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夢の時間、光るキス
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「直輝が居なかった間、家族で色々あったんだ。 俺の知らない事とか沢山あって、なんか1人だけ知らずにのうのうと生きてたのが嫌になっちゃって守るとか言われるのって凄く恵まれてることなのに……。 また守りたかったからって理由で、俺のせいで好きな人が傷つくの嫌だった」
「……うん」
「直輝って昔っから俺の我侭とか何でも聞いちゃうし、酷いこと言っても笑って許してくれるし、いつも守ってくれてた事知ってたから」
「……」
「だから怖くて。 直輝と別れた後に少しホッとしたんだ。 もうこのまま会わなかったら直輝は幸せになれるかなって、そうやって逃げた事があった」
「うん」
「でもね。 俺はやっぱり直輝が好き……俺は可愛くないし、男だし……いつか直輝がほかの子を好きになったら俺きっとダメになる気がする。 そのぐらい直輝に依存してる」
「それは、俺だってそうだ」
「……ううん。 直輝より、直輝が思うよりも、俺は卑怯だし狡い。 きっと直輝に何もかも求める」
「構わないよそんなの。 祥が求めるなら何だってやる」
「……ほらもう、すぐそうやって俺のこと甘やかす。 これじゃ俺ダメになっちゃうじゃん馬鹿」
「いいだろそれで。 ダメになってよ、俺が居なきゃダメなぐらい俺のこと好きになって。 俺が祥を好きだった時間は祥よりもうんと長いって事忘れてるだろ」
「……」
「中学で気づいたけど、その前から好きだった。 ただ認めたくなくて普通のふりしてたけど、俺はいつも祥に嫌われたくなくて必死だった」
段々と険しくなる直輝の表情にジリジリと胸が痛んだ。握られた手に自然と力がこもって、一つずつ伝える心の内に隠していた気持ちが言葉になって初めて形になっていく。
それが怖くて、直輝がもしも嫌になったらどうしようだなんて、好きな人に嫌われることはいつだって冷たくて辛い。
「ごめんね」
「ん? 何で謝んだよ」
「……ごめん。 ずっと気づかないで……ずっと知らないまま独りにしちゃって。 でもありがとう……俺のこと好きになってくれて、ありがとう」
「ッ、祥……」
我慢していたのに堪えきれずに涙が零れる。
直輝が好きで好きで堪らない。
こんなに好きなのに上手く言葉に出来ない歯痒さが、直輝が長い間俺に気持ちを隠していた時間の重さが痛くて、悲しく堪らない。
「あ、のね……ッ」
「ん。 泣くなって」
「うん……っ、俺ね、直輝が好きッ……」
「ああ、俺もだ」
「でも俺はッ、直輝みたいに、上手く愛し方も知らなくて……むかつくこと沢山しちゃうと思う……っ、でも、好きだから……っ」
「うん」
「ずっと、ずっとずっと、直輝の傍に居たい……っ!」
「ーーッ」
「だから、ッ」
『だから、返事は"ハイ"だよ』そう続けようと思ったのに言葉は抱きしめられた直輝の腕の中へと消えて行った。
「ッん、直輝」
「祥……愛してる」
「ッ、」
「答えって、いいんだよな?」
「う、んっ……うん、いいんだよ」
「それって、俺と同じ気持ちで間違いないんだよな?」
「うん、うんっ」
「もう二度と勝手に離れないって約束して……俺のこと振っても、もう絶対離れてなんかやらねー」
「っ、振らないよ馬鹿……それにもう二度と、離れないから、また傍に居てもいいですか……?」
「……当たり前だろ。 ずっと俺の傍に居てよ。 俺と死ぬまで一緒に生きて。 歳とってもずっと好きだ、死んでも好き」
「直輝……。 あの、えっとね……、愛してる、よ」
「ふはっ、何照れてんだよ。……あー……まじか。 死にそうだわ。 幸せ過ぎて俺死ぬかも」
「死んだらダメだよ……これから何でしょ、俺達」
「ああ……、そうだよな」
痛いぐらい抱きしめられて、俺も直輝の背中に腕を回す。
