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お忍び旅行はラブハプニング
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茶蕎麦屋さんはどこか暖かくて懐かしさを感じる雰囲気のあるお店だった。
気難しそうに見える店主さんは笑うと目元の皺が濃く刻まれて、ついつい話し込んでしまうような気さくな人。茶蕎麦もつるんとサッパリしていてあっという間に食べていたし名物の湯豆腐は温かくて冷えた体が温まって凄く美味しかった。
「おっちゃんごちそうさん。また来るから元気で居てくれよ?」
「なにゆーてんや当たり前やろ。耀こそ体に気ィつけや」
段々とお昼の時間に近づくに連れ込み合う店内にいつまでも居るのは悪いとお会計をして店を出た。
忙しいのにわざわざ見送ると入口迄来てくれた店主さんは黒江さんと肩を組みながら楽しそうに話していて、どこか寂しそうにも見える。
少し離れた所で黒江さんを待っていた時、話していた黒江さんが一度こっちに戻ってくると瑞生さんの肩を抱いて驚く事を言っていた。
「おっちゃん、昔約束したの覚えてるか?」
「約束なぁ……テストで百点とるゆーてたのか?」
「ちげーよ。大切な奴死ぬまでに見せに来るって言ったろ」
「お、おお?!」
「おっちゃん、こいつ……瑞生が俺の大切な奴だ。宜しくな」
「え……?」
黒江さんが瑞生さんの腰を抱いて胸に引き寄せる。自然と倒れ込む形になった瑞生さんは今聞こえてきた驚きの告白にキリッとした猫目を大きく見開くと、みるみるうちに耳まで肌を赤く染めていた。
「ちょっ、何言ってんだ馬鹿オヤジ!」
「本当の事だ。な〜に照れてんのよ瑞生ちゃん。かぁ〜いいねぇ?」
「はぁ? むかつく。照れてないし可愛いくもない。その言い方腹立つから辞めろ」
「うんうん、可愛いよ瑞生ちゃん。俺の可愛い可愛いお嫁さん」
「〜〜ッ?!」
ドシドシ胸を叩いて黒江さんから離れようとするものの、黒江さんは腰に巻き付けていた腕を器用に移動させるとあっという間に瑞生さんを正面から抱き締めてしまう。
おちゃらけた物言いにより一層顔を赤らめた瑞生さんは、もうお手上げだったのか離れるのを諦めて黒江さんの胸に顔を埋めたままフリーズしていた。
「んでおっちゃん、俺達の事認めてくれるか?」
「いや〜、お前、ほんまかぁ。ほんなべっぴんさんをなぁ耀が……。瑞生さんゆーたな? 耀は何かと餓鬼やけど決めたら守る男やった。きっとあんたん事も言葉通り守ってくれる。迷惑かけると思いますがこの馬鹿を宜しくお願いします」
「えっ、いや……俺こそ、はい……ッ」
驚いていたのは店主さんもだった。でも、真っ直ぐな黒江さんの言葉にまるで何かを見通し理解していると言うように目尻を垂らすと本物のお父さんの様に瑞生さんへと頭を下げる。
慌てて瑞生さんも深くお辞儀をすると、店主さんは頭を上げるなり瑞生さんと黒江さんを二人纏めて抱き締めていた。
そんな光景を見ていて少し胸がキュッとなる。
俺達もいつか、ああして誰かに告白した時受け入れてもらえるのかな。
今じゃ日本を代表するモデルの直輝と、ただの一般人の俺が隣を歩くなんてこと許されるのかを考えると少しだけ、ほんの少しだけジリジリと胸が痛んだ。
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