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懐かしき想い人
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「久しぶりだね、涼夏」
「ほんっとにね。 まーさか久しぶりのご対面が逆ナンされてる所だとは少しも思わなかったけど」
「あははッ、でもありがとう。 涼夏のお陰で助かったよ」
「……はぁ、相変わらず笑い方変わんないね。 その笑い方本当にずるいと思うよ、何でも許しちゃうよね」
「え、そうかな? 俺じゃよく分からないけど」
「アンタが分からずともあのでかい奴は分かるでしょ」
「でかい奴、ふふっ」
「なにが面白いんだか。 それより何してんの? 誰かと待ち合わせ?」
人懐っこい笑顔はどこへ消えたのか。変わらず女の子にしては少し男っぽい口調に、鋭い視線。
普通にしていればとても美人なのに昔から涼夏は女の子らしさよりも少年っぽさがある少女だった。金色に染められたショートカットがとても似合うよく笑う女の子だった。
今では髪も長くて金髪でも無ければとても綺麗な女性だけど、相変わらず口調は変わっていないしイタズラっ子の様に笑う度見える八重歯も変わってない。それに皆がもてはやす中、唯一涼夏だけは直輝を甘やかさない人だった。
それと何より涼夏は俺にとって特別な女の子だった。それも全部は懐かしい想い出な訳だけど。
想い出だとしても久しぶりに会う彼女に懐かしさやあの頃の気持ちが蘇ってくる。涼夏と付き合っていた頃の、まだまだ幼くて未熟な精一杯の恋をしていた想い出が。
「俺はそのでかい奴を待ってる最中だよ」
「へぇ〜! やっぱり二人とも今でも仲良しなんだねぇ」
「う、うん」
「……ん? なんで今少し動揺したのよ」
「し、してないっ! それより涼夏、凄く綺麗になったね。 見た時驚いて一瞬人間違いかと思ったよ」
「誤魔化し方が雑すぎて褒められても全く嬉しくないんだけど」
「ふふっ、でも顔赤いよ?」
「煩いなー」
懐かしい横顔に、心が擽られる。
照れると必ずそっぽを向いてから困った様に笑う癖。
ああ、本当に懐かしい。
涼夏とは中学の頃、放課後にこうして良く話していたっけ。あまり女性らしさを出さない彼女の綺麗で、澄んだ心が俺は好きだった。一見怖そうに見えても垣間見える誰よりも可愛らしい表情がとても好きだった。
「涼夏は何してたの?」
「あー、私も待ち合わせ。 でも仕事で遅くなるらしくて、どこかで時間潰そうと思ってたんだよね」
「この時間に?」
「ん? 別に普通でしょ、学生でもあるまいし」
「外に女の子一人は危ないよ……。 あ、そうだ! 涼夏が良かったら俺達と居るのは?」
「本気で言ってんの? あの馬鹿は私が居たら絶対機嫌悪くなると思うんだけど」
「直輝? うーん……でも一人にするのはなぁ」
懐かしい記憶を呼び起こしながらも目の前に立つ今の涼夏の言葉に不安を感じた。
俺でさえ声かけられた様な場所に涼夏一人を置いて何処かに行くなんて出来ない。
他人でもなく、昔馴染だから尚更。
それに懐かしい顔ぶりだったのもあって話したいことも沢山あった俺は、何処か呆れていた涼夏の手の引いて近くのファミレスへと足を運んだ。
席についてからは二人ともずっと話が絶えなかった。何より驚いたのは、涼夏も美容師をしているって言うこと。それもよく聞く有名なお店で、俺が働く店のライバル店で勤めているらしい。案外近くに居るものだねぇ、なんて二人揃ってこんなに近くにいたことを驚いていた。
「涼夏は髪の毛染めないの?」
「もうね。 一通り染めたし今は暗めの色がいいかなぁって」
「そうなんだ」
「祥こそ、一度も染めてないの?」
「俺は明るいのとか似合わないから。 でも練習とかでかなり昔に染めたことはあるよ」
「えっ?! その時の写メとか無いの? 見たい見たい!」
「うん、あるよ。 ちょっと待ってね」
思いのほかはしゃいだ涼夏に微笑みが零れる。スクリーンをタッチして少し前に染めた時に撮った写真を探していた時、向かいに座っていた涼夏が見やすいように隣へと席を移動してきた。
だから一緒になって画像の写真を眺めながら目的のものを探していた時、不意に頭上から声がかかる。
物凄く機嫌の悪そうな、ハスキーで聞きなれた低い声が。
「祥ちゃん。 何してんの?」
「あっ、直輝!」
呼ばれて見上げれば、笑顔を貼り付けた直輝が立っていた。
釣られて涼夏も直輝を見上げて、二人の視線があったんだろうその時、直輝が一層笑みを浮かべる。あからさまなその態度に見ている俺が引き攣り笑いを浮かべてしまう程、態とらしい笑顔で。
「俺の席は?」
「へ? あ、えっと」
「そこ空いてるのに見えない?」
「……」
直輝の言葉に言わんとする事が十分に伝わってくる。
この状況で直輝が向かい側に座るなんてことはないし、どうしようかと考えた時それを遮るように涼夏がそう言い放った。
「久しぶりだね遠山さん。 荷物が置いてあったからてっきり遠山さんがこっちに座ってるんだと思ったんだけど、違うのかな?」
「あぁ。 別に気にしないで〜、私今は祥の隣に座ってるから」
「……そう、なら失礼するね」
ニコニコ笑う直輝の背後からどす黒いオーラが放たれる。それに勿論、涼夏も気づいているけど余所行きモードの直輝が腹黒い本音を出さない事も知っている涼夏はニヤニヤ人の悪い笑みを浮かべると直輝を交わして寧ろ互角に嫌なオーラを放っていた。
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