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お忍び旅行はラブハプニング
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「わー……時代劇の中に居るみたいだね、直輝」
「ふっ、口開いてるよ。キスされて舌突っ込まれたい?」
「なっ?! こんな素敵な場所で変なこと言うなっ」
「おーい。二人とも先に中はいってるぞー」
空港から出ている送迎バスに乗って数十分。
東京とは全く違う言葉のイントネーションにドキドキしたり、初めての旅行だったりで始終感動してばっかりだったけど旅館についた途端に湧き上がる京都に居る実感は桁違いだ。
俺達が泊まるのは高級老舗旅館らしい。本館と新館があって俺達は本館の木造二階建ての方。黒江さんから聞いた旅館の名前を直輝に言ったら凄く歴史のある所だと言っていた。
それもあってか現にいま、風格のある年季の入った建物は和の品格を感じさせてついつい緊張してしまう。東京とは違う街並みは古く昔から伝わる日本の風情を感じて江戸時代にタイムスリップしたみたいだ。
「いらっしゃい。久しぶりね〜!」
「よぉ、元気か?」
「あったりまえじゃない。あんたの後輩も元気よ」
玄関に入ると綺麗な着物を着た女将さんと、中居さん達が出迎えてくれた。
真ん中にたっている女将の左隣にいた一際品のある若女将は、黒江さんと顔を合わせるなりにんまり優しい笑みを浮かべて楽しそうに会話を繰り広げている。
「黒江さん嬉しそうですね」
「あの人も帰るの久しぶりって言ってたしね」
瑞生さんと会話をしながら一歩先を歩く黒江さんに続いて後を追う。
ここの旅館は黒江さんの親戚が営んでいるんだそうだ。
旅行が決まった時にちょうど空きがあるから泊まって行って欲しいということで即欠したんだけど、まさかお邪魔する旅館が古きに渡る江戸時代から続く有名三代旅館の一つなんだと聞いて一瞬驚きに動きが止まってしまう。
こんな由緒正しき所に二泊も泊まるだなんて、失礼のないようにしなきゃと緊張していたけど玄関で出迎えてくれた女将さんは黒江さんに似ていておおらかで勝気な頼れるかっこいい女性で、いつの間にか自然と緊張が解れていた俺はすっかりと打ち解けていた。
人の心を解したり、こういうのも全てもてなす心遣いや思いやりに長けている暖かな職業の素晴らしさなんだって感動してばかりで。
でも、そういう事言うと隣に居る直輝には笑われてばっかりで些か不満だけど無視だ。相手にしてたらキリがないしね。
俺は今日からの二日間、瑞生さん達と楽しく過ごすんだから!
「よーし。じゃあ、頼んだわ」
「はいはい、歳なんだからあんまり無茶しないでよ。それと部屋はちゃ〜んと二つ用意してありますからね」
「おー悪いな。それと歳なのはお互い様だろ」
一足先に荷物を預けて言われた通り玄関で待っていたら、女将さんと会話を終えた黒江さんが戻ってきた。
「皆お待たせ。それじゃあ旅行に行きますか」
京都の中心に位置してる旅館から歩いて直ぐのところに美味しい茶蕎麦のお店があるらしくて、少し早めの昼食を取る為に移動する。
そこは黒江さんが幼い頃、こっちに戻ってくると良く遊びにいった顔見知りの場所らしくて顔には出していなかったけど四人の中で一番興味を持っていたのは瑞生さんだった。
「耀さんの子供時代聞ける?」なんてご飯とは全く関係ないけど、どこか楽しげに聞いていたし好きな人の事に夢中な瑞生さんは可愛い。
直輝も、人気の抹茶フォンデュというデザートがあると聞いてから機嫌がいいしこれだけ自我が強くてキャラの濃い人達をあっという間に纏めてしまう黒江さんのリーダー力には流石だ。
大人の男性〈ヒト〉って感じで凄くかっこいい。
なんて思っていた時、グイッと肩を抱き込まれて直輝を見上げれば不満げな顔をした直輝と目が合う。
「祥」
「え、なに?」
「今浮気したろ」
「はい?!」
いや、黒江さんの事かっこいいとは思ったけど……まさかそんなね。俺の心の中覗けるわけでもないし、そもそもかっこいいって思っただけだし!
「俺以外の人かっこいいとか思ってたら後で痛い目見るよ」
「え?!」
「分かった?」
「いや、……う、はい……」
ずいっと怖い笑顔が近づいてくるから思わず頭を縦に振ってしまう。
すると納得したのか、また何も無かったように前を向いて涼しい顔して歩いてくもんだから直輝って改めて怖いと思った。
俺の心読めちゃう魔法でも使ってるんじゃないかってヒヤッとするだろこんなの。
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