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おやすみとおはよう
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◇
直輝の熱が体を割開いて奥へと届いたとき、息が詰まって上手く呼吸が出来なくなるほど胸が苦しくなった。
抱きしめられた肩が、素肌から感じる体温が、熱く見下ろす直輝の瞳が、全部幻じゃないんだって教えてくれるように身体を走り抜ける甘い痛みに胸がいっぱいになる。
あ……あぁ……夢じゃない。
直輝ともう一度触れ合っている今は確かに現実なんだ。
そうは思うのに目の前の直輝が、愛しい姿がこのまま泡沫の泡のように消えてしまうんじゃないかって不安は、後から後から胸を締め付けて、幸せな痛みはやがて悲しい色へと染め上げる。
だって俺は、直輝以外の人を受け入れた体だから。もう直輝だけだなんてそんな言葉は言えない。消えない過去が在るから。
「……祥、好き」
沢山、沢山、直輝が俺を愛しげに見つめてキスと共に口にしてくれる。
甘くて、くすぐったくて、溺れる程に心地よいのに……それと同じくらい湧き上がるのは後悔と罪悪感だった。
もしも今、直輝に汚いと思われていたらどうしようと考えたら。今迄何度も何回も打ち消して、隠して、押し込んでいた弱い心を覆った壁がボロボロと崩れだす。
直輝を見ればそんな事微塵も思ってもいないことは分かるのに。それでも卑屈になった心は目の前の直輝より、いつか変わってしまう直輝ばかりを想像してジクジクと痛み出した。
治った様に思えた傷口からは、溜まり溜まった膿が醜悪さを一層引き立て傷を酷くさせるように。
直輝に触れられる所からまるで、直輝を裏切って居るような気分だった。
「直輝ッ」
「どうした?」
「……っ」
ーー俺のこと本当に好き?
開きかけた唇は、その馬鹿げた言葉を閉じ込める様に再び閉ざされる。
何を、馬鹿な……
今そんなことを聞けば直輝は直ぐにこの行為を中断してでも俺の心配をして慰めるだろう。
そこまで俺に甘い事を分かっている癖に、それでも不安で臆病なのは、それほど直輝を失うのが怖いから。それほど、直輝を好きだから。
気持ちが大きいからこそ、こんなにも弱気になってしまうなんて、本当に人を好きになることは痛くて辛くて滑稽で、それでいて何よりも幸せなことだと思った。
「……直輝」
「……」
ふと、雨のように降り注ぐ好きの言葉が止んだ。
驚き上を見上げれば見下ろす直輝はどこか悲しそうに、それでいて幸せそうな、どちらとも言い難い表情を浮かべて俺の頬を撫でる。
その手の動きが、俺の涙を拭き取る時とソックリで……ああそうか、直輝が今泣きそうな顔をしているのは俺のせいなんだと気づくのには、そう時間はかからなかった。
「ふふっ」
「なんだよ」
「あははっ、なんで直輝、泣きそう顔してるのー」
「……してない」
…今嘘つき。
直輝だって、大嘘つきだ。泣きそうな顔してるの俺にもバレバレなんだよ。
長いまつ毛が陰を落としているから?
だから、泣いてる様に見えるのかな。
伸ばした手は直輝の頬に触れたけど、涙の温度は少しも感じなくて、どこか安堵する。
「してるよ。 泣いちゃいそうな顔……」
「泣きそうなのは、祥の方だろ」
「ッ、ふふ、うん……そう。 幸せで。 だから怖くて泣きそう」
「祥……」
やっぱり気づいているよね。
だから、そんな困った顔をしているのか。
それは少し自意識過剰過ぎたかな。
でも、不謹慎だけど直輝が泣きそうな顔をする理由がもしも俺と同じ今この時間が夢のようで幸せだから。消えてしまいそうな程に怖いだなんて弱くて情けないけど、何よりも愛しい理由だったならば嬉しいだなんて、ちょっぴり思ってしまう。
ふと、直輝の頬を撫でていた手を、俺よりも大きい手のひらが優しく包み込んだ。
あんまりにもその手のひらが優しくて、堪えていたはずなのにこうも簡単に涙が溢れる。
気づけば抑えていた涙は幾重も瞳から零れ落ちていた。
「だって……もう二度と、直輝に抱きしめてもらえないって。 触れることなんか出来ないって諦めてたのに……ッ、それなのに今、直輝に沢山抱き締めて貰えてるんだよ。 そりゃ泣きたくもなるよ」
