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酔っ払いと意地っ張り
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ギュッギュッて抱きつかれてされるがままになっていた時だった。
宴会用の大部屋になっている部屋の扉から直輝が帰ってきたのは。
「なお……ッ!」
良かった、帰ってない!
まだ居たことにホッとして、それだけで飛び跳ねる程嬉しくなった俺はフラフラする体を立ち上がらせると直輝の方へと掛け寄った。
「直輝さーん、待ってください」
「ん、大丈夫? 手貸すよ」
「えへへ〜、ありがとうございますぅ」
でも直ぐ後ろからヒョッコリ現れた子を見て足が止まる。
差し出された手に小さな女の子らしい柔らかそうな手を乗せて、照れて笑う彼女はとても可愛い。
二人を見つめながら立ち止まった俺は、ゆっくり自分の手を見た。
「……可愛くない」
全然、可愛くない。
俺の手は男の手だ。骨っぽいし、肉も全然付いてない。お客様に綺麗な手って褒められても女の子の手に比べたら汚い。それに全体的にガリガリだしヒョロヒョロだ。
ああ嫌だなぁ。俺じゃいくら張り合った所であの子みたいに可愛くなんか出来ないんだから。
人前で、あんな近くに行く事なんて出来ないんだから。
「あれ? どうしたの祥……直くんは?」
「……」
瑞生さんの隣に戻ると不思議な顔して聞かれた。
ただ首を振るとドスンと横に座り直して目の前にあったジョッキを一気のみしてやった。
「──ッ! 祥!」
「はひ?」
「それ! 飲んじゃダメなやつ……」
「なんれれすかぁ」
「アルコールめちゃくちゃ強いから祥には飲ませるなって……ああ、ごめん……俺のせいだね」
「ふふっ大丈夫れす、もういいんれすよ、どうせ俺は男ですもん」
「……え?」
「直輝らって俺なんかより可愛いこの方が……」
「え、ちょ、祥?!」
グラリグラリ視界が回る。瑞生さんが三人……四人、五人って沢山居て、ぐにゃぐにゃと辺りが捻れている。
周りの声が頭の中で反響して気づいた時にはパッタリと後ろに倒れていた。
「……からだ、グラグラします……」
「も、も〜祥は飲んじゃ駄目だ! 酒禁止! 今お水持ってくるからここに寄りかかってジッとしてるんだよ?」
「……うー」
ぐるぐるに回る天井を見ていたらグラッと視界が揺れて瑞生さんが映る。
何か言ってるけどガンガン響いて何も聞こえない。
押し付けられた角に縮こまって、冷たい壁にほっぺたをくっつけるとヒンヤリして気持ちよかった。
「……きもちー……」
熱っぽい瞼が重くてぱちぱちゆっくり瞬きを繰り返す。
目を開くと辺りが歪んでいて気持ち悪い。
体も奥の方から熱くなってきて尚のこと気分が悪くなってきた。
「ん、熱……脱ぐ……」
ポッポッてお腹の中が発熱してるみたいだ。
冷たいと感じていた壁も温くなってきて、我慢出来ないから着ていたカーディガンを脱ぎ捨てた。
「うう……まだ熱いー……」
カーディガン脱いでも燃える様な熱さが消えない。さっきよりもぐるぐるしてるし、気持ち悪いのも強くなって来た。
シャツも鬱陶しくなって一番上まで締めていたボタンをプチプチと外していった。
首元の締め付けが無くなって少しだけ体が楽になる。
覚束無い指先でなんとか第三ボタン迄外した時には真っ赤な素肌が外気に触れてやっと熱さが外へと逃げてくれた。
「んー……うまく、れきない」
あともう少しで脱げるのにボタンが上手く外れてくれない。
もう、いいや!このまま抜いじゃえっ
ペロンと前が開いているシャツをボタンを残したまま腕を抜いてバンザイして脱ぎ捨てようとした時、ガシッと誰かに腕を掴まれた。
「んんっ、いやぁ……脱ぐ……」
「……」
脱ぐ途中で止められたから上半身を晒したまま頭がワイシャツに突っかかって前が見えない。
挙句に止めてくる腕の力が強くて、あっという間にスルンと裾をお臍まで隠して着直させられてしまった。
ムッと邪魔した相手を睨んだ時、もっとお腹の奥がむかっとして、カッと熱くなる。
「なんれ居るんらよ!」
「ここで脱いで恥ずかしくないのかよ」
「うるっさいなぁ」
「どうしてここまで飲むかな……自分の限界分からないのか?」
「ッ、触るな……!」
「──ッ」
伸びてきた手を思わず振り払ってしまう。
パシン、と渇いた音が二人の間に流れて小さく消えてゆく。
叩かれて行き場を無くした掌の先には驚いて俺を見ている直輝が居た。
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