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お忍び旅行はラブハプニング
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全力で今のこの状況に納得がいかない。
「プッ……ふふ」
「お〜見違えたなぁ。やっぱりべっぴんさんは何着ても似合うん──ッ、いてぇ! 痛ぇよ瑞生! 耳が取れる!」
「ヘラヘラしないで気色悪い」
「おま……ッ。はぁ、妬いてる瑞生もセクシーでそそられる──イテテ! だから痛いっつーの!」
目の前で繰り広げられる痴話喧嘩は無視してこうなった状況に陥れた直輝を見る。
ねっとり熱を含んだやらしい視線で頭の上から足のつま先迄舐めるようにニタニタと見渡すと「いいねぇ」なんて、どこかの悪代官の様に笑った。
「全然良くない。脱ぐ」
「いいだろ祥。似合ってるよ綺麗だな」
「嬉しくない! どうしてあんなにかっこいい着物が沢山あるのに俺だけ……──俺だけ舞妓さんの衣装なんだよ!」
「だからそれは……何でもいいだろ?」
「良くないッ」
言い訳さえしない態度に心底腹が立つ。
俺は出来れば時代劇に出てくるような武士と同じ格好して京都を散策したかったのに着いた途端あれよあれよという間に用意されたのは派手やかな女性物の衣装。
赤、黒、白、ピンクの色とりどりで鮮やかな着物に見惚れたはしたけどそれは着たいからじゃなくて俺が地味に和服フェチだからだ。
むかし、美容高校で着付けの勉強や座学の時に色々知って興味をもった。
だから今日だって沢山ある店から凄く立派な着物をレンタルさせてくれるここを選んで尋ねたのに、赤地に金色の華がまい白と黒の色で桶絞りと言う柄が入った華やかで色っぽい着物を着せられた上に化粧までされた俺はすっかり別人だ。
見事なまでに昔からコンプレックスだった頼りない体のお陰で自分でも嫌になるほど喉仏さえなければ女性となんら変わらない。こういう時せめて怒り肩だったなら、なんて思うけど残念ながらなで肩なうえ焼けない白すぎる肌はここぞとばかりに女の様に見せてしまう要因になっていた。
ついでに嫌いなたれ目もだ。
「かっこよくない……」
「え? かっこよくなりたいのかよ?」
「当たり前だろッ! 俺は男だよッ」
「ん? あんなに可愛く鳴くのに? 昨日はヤダヤダって言いながら俺に──」
「うっさい、黙れ!」
ペラペラ語る口の中に泥を詰めてやりたい。
興奮して赤くなってるんだろう肌にパタパタと手で仰ぐ。熱くて、赤い顔を見られたくなかった為に直輝に背を向ければスルリとうなじを撫でられて口づけられた。
「ひ……っ」
「うなじまで真っ赤」
「さわ、んなッ」
「暴れんなよ。そんなに警戒されると気持ちに応えたくなるだろ祥ちゃん」
「応え、なくて、結構、だっ!」
叱るように言葉を区切り、語尾を強くして訴える。けれど飄々とした直輝にはなんのダメージを与えない。
ましてや、ぬるりと熱をもった肉厚な舌が首筋を舐めあげてきて本格的に藻掻いた。
背後から抱きしめて両腕を押さえつけてくる直輝は愉しそうに笑みながら耳朶に歯を立てる。
「──ッ、やめ!」
「耳弱いよな」
「な、おきッ」
分かってるならやめて欲しい。
クチュッと態とらしい水音が鼓膜を揺らす。撫でるように耳朶をなぞった舌が不意に耳の穴へと侵入し、一層直接的に響くやらしい音に尾てい骨の辺りがゾクゾクと震えた。
「ッ、ぁ……や、め」
「やらしい顔。着たばっかだけど脱がしたほうがいいか?」
「な、に言ってん、の……ッは、ぁ」
まずい。このままだと本当に直輝に流されちゃう。
でも反抗と言う反抗も出来ないまま膝がわらう。欲情を含んだ熱い吐息混ざりに名前を呼ばれると毎夜のあの時間を思い出して体は勝手に熱を溜め込む。
どうするんだこのままじゃ本当に──
「──失礼致します」
「ッ!」
シたくなる。
そう、心根が負けそうになった刹那仕切られていた襖が少しだけ放たれ、声を掛けてきた店員さんが一礼し直輝の名を呼んだ。
助かったと言えばいいのか。
バクバクと破裂しそうな程に煩い鼓動を聞きながら、ほんの少しだけ残念に思っているやらしい気持ちに気づいて心底落ち込む。
それを見透かしたかのように「男、なんだから」と態と男の部分を強調して仕方ないよね?と同意のことだったとでも言わせようとするその手口は狡賢さにお手を上げだった。
「もういいから早く着替えて来いって」
「はいはい。俺がかっこよくて見惚れちゃった祥が楽しみだなぁ〜」
「だれが見惚れるか! もう直輝の顔なんて見慣れたッ」
自分の端麗な容姿の良さをわかっているからか俺の強がりな言葉なんて気にする様子も見せない。
寧ろ態とらしく甘い笑顔で店員さんに笑いかけるとポウ、と頬を朱色に染めて見惚れられていることを俺に見せつけて「じゃあね。大人しくしてるんだよ」と要らない置き土産
を残して消えた。
何が大人しく、だ。俺は犬じゃないし子供じゃない。
そうは言っても直輝は常日頃俺のこと子供や愛犬に接するみたいな態度だし、怒ってむくれてる俺も俺でキスされたら許してる辺りどうしようもないな。
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