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夢の時間、光るキス
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「泣いてんの……?」
「泣いて、ないっ」
「っふ、あはは! なに泣いてんだよバカだなー」
「泣いてないってば!」
「天邪鬼」
俯くと余計に涙がダバダバ落ちてくる。大笑いする直輝が涙を拭いてくれたけど恥ずかしいし怖いし最悪だ。
どうせ直輝にはこの気持ちなんか分からないよ……だって笑ってるし。
「怖かった?」
「……ん」
「今も怖い?」
「……うん」
「じゃあこれでも?」
「っ、んぇ?!」
顔を包まれて驚く間に唇にチュッとキスされる。間抜けな声が出たまま固まって居たら確かめる様に何度もキスをされて顔が熱くなってくる。
「ふぁ、もう、だいじょ、ンッ」
「真っ暗で良かったね。 誰にも気付かれない」
「なおッ、んぅー」
愉快な曲も不気味な話声も遠く聞こえる。
感じるのは直輝の吐息と、優しく何度も重なる唇。だんだんと体の芯が熱くなってきた。
「どう? もう怖くない?」
「っ、うん……。 でも、まだ」
「そっか、じゃあもう少しキスする?」
「〜〜っ」
「あれ違った? 俺てっきりもっとキスしてって誘いだと思ったんだけど」
「ッわ、かってるなら言わせないで!」
「聞きたいから言わせたいんだけどね」
「意地悪……っ」
クスクス笑いながらわざと意地の悪い事を言う。
もう何言ったってどうせバレるんだ。バレてるなら俺だって沢山触れてたい。俺ももっとキスしたい。
素直になったらもっとこうして触れ合えるんだろうか。
そんな事考えながら髪に指を通す直輝の手に身をあずけた。
グルグル回る熱と高まる感情に頭がクラクラして幸せ。暗闇の中で一緒の空間に居る人から隠れてキスをするのはいけない事をしているみたいだったけど、怖い事なんていつの間にか忘れて繋がれた手の温度が暖かかった。
*
「立てる?」
「だいじょぶ……」
「ボーとしてるだろ」
「〜〜っ、してないよ」
「そ?」
「っ、ちょ……っとだけ肩貸して……」
「ふふ」
アトラクションを降りた後、腰が抜けて歩けなかった。言われずとも顔が赤いのなんて分かってるし直輝に手を引かれて俯きながら外に出たらもう空はすっかり日が沈んで夜の色に染まっている。
キラキラとネオンが光る景色はお昼に見た時とはガラリも雰囲気が変わっていて、同じ場所じゃないみたいに綺麗だった。
「もう真っ暗だね」
「そうだな。 あ、祥甘いの食べてい?」
「うん! 俺も食べたい!」
直輝が指さす先にピンク色の小さな出店があった。
期間限定でバレンタインをコンセプトにしている園内はどこもかしこも可愛い。イルミネーションも可愛らしいピンクや赤や白が多くて見ているだけで満たされる。
「何味がいい?」
「んー」
「半分こする?」
「いいのっ?」
「ふっ、いいよ」
「じゃあ苺と普通の!」
シーズン毎に変わるスーベニアカップに入ったデザート。
今はプリンアラモードで、スーベニアカップにはここの遊園地の人気キャラクターがデザインされているのに気づいてハッとした。
そのキャラクター昔俺が可愛いってベタ褒めしてたやつだ。
ぬいぐるみも大人気の白いクマさん。
カップも可愛くて直輝が欲しがるのもおかしいと思ったら、多分俺の為だって気づいてまた胸がぎゅうっと痛くなる。
「直輝」
「んー?」
「……ありがとう」
「急にどうした?」
「別に……言いたかっただけ。 早く食べよ!」
受け取ったカップを持って近くのベンチに座る。遠くで光るお城を見ながら一口プリンを食べた。
幻想的な雰囲気に現実じゃないみたいで、それが何だか昔直輝と一緒に見た花火大会と似ていて思い返す。
あの日も今と同じで胸が痛かった。
幸せで、楽しくて、暖かくて、心がいっぱいになって悲しくないのにふと切なくなる。
鼻の奥がツンとして、ああ好きだなぁなんて思ったら今が嘘みたいに思えて幸せ過ぎる事に怖くなった。
隣に居ることは変わらないのに、関係は幼馴染みから恋人に変わって、恋愛として直輝を好きになれるかなんて不安に思っていたのは今じゃそんな心配要らない程直輝が好きだ。
寧ろ直輝よりも俺の方が好きなんじゃないかって思うぐらい直輝が好き。
直輝を好きになったこと、俺の一番の誇りだと思った。
「直輝……」
「どうした?」
「手繋いでいい?」
「……」
「なっ、なに?」
「いいや何も」
不思議そうな顔をした後微笑んで頭を撫でてくれる。意地悪だけど誰よりも優しい。
直輝の綺麗で大きな手に包まれて、指を絡めながらパレードを見た。触れ合う肩が暖かくてくすぐったくなる。
煌びやかなライトに、キャラクターのダンスや、微笑ましい絡み合い。
手を振ったら振り返してくれたり、楽しいダンスソングに自然と笑顔になりながら直輝とゆっくり夜の遊園地を散歩した。
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