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嫉妬と本音は五歳児
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客室と露天風呂を繋ぐ窓ガラスの向こうにはいつの間にか暁光がさしていた。
鬱々とした気分を晴らす為、まだまだ刺すように冷える朝方の風に吹かれながら煙草に火をつける。微かな赤色を灯し、フィルタが燃える。
ゆっくりと煙を吐き出すと幾分か気持ちが落ち着く様だった。
結局祥が眠ってからもいまいち寝付けないまま迎えた朝は眩しくて鬱陶しい。これが散々祥をかわいがった後ならもっとましだろうが、今はそんな気も沸かなかった。
祥はあまり煙草を好まない。口に出しては言わないが、煙草の匂いがする場所は自然と避けるし体に悪いと言って奪われたのはまだ学生の頃だった。
それもまだそういう意味で好意を寄せてることを明かしていない頃の話だ。
今よりも幼い顔立ちの危うげな雰囲気を纏った祥がいちいち奪いに来るのが可愛くてたいして吸いたくもない煙草をチラつかせては気を引いていた。
今考えてもどうしようもない悪あがきの上に格好悪い。そして今も変わらず子供のままだ。
ジワジワと羞恥心が湧き上がって来て続け様に新たな煙草に火をつける。
苦いと思っていたこの味も知らずに慣れたのは祥と別れた後だ。
煙草に手を出しても体に悪いから駄目だと怒ってくれる温もりはその時傍には無かった。それが酷く虚しくて、物足りなかった。
今はきっと、いや絶対幸せすぎると思う。ものすごく。
それでも、もっともっとと強請るのは悪い事かと考えて見ても至極当然の行いだろうと行き着くのは確実に俺が傲慢だからだ。ないものねだりをしない人間なんかいないだろう。
黒を混ぜた蒼はいつの間にか太陽の光を混ぜ合わせ鮮やかなコントラストになっていた。
すっかりと冷えた体は意外な事に綺麗な朝焼けによって暖かみを覚える。
明日、祥にも教えてやろう。
祥が起きたら昨日の事は水に流して旅行を楽しむ。付き合いもあるんだ。どこまでも傲慢に押し付けても仕方ないだろう。
そう気持ちを切り替えたっていうのに、その数時間後にはいとも容易く気の行き先は方向を変えた。
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