サラサラの白い髪が頬に触れて、俺は自然とその髪に指を通した。
何度も何度も頭を撫でながらどうしたら伝わるか考えた。下手でも下手なりに俺の愛し方を伝えたい。
直輝と違って俺は素直でも無くて、上手いことも言えない。直輝を不安にさせる自信はあるのに、直輝を不安にさせない自信が無いなんて、情けないままで。
でもどんなに拙くても直輝は俺の歩調に合わせて歩いてくれる。
俺が生きるスピードに合わせて、一緒に物事を、景色を、見てくれる。
だから直ぐに上手く出来なくても俺も直輝を愛して行きたい。
直輝とずっと、いつか生きる時間が終わる日迄、直輝の傍で生きていたい。
「祥」
「うん?」
「ありがとう。 それと、これから改めてよろしく」
「ふふっ、うん。 こちらこそよろしくお願いします」
「大好きだ」
「うん、俺も」
くしゃりと目元を垂らした直輝が頬を赤く染めて笑う。子供みたいに嬉しそうな表情をして、何度も何度も俺を抱き締めて、俺は直輝の腕の中で死ぬほど幸せだと思った。
「……なに?」
「祥の瞳って、いつ見てもキラキラしてる」
頬を撫でられて、瞳を覗き込まれる。
見つめてくる直輝が不思議で首を傾げたら髪を撫でてくれた。
優しく割れ物に触れる様に、頬を包まれて、視線が絡まり合う。
どちらからともなくゆっくりと近づいた距離はやがてゼロへと変わり、触れ合った唇の温度は暖かくて甘くて幸せの涙が零れた。
「っん、ふぁ」
「祥……好き」
「……俺、も。 キス、もっとしたい直輝……」
「おいで」
手を引かれてもっと深く直輝へとくっつく。首に腕を回して何度も角度を変えては啄む様なキスをして、段々と甘さ増していったキスは深くなっていく。
「ンッ、なお……っあ」
「なあ、ここのジンクス知ってる?」
「〜〜っ、えっと……その……」
「ふっ、やっぱり知ってたんだな。 ムッツリ」
「そ、れは聖夜……!」
「あ、そんなこと言うんだ? 聖夜にちくろ」
「ダメ、ダメだよ! 聖夜傷つくから」
「今更そんなんじゃあのバカは傷つかねーよ」
「っ、ん」
丁度てっぺん、時計で言うならゼロを指す頂上でキスをしたカップルは永遠に結ばれるだなんて良くある甘くて照れるようなジンクス。
そんなのを一々信じるほど俺は夢見がちではないけど、でも嬉しかった。
だってもう一度直輝とスタートした場所は特別な場所に思えたから。
悲しかった思い出が、新しい幸せの思い出へと変わる。家族の思い出から恋人へと。
直輝と触れ合って見えた景色はキラキラと輝いた光に満ち溢れている。
星空も爛々と輝く虹色の光も、全てが綺麗で、直輝の人生も沢山の色に染まります様に……なんてそんな事を願ってしまうほど。
「直輝」
「んー?」
「何もなーい。 ただ呼んだだけ」
猫みたいにゴロゴロ甘えてくる直輝がレアで可愛くてからかってみた。
直輝は猫ってよりもライオンのが正しいけども。何だかいつも俺が甘えてばかりだから、甘えられると嬉しい。
名前を呼んだら当たり前の様に直輝が何?って返してくれる。
幻想的な雰囲気の中で、それが夢のようだと思った。
直輝と生きていく世界が俺の居場所だったらと願った四年間が、尊くて、直輝が愛しくて堪らなかった。
「なあ、もう結婚しちゃう?」
「ッば、バカ! そんな簡単に出来ないだろ!」
「んー、そうか? 俺に出来ない事無いけど」
「……もう本当……むかつく奴」
「愛しいの間違いじゃない?」
「調子のんな!」
「ふはっ、大好きだよ祥〜」
「わぁっ、ちょ、グラグラしてる! 落ちる! 死ぬ、死ぬッ!」
ケラケラ笑いあってキスをして、怒った顔をしてはまたキスをして。
幾らだって触れ合える、どこにだって行ける。
隣に直輝が居れば幸せだって、俺の一生の幸せの居場所はやっぱり泣きたくなるほどに暖かくて柔らかい笑顔に溢れていた。
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