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近づく距離、阻む手
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「……本当に迷惑じゃない?」
「迷惑だったら言わないよ。 お休み」
「……お休みなさい」
「うん」
パチリと電気を消すと畳の上に敷いた簡易布団の上に寝転ぶ
チラリと布団の中から直輝を見たら
化粧台についている小さな豆電球を付けて雑誌を読んでいた
「……」
寝れない
直輝が居る事が逆にソワソワして落ち着かない
でもせっかく直輝が気遣ってくれたのに
翌朝寝れませんでした、とかもっと失礼だしな
羊でも数えてみようかな
そしたら寝れるとか聞くし
そう、色々考えてみたものの
結局寝なきゃって気持ちが焦るだけで全く寝付くことが出来なかった
「寝れないの?」
「え?」
「さっきからゴロゴロしてばっか」
「……いやなんか」
直輝を意識しちゃって寝れません、なんてこと言えるわけもなくてゴニョゴニョと語尾が小さくなる
こうなったら気絶してでも寝るしかないなんて意地になっていた時、布団がパサリと捲られた
「えっ?!」
「なに?」
「いや、なにって俺こそ聞きたいんだけど」
「布団に入ろうとしてるだけ」
「だから何で?!」
「座るの疲れた」
「い、意味わかんないからっ」
そう言ってる間にグイグイと布団の中に潜り込んでくる直輝に驚いてしまう
一人用の布団に大の大人二人が入ったら狭いに決まってる
それに無駄に近いし
直輝の体温が背中にぴったりくっついていて一層緊張したせいで眠るなんて無理だ
「こっちおいでよ」
「ば、バカ! 無理に決まってるだろ!」
「なんで?」
「なんでって……」
「離れてたら狭いから」
「だったら出てけって!」
「出たらそれこそ寒いじゃん」
「そ、じゃなくて……」
うぅ……なんて弱々しい声が漏れる
そんなにくっついてたら
馬鹿みたいに緊張して速い鼓動が伝わるんじゃないかって、声が震えてるのがバレるんじゃないかって
こっちはもういっぱいいっぱいで、目が回りそうだ
一人キャパオーバーになってたじろいでいると直輝の腕が腰に回ってぎゅうっと抱き寄せられる
途端にさっきよりも包むように伝わる体温に体がビクッと跳ね上がった
「ハハッ、祥暖いな」
「〜〜っ」
「なに、もしかして緊張してんの?」
「す、するわけないだろ!」
「ふーん」
バクバク、バクバク
心臓が煩く脈を打つ
全身の血が湧き上がって
体中の神経が背中に集中して
心が苦しいくらいに締め付けられる
「これでも落ち着かない?」
「え……?」
「蹴られたら辞めとこうって思ったんだけど、人の心臓の音って落ち着く効果があるらしい」
「だ、から……って」
「でもやってみない事には分からないだろ? 俺も体休められるし、一石二鳥」
「……」
そう言って笑う直輝から
確かにトクトクと優しい心臓の音が聞こえてくる
それに何よりも直輝の腕の中は相変わらず暖かくて落ち着いて安心した
「寝れそう?」
「……うん」
「良かった」
耳元で優しい直輝の声がする
息を吸う度に鼻先に懐かしい匂いがして
体中が暖かい
「……直輝」
「ん?」
「そ、っち……向いても、いい?」
「……うん好きなようにしな」
「……」
きっと朝になったら後悔するのは目に見えてるけど
でも今だけ
今日だけ直輝に触れてもいいかなんて
居るかも分からない神様にお願いをした
「……」
「……」
モゾモゾと寝返りをうって直輝の胸に顔を埋める
さっきよりも大きく規則正しい心音が聞こえてきて、それと同じリズムで直輝が背中優しく叩いてくれる
久し振りの直輝の腕の中で願ったことは
もうずっと朝が来なかったら良いのになんて子供じみた思い
このままずっと夜が続いたら
直輝の腕の中に居られるんだと思ったら
切なくてどうしようもなかった
起きていたいって気持ちとは反対に安心した体は緊張の糸が解けて睡魔が襲ってくる
うつらうつらと意識が段々となくなって行く中、お休みと囁く優しい声と、おでこに何か柔らかく暖かいものが触れたようなそんな気がした
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