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「じゃ、じゃあ卒業式以外はもう戻らなくていいの……?」
「そうだよ」
「へ、嘘! 本当に?!」
「うん」
「ほんとのほんとの本当?」
「あははっ、本当の、本当の、本当だよ」
「う〜直輝ー!」
「お、っと!」
ニコニコ直輝が笑うから俺も釣られて笑顔になる。嬉しくてウズウズする体で飛び跳ねると直輝の首に腕をまわして抱きついた。
落ちないように直ぐに直輝が俺の腰に手を回して抱き上げてくれるからそのまま抱っこされてリビングへと戻ると、寝ていたしーちゃんもソファへとやって来る。
何だかしーちゃん迄ゴキゲンがいいらしい。ゴロゴロ喉を鳴らしては直輝の体に身を擦りつけていた。
「そうだ、じゃあしーちゃんの事直ぐに直輝が連れてっちゃう?」
「直ぐに連れて行ったらしーちゃんも驚くしそれは可哀想だから何度か遊びに来て、享さんが戻ってくる頃に俺の家にお引越しかな。 なぁ、しーちゃん」
「そっかぁ……」
「寂しい?」
「うん」
「でも俺の家に来れば会えるだろ」
「そうだけどね、うん」
「……祥?」
前々から直輝がこっちへ戻ってきたら、しーちゃんはお引越しするのが決まっていたけどいざそうなると寂しい。
仕事から帰ってきて一番にしーちゃんが出迎えくれていたから尚更。
「祥さ」
「ん?」
「俺と住まない?」
「うん……ッん?!」
「俺と一緒の部屋で一緒に住もうよ」
「エッ、ちょっと待って、それって同棲?!」
「うん」
「っ、あ、あぅ……っ」
しーちゃんと戯れながら聞かされた言葉に頭がショートする。
全然考えて無かったと言えば嘘だけど、まさかこんなにも早く話に出るだなんて思っても見なかったから。お互い家だって近いし、頻繁に会おうとすれば会えるし、泊まる事も出来るからまだ早いかなって思っていたのに。
突然の直輝の誘いが嬉しいのと、なんて返せばいいのか分からなくて黙り込んでしまった。
「直ぐに返事しなくていいよ」
「……ごめ、ん」
「ううん、大事な事だし。 ゆっくり考えて」
「……あ、ぅ……あの、直輝」
「ん?」
ポンポンと頭を撫でてそう優しく声をかけてくれる姿に胸が熱くなる。赤くなってるであろう頬を両手で包むと直輝を見上げた。
返事しないままじゃきっと俺が喜んでるとか伝わらない。ちゃんと口にするって決めたんだから、しっかりしろ俺。
「……凄い、嬉しいです」
「え?」
「すっ、すっごく嬉しい、よ! 本当に嬉しい!」
一回目の言葉は俺がボソボソ話したせいで直輝に届かなかったらしい。だから二回目は大きな声で言ったら「聞こえてるよ」ってケラケラ笑われて恥ずかしくて堪らなかった。
「ふふっ、何か祥さ素直になったよね」
「へ?!」
「前よりもうんと気持ちとか口にしてくれるようになった。 別に言わなくても分かるけど、でもやっぱりこうして本人から聞かされるのって特別な気持ちになるな」
「……ッ、そう?」
「うん、そうだよ」
当たり前だけどなかなか出来ない事で、直輝を傷つけても直輝はいつも怒らない。大丈夫だよって慣れた様に笑うか、俺が気にしない様にフォロー迄してくれる。
今もこうして素直になってみたら、褒めてくれるし、ちゃんと変化に気づいてくれて本当に俺には勿体ない程の恋人だ。
そう考えたらもっと近くに行きたくなるのって、くっつきたくなるのっておかしい事なんだろうか。
ずっとイチャイチャするだとかそういうの、男同志だからおかしいって思ってたけど離れてからその時間が勿体ないって気づいた。
おかしくても変でも、好きだったらくっつきたいし触れ合いたいって思うんだなって、そんな事に気づいたのはこの歳になってやっとの事だった。
「直輝、手繋ぐ……?」
「手で足りるの?」
「ウッ」
「こっちおいで」
「……はい」
見透かしたように笑って腕を引かれその胸の中へ倒れ込む。横から抱きしめられてぴったり肌がくっつき合うと心の底から安心した。
「直輝と暮らせたら楽しい」
「大暴れしそうだけどな」
「し、しないように頑張るし……」
「そう? 三日ともたずに朝から殴って来そうだけど」
「それは直輝が朝から盛るからだろ!」
「ほら直ぐ怒る」
「あっ、うぅ」
「ふふっ、嘘だよ。 怒ってても何してても大好きだし、一緒に住めたら俺も幸せだろうな」
「……そっか」
ぎゅっ、ぎゅ、て繋いだ手をイタズラに力を込めてくる。構って欲しがりなそんな小さな行動に二人して笑って、「ん」って近づけられた唇に嫌だって跳ね返したら押し倒されて、お互い見つめあってまた笑って。
でも結局、最後にはキスをする。
もしも二人の帰る家が同じだったならば、こんな緩い幸せが毎日あるのかなって考えるだけで、それだけで幸せで微笑ましかった。
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