれたよく分からない質問にキョトンとする。ぱちくりと目を瞬きしていたら、知ってるの?と聞かれてこくこく頷いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
382 / 507