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四人の男たち
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ついにやって来ました京都ー!!
嬉しい事に空は青々と晴れていて天気は快晴。春の足音を近くに感じる少し寒いながらに懐かしい匂いを感じた三月の温度は、隣に誰かが居ると暖かく感じる素敵なもので。朝からにんまりと頬は緩むばかり。
去年の今頃はちょうど直輝ともう一度スタートをした時だったし、その前は……。思い返したくはないけど、あまりいい気持ちで過ごせてはいなかったから。
改めて付き合い出して初めて迎える三月。
そんなめでたい時に旅行が出来るなんて心の底から嬉しい俺です。
旅行の事、最初は却下されるかと思ったけど数秒間無言の後に直輝から返ってきた返事は「いいよ」なんて驚くもので。二人きりでもないし、それ以前に仕事も、プライベートな時間を作るのも難しいからてっきり断られると思ったのに、正体隠す為にってわざわざ白髪をブラウンに染めるまでしてくれた直輝には正直感謝で足を向けて寝られないと思った。
今朝起きたら夢の中で何かと戦ってた俺にグーパンチ顔にくらったって少しだけ怖い笑顔を向けられたけど、夢見てたしそれは許して欲しい。
「祥ー? ぼんやりしてると転ぶぞ」
「あ、うん。今行くよ」
というわけで今日から二泊三日の京都旅行は楽しみで正直舞い上がっています。
「なお君」
「埋めるぞ」
「な、お、君」
「……お前、この旅行中に事故にあっても俺を恨むなよ」
「ふふっ、そしたら化けて出てやるよ」
……うん、まあ少しの不安は旅行にはつきものだしね。
「祥君。飴玉ちゃん舐めるか?」
「舐めたいですー!」
「はいよ。コーラ味とプリンどっちがい?」
「えっとー……プリンで」
折角、京都に着いたのに飛行機から降りるなりあんな様子の直輝と瑞生さんに少しだけソワソワする。
でも黒江さんは特に気にしてる様子もなくて、飴をくれる辺り余裕なその態度にやっぱり大人でかっこいいなぁと思った。
「……黒江さん? やっぱりプリン味が良かったですか?」
「あー、いやぁ、なあ祥君」
じぃ、っと袋を剥いた棒付きの飴玉を見つめてる黒江さんに呼ばれる。「はい?」と返事を返すと、全く予想していなかった話の内容に思わず苦笑した。
「……この飴ちゃんってぺろぺろキャンディとも言うだろ?」
「はい」
「……えっろいよな〜! ぺろぺろだなんて、えっろいよなぁ!」
いや、二度も言わなくていいですから。
唯一大人だと思った黒江さんは案外こんな感じだ。ハル君からも聞いていたけど「この人本当に見た目だけ年食った爺ですからね祥さん!」なんて数日前の言葉が蘇る。
「その気色悪い呼び方やめろ不愉快だ」
「じゃあ、なーちゃんとか?」
「……本当に心底不快な人ですね。話しかけないで貰えますか?」
「あ、その笑顔この前見たよテレビで。凄いね、なーちゃん。都内のあっちこっちのポスター陣取って」
「話しかけないで貰えますか?」
「なーちゃん」
「埋めるぞ」
仲が悪いわけでは、ない……?
瑞生さんはどうしてか直輝にはあんな調子だ。普段から少し他人に冷たい直輝も、無駄に人の傍に寄り付かない瑞生さんも、二人が揃うと必ず必要以上に話しているからあれはあれで仲が良いんだろう。
そろそろ本気で直輝が呪いの波動とか打てそうな顔してるけど。
「あの、黒江さん。俺達だけでも先に荷物取りに行きませんか?」
「……祥君」
「えっ?! あ、なんですか?」
後ろを振り返った刹那、黒江さんに肩をがっしり掴まれて驚いた。
「おにいさんの事は、黒江さんだなんて他人行儀じゃなくて"お兄ちゃん"と呼びなさいって言ってるだろいつも」
「……あ、はは……。お、おにいちゃん……?」
「そうだそうだ! もっと呼んで祥君! 祥君に呼ばれる度興奮、じゃなくてだな感動するからおにいさ──ブヘッ」
黒江さんがにっこり笑った瞬間、いつから俺の背後に立っていたのか瑞生さんの拳が俺の顔の横を綺麗にすり抜けて黒江さんの顔面に直撃する。
綺麗にかきあげられてセットされていた黒く緩いパーマがかけられた前髪がハラリと落ちて、顔面に未だ拳がめり込んでいる黒江さんは「すまん瑞生」と弱々しい声で謝っていた。
「このクソオヤジ」
「……ついついテンションがな。ほら、旅行楽しみでよ」
「煩い。次また祥に今みたいな事したら金蹴りするから」
「あ、すみません。もうしません」
……うん。まあこれもいつもと変わらないわけで。なんだかお邪魔する京都は少しだけ、東京よりも肌寒く思えた。
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