アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
伝えぬ想いは掌に還る
-
腕の中で再び「ごめん」と小さく繰り返す祥に罪悪感が波のように押し寄せる。
謝るのは俺の方だ。祥はただ当たり前の事をしようとしただけで、相手はまあ大間違いだが。
けれど泣きそうな理由は体が痛いからでも無くて、直くんだと思ってる俺にキスを拒まれたのが相当傷ついた上に、祥の矜持をことごとく砕いたようだ。
「俺が男だから嫌なんだ」
「違うって、そんな事ないよ。直くんは祥なら例え犬でも血のつながりがあろうとも好きになってるだろうから」
「……じゃあなんでキスしてくれないの」
堂々たるいじけモードに突入した祥は膝を抱え唇を尖らせては咎めてくる。
酔っ払いほどめんどくさい生き物はないと改めて再確認しながら、祥の前髪をかきあげておでこにそっとキスをした。
これは親愛なる友人へのキスだ。昔も今も変わらない大切な友として、過去の想い人として。これでどうか許して欲しい。唇の繋がりはどれだけ貞操概念が緩い俺でも、たった唯一の人のためのものでありたいのだ。
「……ごめん、許して祥」
「……いいよ」
「ありがとう。優しいね」
腕の中に抱き込んで優しく背を叩く。
ふわりと香る花の匂いは最早祥の体臭なのだろう。けれど最近は香水をつけているきがする。ほんの微かだが。送り手はやはり直くんなのだろう。
柔らかな髪に擦り寄りこのまま眠れと念を送る。甘やかす様に体をゆっくりと揺らし眠りを誘っていたが、ふと違和感に気づいた。
そうだ、再び胸の辺りを弄られている気がする。
「祥、いい加減にしなきゃお互い地獄を見るよ」
「……エッチしたい」
「ッ?!」
今更そんな事で狼狽するほどではないが、衝撃が凄かった。あの祥が、ただ手が触れただけで過剰に照れる祥の口からそんな言葉を聞いたら誰だって驚くだろう。
思わず元気になってしまったソレに苦笑をもらした。俺もほとほと現金な奴だ。性欲もさることながら、欲望に忠実なのは男の悲しい性だ。
「抜きあいっこはセーフになると思う?」
「ぬきあいっこ?」
「一緒に、ここを触って気持ちよくなるの」
「……ちゅう?」
「え?」
「おちんちんで、チュッてするの、そうしたらきもちー」
うっとり、目尻を垂らし色気を放つ祥にむずむずと腰が痺れる。
祥の言葉にどこかで聞き覚えがあると思えば、俺と祥が──正しくは祥は働いていた──勤めていたサロンのオーナーが当時学生だった無垢な祥に酔っ払い、変なことを言わせていたのを思い出した。
あのオーナー、がっつりとセクハラだ。祥がその気になれば1発アウトだろう。このままあのサロンに在籍することを杞憂してしまった。
「なお! 早く、ちゅーてしてっ!」
「あ、こら」
コアラの様に首に腕を巻き、腰に足を絡めて祥が畳にひっくり返る。おかげでがっしりと拘束されている俺は祥に覆いかぶさる事になり、はだけた浴衣の裾から細い生脚が顕になった。
白皙の肌に思わず手が伸びる。触れてみれば想像以上に柔らかくて、大切に片思いしていた子が、この子があの悪魔の様な男に好き勝手されているんだろうと思うと何だか複雑だ。
勝手に弟の様に思っていたしね。今更ながらにやはり直くんには優しくしたくないと思う。
「スベスベ」
「んっ、はぁ……きもち、もっと、こっち」
真っ白で傷一つない滑らかな太もも。柔らかくて、女の子よりも綺麗なしなやかさに喉が上下する。
祥の手に誘われるまま太ももを通りすぎ、下着の上から存在を示すモノに触れるとびくりと祥の薄い胸が反り上がった。
「あ、ッん……ん」
「祥、気持ちいいの?」
「うん、きもちぃ……そこ、すき」
足の付け根を撫でて緩く爪を立てる。身をかがめ祥の首筋から鎖骨にキスを落とすと、控えめに開かれた足の間を大きく割開き柔らかな太ももへと吸い付いた。
ちゅ、ちゅっとリップ音をたてて肌の上にキスを落とし、その満足感から思わず強く吸い上げた。まるで真っ白な雪の上。まだ他の誰も踏みつけたことのない綺麗な雪上に足跡を残す様な気分だ。
けれどこの瞬間、はっとする。目前に広がる花開いた紅い跡。ほんのり色づく噛み跡。
甘く上がった嬌声と「いやぁ」と身をよじる祥の嘘の言葉。
雄の本能に火がつき、ビリビリと背を掛け走る欲情に顔を上げた時、二度目の冷水を浴びせられた気分になった。
「おいおい、瑞生チャーン。それはまずいでしょうよ」
「祥……」
腕を組み、手首からコンビニの袋をさげた耀さんと、その少し後ろをいくつかの小皿が乗った盆を手にする直くんが立ち瞠目している。
二人の姿をみた刹那、二匹の獰猛な獣に喉笛を噛み切られる様な恐怖が走った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
466 / 507