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伝えぬ想いは掌に還る
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布団の上へゆっくりおろす。その頃には少し機嫌も戻っていた。何十歩の距離であっても、好きなお姫様抱っこに満足したらしい。
「耀さん」
背中に回していた手を離そうとした時、逆に首に回った瑞生の腕に引き寄せられる。
「もっと」
それから合わさった唇に、俺も応えた。食らう様なキスに、瑞生の腰が揺れる。わかりやすく反応を見せる事に俺も嬉しく感じた。お陰で、説教は後日に、若しくは、最中にでもしようかと思った矢先見つけてしまった。
「ん? おい、これどうした?」
「ァ……ん、やだ、もっとキスしろってば、ぁ」
うっとり双眸を垂らして、潤んだ猫目と、甘い声が強請るが流されない。
「瑞生、この噛み跡はなんだ?」
「……っ、痛い」
浴衣を肩から脱がそうとした時に、くっきりはっきりとついてる噛み跡に若干苛立たしく感じた。
首に巻きついてこようとする瑞生を引き剥がすも、本人は言う気なんてサラサラないらしい。俺と根気比べするって言うんなら過去に散々泣いてる癖に懲りない奴だ。
「言わねぇ気か?」
「……べつに」
「はっきりしような瑞生ちゃん」
「うざい。べつにいいじゃん、ちょっとぐらい噛まれてもさ」
俺の詰問に、瑞生の機嫌がみるみる悪くなる。しらけた空気を咎めるように俺に背を向け四つん這いでどこかに逃げようとする瑞生の足を、許すこと無く掴んで一気に引き寄せた。
「ちょっ、と! 急に引っ張んなよ!」
「まだ話終わってないだろ」
「何笑ってんの変態」
「お前、これ許したのか?」
「はぁ?」
引きずり寄せたせいで瑞生の浴衣はほぼその意味をなしていない。おかげで新たな鬱血痕を臍の横に見つけて、不穏な気配は自分でも分かるほど瑞生に対して湧き上がった。
その時だ、
「なあに、おじさん。ヤキモチ妬いたの?」
妖艶に笑って、瑞生が俺にそう言ったのは。
おまけに嬉しそうに笑みを浮かべるとうつ伏せの状態から、仰向けに反転する。そうして乱れた浴衣から覗く脚を恥ずかしがることもなく開脚した。
「こっちも確認した方がいいんじゃない?」
「触らせたのか?」
「自分で確認しなよ」
囁くと瑞生は、自身の手を下肢へと伸ばして窄まる穴を指で左右に拡げた。
くぱぁ、と口開く内壁がヒクヒクと蠢く様子がよく見える。ピンク色のひだが誘うように収縮し、数時間前に散々拡げられた瑞生の後孔のふちはぷっくりと充血していた。
「ね、挿入れて、耀さん」
艶かしい情景に喉が上下する。溢れ出る色香に誘われる。
だが瑞生の誘いには乗らなかった。
よく考えなくとも腹が立つ。なーにが「妬いた?」だエロ餓鬼が。妬いただ何だのじゃあ済まされねー事をこいつは四年経ってもわからない。俺がどれだけ瑞生相手に優しくしてるか。傷つけねーようにどれだけ激昂を抑えつけてるか。瑞生は微塵も分かっちゃあいない。
それが腹立たしくもあって、有難いとも思った。
「やなこった」
「は?!」
「見たらわかる。やってねーし、触らせてねーならそれでいい。けど二度目はねぇからな」
「……意味分かんない。あんた、俺が浮気したらどうするわけ?」
まくし立てる様に瑞生に言われ思案する。
「それは無いな」
「え?」
「俺の事大好きだろ」
「はぁ?!」
浮気の気配ぐらい分かる。
だがそれ以前に酔う度に擦り寄って仕事迄行くなって甘える瑞生が俺を好きだって言う言葉を疑ったことも無い。それに浮気を懸念した事もない。瑞生が好きだって言う言葉を真っ直ぐ信じられるのは瑞生の態度が真摯なものだからだ。
けれどそれ以上に俺が瑞生を好きだから、浮気なんか許すわけがない。そんな本音を言うには少々歳を取りすぎたが、年甲斐もなく独占欲は瑞生よりも遥かに俺の方が強いだろう。
思案に囚われていた時、顔面に枕が飛んできた。
「大ッ嫌い!」
枕が重力に従い膝の上に落ちる。そうして再び見えた瑞生の顔は鬼のように恐ろしかった。
「大体さ、あんたなんなんだよ! 噛み跡はなんだ、とかさ。あんた俺に怒る権利あんの? そんな大層な人間じゃねーだろ!」
「怒ってねーだろうが。寧ろ切れてんのは瑞生だろ、落ち着け」
「……だから、それが問題なんだよ……ッ」
再び癇癪を起こした瑞生はくしゃりと顔を顰める。俺の言葉に擦れた小さな声で返事をしていたが、聞き取る事が出来なかった。
「俺と同じ年の頃ヤリ歩いてた癖にっ、あんたに説教なんかされたくない」
「過去を引っ張りだされちゃあ、なんもいいかえせねぇじゃんよ?」
「ほんと腹立つ。もう別れる……あんたなんか俺が捨ててやる」
勢いのままに飛び出た言葉に俺以上に瑞生が驚いていた。
だがそれを悟られまいと散々罵る口も、俺を殴る手も止めない。どうしてここまで拗れるか。嘆息するも、どうするかと思案する余裕はまだこの時にはあった。
それも数秒後には、ぽっきりと折れる事になったのだが。
「離せって、言ってんだろうが!」
ぐっ、と起き上がった瑞生の勢いとともに蹴りが顔面に直撃した。ぎょっとした瑞生は力が抜けた様に足を下ろすと、切れた口端からは血が流れる。
「あ……ご、め……俺、ここまで」
「辞めた」
「……え?」
自分で分かるほど冷めた声だ。
好き勝手言われても耐えるつもりだった。でもここまで好き放題されて笑ってやるほどお人好しじゃあ無い。
瑞生の言う通り俺は駄目な大人なんでね。
「優しくしてやろうと思ったが辞めた」
「か、がりさん……?」
「お前は本当に俺を怒らせるのが上手いな」
へらりと笑った仮面が剥がれ落ちる。真顔のまま問う俺からの殺気を俊敏に感じ取った瑞生は逃げ出そうと藻掻くが、それよりも早く瑞生を片腕で抱き上げると露天風呂がある庭へ続く廊下へと向かった。
「離せって! 何するつもりなんだよっ」
「お仕置き。好きだろそういうの」
「ぃ……やだ、やめろ、やだって!」
「遠慮すんなよ瑞生。お前が泣こうが叫ぼうがそう簡単に許してなんかやらねぇから」
暴れる瑞生の両腕を廊下の柱へ括る。浴衣の帯できつく締めてから笑いかけてやると、一層瑞生の顔は青ざめた。
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