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夢の時間、光るキス
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「分かるよそのぐらい」
「へえー、じゃあ分かってんのに抱きつかせたんだ? 二度も」
「え?!」
「俺の前でイチャイチャしたんだ」
「……ちょっと待ってよ、直輝もしかして妬いてーー」
「煩いなぁ。 本当腹立つね」
「……」
直輝の人差し指が俺の唇に触れる。
しーっと微笑んだニッコリ笑顔が整い過ぎて寧ろ怖い。
中身が人だって言ってもお仕事の一つなんだし、楽しんでもらえる様にそうしただけでやらしい気持ちなんかないのに馬鹿だ。
でも、そう思う癖に着ぐるみにヤキモチ妬いた直輝が可愛くて思わず笑っちゃえば思い切りほっぺたをつねられた。
「うふふっ直輝妬いたんだ!」
「……」
「ねーねー、直輝もヤキモチ妬くんだね」
「うるせーっての」
チラリと目だけを向けて笑う俺に黙れと目線で訴えてくる。それでも笑っていたらポンッと頭の上に手が置かれて、珍らしく口調が乱暴になっている事に気づいたらもっと嬉しくて顔が緩んだ。
「俺だってヤキモチぐらい妬く」
「んふふ、嬉しい」
「……その笑い方やめろ」
「ふふっ」
むすっとしてる直輝にちょっとだけ肩をあずけてみる。そうしたらそっぽを向いていた顔を俺に向けてくれて、鼻の先を摘むと直輝が苦笑いを浮かべた。
「はぁー。 俺まじで祥のこと好き」
「……着ぐるみに妬くほど?」
「……そうだよ、いつまでからかうんだよ」
「ううんからかって無いよ、ただ嬉しいだけ」
「……あっそ」
「うん。 嬉しい」
見つめあって、笑いあって、心の奥が暖かく染まる。気づけば辺りに人は居ない。ちょうど岩陰になっていて、人の通りが少ない道を歩いて来たらしい。
「祥」
「うん?」
そっと直輝の手が頬を包む。冷たい冬の下歩いていた掌はひんやりとしていて、微かに身をよじれば身体ごと抱きしめられた。
「俺が今したいこと分かる?」
「……分かんない」
「嘘つきだな祥は」
「……そんなの知らない」
「ふっ、じゃあ目閉じて」
「ん……」
ドキ、ドキ、ゆっくりと鼓動が早くなっていく音が頭の中をもっと熱くさせる。
俺も直輝の腰に手を回して、小さくコートの裾を掴んだ。
ゆっくりと近づいてくるサラサラの白髪が頬にかかってくすぐったい。こしょばゆさに微笑みながら静かに目を閉じれば、直輝の唇が近づいてくる気配がした。
────ピロリン
「ッ、あ、ちょっ……! もしもし?!」
「……チッ」
後もう少しでキスしてたって時にタイミング悪く携帯の着信音が響く。
直輝の色香に当てられてぽや〜としていた頭をフル稼働させると慌てて離れて電話に出た。
直輝の舌打ちが聞こえたけど聞こえなかったことにしておこ……
『もしもし、今平気か?』
「あ、今……うっうん、平気だよ」
着信相手の名前も出ずに慌てて出たけど声を聞いたらすぐに分かる
『今日、28日誕生日だよな。 おめでとう』
「ありがとう!」
それは直輝も同じみたいで
『今何してたんだ?』
「え、えと、今はーー」
キスを邪魔されてムスッとした直輝が俺から携帯を奪う
「俺と今からキスする所だったんだけど、ムッツリ聖夜君」
『直輝?!』
相変わらず怒っていても、怒ってると分かりにくい声のトーンで聖夜に刺々しい話し方をする直輝。
電話口の向こうでは聖夜が何やら色んなことを質問攻めしているみたいで、直輝は鬱陶しそうに耳から携帯を離すと力無い目をして溜息をついた。
「ギャンギャン煩い。 質問は一つにしろ」
『お前いつ帰って……!』
「昨日の夜、話はこれだけか? じゃあ切るから」
聖夜の声が大きすぎて音漏れしている。「どうして教えなかった」だとか「連絡ぐらいよこせ」だとか相変わらずお母さんの様に怒りだす聖夜にまた煩いとだけ言うと直輝は早々に電話を切ってしまった。
「聖夜にもう少し優しくしなよ」
「これでも優しい方だけど?」
「……直輝の優しいの基準はハードル高すぎ」
「ふーん?」
渡された携帯をポッケにしまいながら直輝に少しだけ注意する。きっと今頃聖夜だって直輝が帰ってきて嬉しくて話したい事とか沢山あってむずむずしてるんだ。
でも俺との時間邪魔しない様にって携帯握ってソワソワ歩いてるんじゃないかって安易に想像出来ちゃうから。
もう少し優しくしても罰は当たらないだろ?なんて言いながら顔を上げた時、不意に唇へ何かが触れた。
「っへ?」
「キス」
「〜〜っ、急に、急にするなバカッ」
「祥が聖夜聖夜煩いから」
「だからって……!」
「じゃあもう一回、今度はちゃんとしたキスしようよ」
「ッ」
「いい? しても」
「……勝手にすればいいじゃん」
「素直じゃないの」
「……煩い」
ゴニョゴニョ文句言いながら、頭を撫でる直輝の手に擦り寄る。口でなんといったって、やってる事がこれじゃ意味無いなんて分かってるけど触られたら我慢出来ない。
「犬みたい」
「誰が犬だよ」
「祥ちゃん犬だったらパピヨンかな?」
「だから犬にするな!」
「ふふっ可愛い」
「ッ、もう!」
クスクス笑いながら抱きしめてくる直輝が好き。一度離れて、瞳を覗きこんで、額にキスをする。それから何度もあちこちにキスをして、俺が焦れったく身をよじったらまた笑ってやっと直輝はキスをしてくれる。
「っ、ん」
「はぁ……祥」
「ふ、ぅ……ンッ」
息の合間に聞こえた直輝の色っぽい吐息にぞくりと背中が震えた。熱を帯びた瞳に見つめられて、キスを繰り返すと堪らなく泣きそうになる。直輝が消えない様に背中へ回した腕で必死に抱きしめた。
「祥、好き」
「ふぁ……ッ、俺も」
寒い筈の体はいつの間にか熱くなって、頭の奥が痺れている。
綺麗な顔で笑う直輝をオレンジ色の夕日が照らしていて、甘い胸の痛みはもっと強くなった。
「直輝大好き……」
「俺もだよ」
離れた距離が寂しくてもう一度くっついた。幸せで胸がいっぱいになって泣きそうだなんていつ以来だろう。直輝が好きで好きで堪らなくて、オレンジ色の笑顔をした直輝をただ暫く見つめていた。
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