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これからのこと
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「食べれそう?」
「ん……美味しいー」
「そっか、良かった」
皿に入った粥を冷まして祥の口に運ぶ。
さっきから俺の胸にもたれかかって看病されてる姿は普段なら見れない程に甘えん坊だ。
それが、つい数時間前迄は祥を諦めようとしていた俺からすると現実だとは未だ思えなくて変な気分だ。
けど、これが現実なんだよなぁ・・・・・・
祥と別れてただ息するように過ごした一年間。
聖夜から祥が頑張って居ると聞かされて、このままクズになりたくないと葛藤した半年。
やっと何かに興味を湧く程には余裕を持ち出しやれる事をやり出して一年半。
もういい加減逃げるのはよそうと終わらせる為に来た一ヶ月前、そしてそんな考えは甘かったと思い知ったこの前の事。
三年間を一瞬で引き戻された時は本気で焦った。
それなりに心の準備は十分にできたと思ったから帰ってきたってのに、祥の姿をあの日スタジオで遠目から見た瞬間に無理だって悟ったんだ。
後ろ姿を見ただけで抱き寄せたくて堪らなかった。
そのまま多すぎる程の愛を注いでふわりと笑う度に目尻を垂らした笑顔にキスをして、何度も好きだって言いたくて堪らなかった。
ただただ恋しかったわけだけど、まあそれから今日迄色々あって。
突き放されてきたりもしたが諦めなくて良かったと今だからこそ思える。
「なに?」
「……いいや。 何もないよ」
はぁ、もう手放したくない。
腕の中で幸せそうに体を揺らしながらご満悦な笑顔で俺を見るコイツがとんでもなく好きだ。
俺の元へ祥が戻って来たとは思っていない。
まだ何も解決してない訳だし。
祥がどうして急に気持ちを変えたのか知らなければ、なんであんなにも拒んで居たのに俺の元へ来てくれたのかも分からない。
きっとまだまだ聞いてないこと、知らない本音が俺達の間にあるのは確かなことだ。
けど今だけは少しこの緩い時間に身を任せたかった。
これからのことを話すのは祥の熱が下がってからでもバチは当たらないよな、何て事を考えながら強く抱き寄せる。
「祥好きだよ」
「んー? んふふ、俺もー」
ふにゃりと笑って甘えた声で擦り寄る祥は相当熱でやられてるのは分かってるけど可愛い。
これが通常なら今頃「離れろ!」とか何とか言って顔面に平手が飛んできてる筈。
でも今はこんな甘えたな祥で少し良かった思ってる。
・・・・・・どちらにしろ俺はもう一度ニューヨークへ行かなくちゃならないのだから。
それまでの充電は胸焼けする程甘くてもいいだろ。
俺が向こう行く事でよりを戻す事になるのか、それともまだそうとはならないのか、俺達のこれからに大きく影響はするだろうけど。
前のように気持ちがどこにあるのか分からない過去よりも、言葉を真っ直ぐに伝えて貰えた今とじゃ、気持ちの持ちようが全く違う。
今はあんな焼け付くような心臓の痛みはない。
むしろ広がるのは心地いい鼓動と暖かい色と愛しい人の笑顔と温もりだ。
「……直輝?」
「ん?」
「泣いてる?」
「……いや、泣いてないよ。 泣き虫祥ちゃんとは違うからな」
そんなに顔に出ていたか?
不思議に思って祥を見れば心配そうに見てくる暖かい手が俺の髪を撫でた。
くすぐったいその手の温度に俺も一緒になって笑えば安心したのか祥が眠そうにもたれかかってくる。
「腹いっぱいになった?」
「うん、美味しかったぁ」
「そっか、じゃあ薬飲んだら二階行こう。 今度は俺も一緒に寝るから」
「……うん」
少しばかり不安を映す瞳を見て、俺も寝ることを伝えればいくらかほっとした表情を浮かべる。
薬を飲ませて、食器を片して、この熱によって甘えん坊なお姫さまへとなっている祥をいざ二階へ連れて行こうとして思わず笑ってしまった。
「抱っこする?」
「いらない」
「じゃあ首から手離して?」
「……いやだ」
「これじゃあ祥も俺も歩けないだろ」
「……ううん」
ううんって唸ってるのか、否定してるのか、それとも否定しつつも納得してるのか。
よく分からない声を発してる祥はソファに腰掛けたまま俺の首元から腕を離さない。
だったら抱っこするよなんて脅しても首を横に振るだけ。
何かまだ納得して居ないのかどこか拗ねた表情の祥に負けた俺はもう一度その隣へと腰を下ろした。
「何がご不満なの?」
「……」
「さっきまで機嫌良かったのに」
「だって……」
「んー?」
「だって寝ろ寝ろって……直輝そればっか」
「そりゃあ。 病人はしっかり寝るのが仕事だろ?」
「……病人じゃないもん」
ツーンとした祥の「もん」なんて語尾の可愛さは計り知れない。
ああ今すぐ虐めて沢山甘やかして物凄く泣かせたい。
こうやって嗜虐心を煽ってるなんて事を祥は知らないんだろうな。
知っていてやってるならいつの間にか祥は天使から堕天して小悪魔にでもなったんだろうか。
そんな事を考えながら思い浮かべるのは祥の小悪魔な姿。
・・・・・・悪くない。
振り回されるより振り回したい。弄ばれるよりも弄びたい。そんな今迄の俺の中での嗜好が弄ばれるのも構わなないとまで変化球を出してしまうんだから祥にどこまでも惚れているんだとしみじみ痛感した。
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