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撫でるその手
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――え
何が起きたんだろ
スン、と鼻をすすれば
鼻腔いっぱいに俺の大好きな直輝の匂いでいっぱいになる
俺の頭を抑えてるのは直輝の大きな手で
俺をいま抱きしめてるのは怒ってる筈の直輝
ハテナばかりが浮かんで
これもまた夢なのかと思ったとき低く掠れた声が聞こえてきた
「……祥」
「な、んですか」
「……」
ドキドキと緊張しすぎて敬語になってしまった
直輝も少しそんな俺に怪訝そうな雰囲気を醸し出したけど直ぐにまた口を開いた
「簡単に人にベタベタ、ベタベタ触らせんな」
「え……?」
「直ぐに誰でもいい奴とか言うな。 俺の前で他の奴と楽しそうにしてんなよ」
「な、直輝……?」
「俺以上にお前の事好きな奴なんて居ないし、女とか男とかじゃなくて俺は祥だから惚れたんだ。 なのに自分を卑下してばかりで腹が立つ」
「へ……?! ご、ごめんなさ……」
「それに、まるで俺が捨てるみたいな考え方してるけど。 百パーセント捨てられるなら俺だし、俺達の関係握ってんのはお前だってのいい加減自覚しろこのバカ野郎が」
「……」
「たまに自覚無さ過ぎて腹が立つよ。 なんで祥が捨てられるとか不安になってんだよ……不安なのは俺の方だっての」
「そ、んなの……そんなの当たり前だろ! だって俺は女じゃないし直輝の事好きなんだから!」
「だから、なんでそこで俺も同じって思えないんだよ。 俺も祥が好きなんだ。 祥に惚れたのは俺なんだぞ……俺が惚れたから、いま祥が俺を好きになってくれた」
「……それは」
「いつも自信満々で居ろとは言ってない。 ただもう少しぐらい自惚れてくれてもいいんじゃねーの?」
「……」
「お前は俺の恋人だろ? 胸張って言ってやれよ。 天使直輝は俺の彼氏だってそんなヴィッチ女の言葉に傷ついてないで恥かかせてこいよ、負けんなよヘタレ」
「〜〜っ」
「俺に愛されてるって自信持てよ……。 こんなに好きでも、祥がいつまでも自身が無いままじゃ結局伝わってないのと一緒だ」
「ごめん……」
「これ、結構きついよ祥。 好きだって伝えてるのに祥に聞こえてないみたい……一方的に俺1人が伝えた気になって恋人気分で舞い上がってるみたいで情けなく思える」
ゆっくり、でもはっきりと話してくれる
直輝から初めてこんな言葉を聞いた
ずっと、そう思ってたんだって知る
直輝の考えてたこと
ずっとずっと聞きたいって思ってたのに
俺に話してくれなかった言葉達
顔は見せてくれないままだけど
今までの分を吐き出すように
直輝が少しずつ気持ちを話してくれた
「それにやっぱりムカつく。 俺の祥なのにどいつもこいつも簡単に触りやがって腕折ってやりたい」
「……直輝」
「馬鹿じゃねーのとか思ってんだろ。 子供かよって、俺らしくないって。 でもこれが俺だよ。 祥の事になったら餓鬼で独占欲の塊で俺だけにしか笑いかけないで欲しいし祥が俺と同じくらい俺に惚れてくれたらとか考えるくらい格好付けたがり」
「……うん」
「祥の事めちゃくちゃにしたくなる時ある。 好きすぎてたまに壊すんじゃないかって怖くなる……昨日もボロボロな祥見て何してんだって思う反面満たされてた。 あんな事されても祥が否定しなかった事に安心してた、試してた」
「……ん。 知ってる」
「……ふっ。 後、それが嫌い。 俺よりも俺を見抜いてるところが嫌いだ」
「でも分かっちゃう」
「……馬鹿みたいに昔から一緒だったもんな」
「うん。 ずっと直輝の傍にいた」
「これからもだ」
「うん……」
「……俺の本音聞いてどう? 面倒くさって思っただろ」
「……んー、ちょっと」
「この野郎」
「ふふっ、でも俺も同じだから。 だから……、ね。 嬉しいってのが素直な感想」
「……」
「直輝がヤキモチ妬くとか本音言うと信じてなかったよ。 だっていつも涼しい顔してるし笑ってるしびくともしない」
「余裕あるふりしてただけ」
「俺はもっと縛ってもらってもいいんだよ」
「亀甲縛り?」
「いま下ねた話すのは最低だっ」
「ふはっ、悪かったよ」
「……だから、あのね……恥ずかしいけど、直輝に俺のだって言われるの案外悪くないなぁなんて思ってる」
「……うん」
「俺も直輝の事独占したいから、俺だけじゃなかったんだなぁって。 それに直輝俺が本当に嫌がることはしないの知ってるから」
直輝の背中に腕を回して頭を胸に預ける
トクン、トクン、って心地よい心臓の音が聞こえてきてゆっくりと瞼を閉じる
綺麗で大きな手が俺の髪を撫でてくれて
いつもの癖で指に髪をクルクル巻き付けたりなんかしちゃって
それが、くすぐったくて気持ちいい
ああ好きだな
大好きだって沢山好きが溢れてくる
苦しくて痛くて悲しくて
話したくて触れたくて笑い合いたくて
それなのに素直になれなくて傷つけて意地張って
友達の時間が長すぎて
恋人としての時間があんまりにも未熟すぎて不安定すぎる
友達だった頃のイメージじゃなくて
恋人としての新しい直輝の一面を知っていく
それでも直輝を好きって気持ちが薄れることはなくて、より一層濃く強くなっていた
俺が直輝の事を好きなのは嘘偽りない
ただずっと直輝が俺に
自分の感情をいってくれなかったのが
何か俺が頼りないって思われてるのかなって
俺じゃあダメなのかなって
そんな事ばっか考えて苦しくて
話して欲しくて直輝の支えになりたくて
ずっとモヤモヤしていた気持ちが直輝が1歩俺へと近づいてくれたお陰で晴れていく
この人とずっと一緒にいたい
そんな気持ちがこんなにも当たり前みたいに心に溢れて自然に思える日が来るなんて思わなかった
誰か人をこんなに愛するなんて思ってもみなかった
もっと、もっと未来の話だと思っていたけど
俺は早くも愛したいって思える人に出会っていたらしい
ずっとずっと昔から傍に居てくれた直輝に
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