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再開
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「……っ」
自分のことここまで嫌いになったのは初めてだ
日に日に嫌いな気持ちは積み重なっていくけどまた意味もなく優しい直輝を傷つけた
「もう……何やってんだよ俺は……」
倉庫にたどり着いて荷物を置いたままぼんやり壁に寄りかかって天井を見上げる
そういえば別れる前の最後に会ったのは
二日遅れのクリスマスだったよなぁ
直輝珍しく酔って帰ってきて
むちゃくちゃした癖に次の日はもう居なくて
でもちゃんとその翌日は俺と一緒に過ごしてくれた
びっしり詰まったスケジュールをなんとかずらして俺のために仕事終わりにおもちゃ屋さんかけ走ってプラネタリウムなんて買っちゃってさ
本当、もうなんでかな
沢山喧嘩したのに
毎日いやってほど言い合いしたしぶつかりあったのに
それでも真っ先に思い浮かぶのは
優しい声で微笑む直輝の姿ばかりだ
「……っ、ふ」
泣きたくない
もうあの日に沢山泣いたんだ
だから泣いちゃダメだ
こみ上げる悲しみを無理矢理に奥へ奥へと押し込める
じんじんと直輝に触れられた場所がまだ熱を持っていて心が締め付けられて堪らない
直輝に会えたら何かが変わると思ってたけど違う
俺が変わらない限り何もこの現実も変わらないんだ
「何泣いてんの?」
「え?!」
「……ふらふらしてるから心配で帰れないって」
「な、なんで……」
「何年幼馴染してたと思ってんの?」
「だって、でも!」
「祥の冷たい態度なんて今更だろ」
「……っ」
ドアに背中をあずけた直輝が俺を見ながら静かに微笑む
戸惑う俺なんて目に入ってないみたいに
ズンズンと歩き出すと直輝が目の前で立ち止まった
「それと言いそびれた事あって」
「言いそびれたこと?」
「……ただいま」
「────ッ!」
「別れたって言っても喧嘩別れした訳じゃないだろ?」
「……っ」
「だったらお帰りって聞きたい……だめ?」
「……っ、言えない」
「なんで?」
「言えない……!」
お帰りなんて、言う資格俺にはない
直輝みたいに俺はまだ……
「言ってよ、祥」
「……」
「俺、あの日から全然成長出来なかった」
「へ?」
「祥に振られて、色々考えて勉強する為に行って色んな事を見て学ぶことは出来た」
「……」
「でもないがしろにしたまま逃げ込んだら結局何も変わらないんだよ。 だから今お帰りって言って欲しい、俺のために」
「……そしたらどうなるの?」
「そしたら……ここからまたやり直す。 止まったままだったけど、もう全部忘れる」
「……ッ」
「祥もその方が良いだろ? 普通の関係に戻ろう。 聖夜も困り果ててるしな」
直輝の目を見ることが出来ない
俺は……どうしたいんだろう
お帰りって言えば
直輝はここから再スタートするんだ
俺とのこと全て忘れて
1から始めるんだって
俺もそうしたいって
そうあるべきだって足掻いていたのに
いざ目の前で直輝にそう告げられると
鈍器で頭を殴られたような衝撃だ
「……言えない」
「え?」
「言わない!」
「ちょ、おい!」
直輝との隙間を抜けて部屋を飛び出す
真っ直ぐに控え室に戻ると鞄を持ってビルを飛び出た
言えない……言いたくない……
言ったら直輝は俺から離れるんだって思ったら言えなかった
一人取り残されるのが怖くて
昔と変わらないまま笑える直輝が怖くて
逃げ出したまま何も考える事が出来なかった
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