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お忍び旅行はラブハプニング
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いたたまれなくてあちこちに彷徨う視線。
目の前の直輝が見れない。小さいヤツって思われたかな。一々嫉妬するなんてめんどくさいって思われたかも。
感情は理性でいくら言って誤魔化そうとしても聞いてくれない。
直輝は、俺と付き合ってるから連れていかないでってずっと言えなかった言葉がお腹の奥でズキズキと痛みに変わってくようだった。
「……祥」
「ッ」
低い声に、拳を握る手に自然と力が入ったその時だった。
「ふっ、あははっ」
「……へ……?」
ぎゅうっと目をつぶって直輝の言葉を待ってたのに聞こえてきたのはケラケラ笑う声。
どういう事か分からなくて右目だけを開いたら、クスクス楽しそうに目尻を垂らして笑う直輝が居てその表情は優しい。
「怒ってない……?」
「ふっ、くくっ……。……はぁー、本当に馬鹿だよなぁ」
「ば、馬鹿……ッ」
馬鹿って言われた……。でも怒ってないなら、良かった。
ひとしきり笑った後、直輝は息を整えるなりさっきとは違う意地悪な笑みを浮かべる。
「あー笑った。怒るわけないだろ? ヤキモチ妬かせる為に態とナンパされたんだから妬いて貰わなきゃ困るよ」
「態と?!」
言葉にショックでわなわなと手が震える。
「そうだよ。俺がナンパされんのが嫌なら祥がぴったり傍で見張らなきゃな〜? 離れたら俺、どっか行っちゃうかもよ」
「〜〜ッ、なんでそんな事!」
「だってさ、祥」
意地の悪い笑みを浮かべていた直輝が不意に真面目な顔をする。
自然に伸びてきた手が驚いて騒いだ時に落ちてきた横の髪を耳にかけてくれて、離れる間際ふわりと頬をなぞるから心臓がドキッと跳ね上がった。
「せっかくの旅行なのに俺の傍から離れてばっか」
「ッ」
「なんで?」
そ、れは……。
バレてないと思っていたのに全部筒抜けだったんだ。
「今朝も、ここに来てからも、俺のこと見ないよね?」
「……ちが」
「言い訳じゃなくてどうしてなのか聞かせて欲しいんだけどな」
「……〜〜ッ、聞いたら、どうせ鼻で笑う」
「笑わないよ」
外で直輝と居れるのは貴重だ。
こんなに人が多いところを歩いても誰にも「天使直輝」だとはバレてない。普通の一般人として、俺の隣を歩いてくれてる。
楽しい。楽しいけど、ちょっぴり家でダラダラと過ごす時間が恋しい。
「祥?」
「……だって──」
かっこいい、とか……。触れたい、とか思っちゃったら困るじゃんか。
家じゃないから、外だから手を繋ぎたくなっても、キスして欲しくなっても絶対に言えない。それに、懐かしい昔の直輝が目の前に居るようで見慣れない姿に昨日から心臓が痛い。
いつもみたいに見たら俺の心臓、もたない。
「……だから、……やだ」
「なにそれ。そんな可愛いこと思ってたのかよ」
可愛くない。ただの我侭だろこんなの。自分で一番めんどくさいことなんかわかってるよ。
直輝が相手だと俺ってこんなに何かを望んでばかりのやつだったんだって同時に自分の悪いところ沢山見えてくる。
八つ当たりばっかで暴力ばっかで勝手に怒って一人で落ち込んで。直輝が声かけてくれるまで自分から動けない天邪鬼で。
「だからそれが可愛いんだって、祥」
「……ッ」
あ、また……。また、この優しい目だ。
「外でキスしたら駄目なんて誰が決めた?」
「る、ルール!」
「そんな法律あった?」
「わ……わいせつ行為……」
「ふっ、なんだよ? そーんなエッチなキスして欲しかったの?」
「ッ?! ちち、違うよ!」
そうじゃないよ!馬鹿じゃないのか!
ただ普通に、普通に考えたら男同士が人の目につくところでそんな事出来る訳ないだろ。アメリカでもあるまいし、ここは日本なんだから。
「……ごめんね、そんな泣きそうな顔するなよ」
「直輝が意地悪だからだろ……ッ」
「でも好きだろ? 意地悪されんの」
「〜〜ッ!」
もう、本当に腹立つよ。
そんな自信満々に恋人に対して「好きだろ?」なんて言わないだろ。意地悪されて嬉しいわけないじゃん。……でも嫌いじゃないから否定も出来ない。
直輝にそんな事教えてやらない。悔しいから。
「人目につかなきゃいいだけだろ。もっと恋人らしく旅行楽しもう、な?」
「……別に。今でも楽しい」
「ふっ、天邪鬼祥の登場か」
ぐしゃぐしゃと大きな手が頭を撫で回す。
モヤモヤしてたのに今はそんなのどっかに行っちゃって、俺ってやっぱりめんどくさい奴だなって再確認。
ヤキモチ妬くのってどうしたらしなくなるのか模索してばかりだった。
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