「そんなことで泣いてたらこれからどうすんだよ。 今よりもっと抱き締めるしキスも沢山するのに」
「……ふふっ、うん……ッ、ふ……グスッ、なおッ」
「ん?」
ボロボロ、零れる涙の雫が顔を滑り落ちていく。
優しい瞳で俺を見てくる直輝が少し困った顔して笑うから、もっと俺は泣いちゃう。
いいよ、大丈夫だよって、泣くの我慢しなくて良いんだって直輝はいつだって俺が泣く時優しく頭を撫でてくれるから。
困らせているのは分かっているのに、堪えきれなかった感情がポツリポツリと零れ出す。
「俺ずっと直輝だけがッ、好きだよ」
「俺も」
「なのにごめんねッ、俺……結ーー」
悲しくて苦しくて押し殺し切れなかった言葉。その先の言葉は、悲しげな顔をした直輝の唇に遮られた。
言ったら駄目だ。
そう分かっていたのに、謝らなきゃ苦しくて、謝っても苦しくて、訳が分からない程苦しくて。
直輝に嫌われたくない、いやらしさから紡いだ言葉は、直輝が止めてくれた。
ずっとずっと心に引っかかっていたんだ。
あの日以来、その事に触れることなんてなくて。今日までずっと直輝が俺に触れなかったのは、もしかしたらその事に嫌悪感を抱いているからなのかもしれないなんて、そんな事を考えていた。
けれど、キスをして、俺の瞳を覗き込んでくる透き通った茶色の瞳を見上げた時そんな事を少しでも考えてしまった自分が恥ずかしくて惨めで、直輝に申し訳無かった。
「祥、好きだよ。 愛してる。 祥だけだ」
「ーーッ」
自惚れてしまうほどに優しくて愛おしそうな瞳で見下ろしてくる直輝の姿と、沢山の言葉と、愛撫に、ズキズキと痛み続ける心が緩み出す。
悲しくて泣いていた筈の涙が、幸せの涙に変わる。
おかしなことを言って、わざと俺をからかって、少しでも俺が気にしない様にする為に、丁寧に丁寧に優しく腰をうちつけてくる直輝を感じるだけで、今ここで死んでもいいと思う程の幸せを感じた。
「祥ッ、少し余裕無いかも」
「ふぁッ、ん、んぅ、出して……ッ、中ぁッ奥……奥、ちょ、だいッ、直輝」
「やらしい顔……。 写メ撮っときたい」
「ッア……! や、っ、やだぁ……ッ」
「でも、今締め付けたろ……ッ、ハァ、っ淫乱」
「ちがぁ、うっ、ああっ! あっ、ん、アンっ」
「可愛い。 本当、可愛い。 大好き祥」
「〜〜ッ、ひゃ、ッ、ああ……ッ、ーーッ、ぁぁぁッ」
不意打ちの可愛いって言葉に胸の奥がキュンキュンする。
そんな、だって、狡い。
可愛いだなんて言われても嬉しくないって四年前はあんなに思っていたのに、今はこんなにも体迄嘘をつけないほど喜んでいる。
可愛いと囁かれる度に愛されてると実感するから。
そんな全身で喜ぶ俺を直輝は舌なめずりして色っぽく微笑むと、一際強く腰を打ち付けて、一番奥で精を放った。
「ああっ、あーーッ、ひぁッ、ゃッ」
「は、ッ……祥ーッ、祥」
「ああ……! や、らめぇ……ッ、イって、うからぁ! ぐりぐ、りっ、やらぁッ、やらっ」
「無理。 だって祥の中きゅんきゅんして喜んでじゃん?」
「アアーッ、ひゃッ、ぁあん……!」
ドクドクとお腹の中で直輝のペニスが脈打つ。長く吐き出された熱に釣られて俺もやっと許された射精に身を沈めていれば、追い打ちをかけるようにして直輝が腰を回す。
グリグリと吐き出した精液を粘膜に擦り付けるような動きに、頭がくらくらした。
俺……今直輝のモノにされてる……
奥に沢山出されて、グチュグチュされて、俺の指じゃ届かない場所迄沢山突かれて。塗り込む様に直輝で埋められている。
そう考えるだけでどうしようもなくお腹の中はきゅんきゅんと激しく締め付けて、より一層中にある直輝のペニスを感じてしまう。
お陰で続け様に休む間もなく射精してしまった俺は、直輝のペニスが抜かれる頃にはピクピクと体を痙攣させて力無く倒れ混んでいた。
抜かれた孔は消えてしまった直輝のモノを名残惜しげにヒクヒクと求めて、くちゅりと音を立て溢れた精液の感触に、キュンっと締め付けてしまう。
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