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初めて聞く本当の声
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***
三年前にあった事を静かに辿ってく
黙って聞いていた直輝が、全てを話し終えた時には悲痛そうな表情を浮かべていてやっぱり間違えたのは俺だったのかもしれないと何に後悔をすればいいのかも分からなくなってくる
「……っ、なんで」
「……」
「どうして俺に……っ、もしかしたら」
そこまで言うと、ハッとした直輝が口を結ぶ。それから震えた手のひらが伸びてきてもう一度強く強く抱きしめられた
「祥……もう一度付き合おうっ、三年前みたいにそんな風に一人で考えさせないから、ちゃんと二人でどうしていくか考えて」
「考えて……どうするの」
「……」
「考えてもまだ何も、俺達変わってない」
「そんな事ない……っ。三年前とは違だろ俺も、祥も」
「直輝」
まだ話してる途中の言葉を遮って、直輝の顔を見上げる
ああ、きっと怒ってるんだろうな。俺が言わないで一人で決めたことを本当は責めたくて、でも責めないのは俺が傷つくから。どうしてだって言い詰めたいのにその言葉を飲み込んで黙るのは、俺を傷つけたくないから。
三年前と、何も変わっていない
本当嫌になるほど優しすぎる直輝に泣きたくなった
「直輝、俺、結葵君と寝た」
「ーーッ」
「直輝が帰ってきて直ぐに。 別に付き合ってない。 でも、寝た……そんな奴でも直輝は好きのままでいれる? 直輝の言う通り三年前とは違うね、 俺も、直輝も、俺達の関係も」
「……それでも構わない」
「直輝が嫌になったら他の人に逃げるかもしれないよ」
「それでも……もう一度好きになってもらえるように努力すればいい」
「……好きにならなかったら?」
「……っ、だとしても傍に居たい。 守るから、何があっても絶対に俺が守るから……っ、俺が必ず祥を守る」
「……。 変わってないね、直輝は」
「……?」
そんな直輝が好きなのに
そんな直輝が嫌いなんだ
「祥ッ、どこ行くんだよ」
「……ホテルに戻る」
「話、終わってないだろ……っ」
「……終わってるよ」
「待て……祥、ッ、待てって」
抱きしめられていた腕の中から抜けて部屋を飛び出す。楽しそうな笑い声に、弾むようなワルツ。明るいダンスフロアと、殴るように雨が降り荒れている外。洋館の外へと踏み出せば全てが夢の様だと感じる程に現実に身が沈む
全て見えていても見えなくなった頭の中には後悔ばかりがグルグルと巡って、その考えから逃げ出したくなった時後ろから追いかけてきた直輝に腕を掴まれた
「待てって! ここまで話してこのまま終わりなんてできるかよ」
「……直輝は」
「……」
「直輝は一体誰と付き合ってたの……ッ?」
「は?」
荒れている外は雨の音に打ち消されて直輝の声が聞こえずらい。だから必然と声が大きくなったんだろう、なんてのはただの言い訳だ。感情が抑えられない。堪えていたものが溢れ出すと、抑えきれなくなった思いが俺も直輝もぶつけ合うように怒声へと変わっていった
「直輝は俺を守るって言うけど、俺は守られてなきゃならない程弱いつもりなんかない」
「それが今の話と何が関係あんの?」
「あるよ。 直輝が付き合ってるのは俺だ……女じゃなくて、男の俺だよッ? なのにいつも守るからって……俺は守られたいなんて思ってないし、女みたいに守ってもらってばっかりなのがどうして傷つくって気づかないんだよッ!」
「ッ、そんなこと今迄1度だって言わなかっただろ」
「それは直輝も同じだろ。 今だって本当は俺を責めたいくせに何で黙るんだよ?! 何で遠慮するんだよッ、何で本音を隠すんだよ……ッ!!」
「だったら……祥が言ったみたいに責めれば解決すんの? どうして一人で決めたって、何で俺に何も相談しなかったって祥を責めたら今が変わんのかよッ?!」
「何で相談しなかったのか教えようか……。 俺がした所で、俺がいくら止めたって、勝手に動いて事務所辞めてただろ、違うか? ……そんな事したら皆悲しむって……なんで分かってくんないの」
「だからそれはッ!」
「俺を守る為? 俺と付き合うために、楽しいって今はやってて良かったって、夢にもなってるって言ってた道を捨てるの?」
「ーーッ」
直輝に掴まれている肩が痛む
雨に打たれた体は冷たくて
直輝の手のひらから伝わる熱がやけに強く感じた
顔を上げれば不意をつかれたように驚き黙る直輝を見て覇気のない笑みが溢れる。やっぱり辞めていたんじゃん。俺が相談したら直輝は辞めてたじゃんかよ……
「直輝……俺ってそんなに守られてなきゃならない? 俺そこまで直輝に全てを押し付けるぐらい情けない?」
「ちが……ッ、違う……そうじゃない!」
「ちゃんと、俺のこと見てよ」
「祥……」
「守らなきゃならない四歳の頃の俺じゃなくて……女みたいに扱ってばっかじゃなくて、男の俺を、直輝の事俺も守りたいって思ってる男としての俺を……ッ、ちゃんと見て欲しいのにッ」
ずっと、ずっと思っていた
女みたいに守られる度に
女には到底なれない自分が嫌いになる
女みたいと言われ続ける見た目にも
どう言われたって俺は男のままだっていう現実に耳を塞ぎたかった
ずっとずっと苦痛だった
女みたいに例えられる顔も、
女みたいに守ろうとするばかりの直輝の愛情も、だって俺は男なんだから。どれだけ嘆いたって悩んだって変えることも無ければ変わるつもりもない。
それに、直輝が守らなきゃならないと使命感に自分を追い込むのは、過去の俺のせいだ。だからこそ過去から抜け出さなきゃならなかったのに、ずっとそのままで居たらいつか男の俺に嫌気がさして嫌われたりなんて日が来なくなるかもしれないなんて、直輝がいない事を考えるのが怖くて、ずっと……ずっとそんな直輝に甘えてたんだ
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