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傷だらけのラブソング
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セックスをした後は大抵、微睡む爽さんに引き摺り込まれてベットの中へと連れ込まれる。「お前は抱き枕だ」と子供と同じ態度で恥ずかしげもなく言い放ってからは堂々と抱きついて来るようになった。
「……結葵」
「何ですか」
「……いいや。 何も」
首筋に感じる熱っぽい吐息。情事の後だと分かる微かに掠れた声で何度も名前を呼ぶ。
僕が起きていると分かると、必ずこの後は天使さんの話を嬉しそうに話して、それを黙って聞くのが僕達の当たり前になっていた。
「……直輝は、昔から、冷たかった」
「そうですか」
「初めて見た時は妬いた。 俺の、周りに、集まってたくせに……皆、直輝が来たら、俺のそばから離れて……」
ぽつり、ぽつりと話す声は眠けをたっぷりと含んでいて、もう寝たらいいのにとこっちが気を使ってしまいたくなる。
「それ、で……腹が立ったから俺、子供みたいに突っかかったんだ、でもあいつ、綺麗な笑顔作って……ただ、笑うだけで……」
「子供なのは今も変わりませんね」
「う、るせ……。 はは……今考えれば。 その笑顔見た時、俺、本当はもう」
微かに震える吐息。
ああ爽さん。その先を口にしてしまえば貴方はまた、自分の心に自ら杭を打ち込んでしまうのに。
「──直輝に惹かれてたんだと思う」
それなのに、貴方はそんな事考えもせずに強く深く治ってもいないそこへ杭を突き刺してしまうのだから。なんて馬鹿な人なんだろうと思わずにはいられない。
「……紺藤……好き」
か細い声は、震えている。
こちらにまで微かな震えが届いてしまうから、ぼんやり壁を見つめたいた僕の視界も微かにぼやけた。
いつものあのでかい態度はどこへ消えたんだ。いつものあの煩い声はどこに引っ込んでしまったんだ。
モゾモゾと身動きした時に感じた冷たい何か。それは僕の首を濡らすとそのままシーツの方へこぼれ落ちて行く。
「爽さん」
「……ん」
「寝る前に泣いてしまうと、明日になって目が腫れてしまいますよ」
「っぐす……泣いて、ねぇし」
「大人の癖に恥ずかしいだなんて言われたくないでしょう。 だったら早く寝て、明日の撮影に備えてください」
「うっせー……ばぁか」
「はいはい」
「うるせぇ」
振り返りはせずに手を伸ばして、肩に額を預けるその頭を撫でてやる。
サラサラな髪質はやっぱり気持ちがいい。そのまま撫でているとやがて規則正しい寝息が聞こえてきた。
「爽さん」
呼びかけても、答えはない。
「爽さん、実は僕も今日は」
背中に感じる熱に、重みに、安心感を覚えてしまったのは誤算だった。
「貴方に、話したいことがあったんです」
この関係は一時の迷いから生まれた筈だったのにどうして居心地の良さを見つけてしまったんだろう。
「──僕達もう、会うの辞めましょう」
お遊びの筈が、どうしてこうなってしまったんだろう。
「貴方に触れると壊したくなる。 自分じゃ抑えられ無いんですよ。 頭で分かっているのに、また、何度も僕は……」
だからもう、会うのは辞めましょう爽さん。
もう、間違えだと分かっていて、間違えるのは御免なんだ。
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