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テキーラ・サンライズ
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言われた通り洗面所まで連れて行けば瑞生は服を脱ぐこともなくそのまま浴室に入っていく。
いきなり来て、酔って吐いて、ふらふらして……これが瑞生でないんならここまで甘やかしたりしないだろうに。
「……瑞生風呂出るまでここで待ってるから」
「……はぁ?」
溺れやしないかと不安で一先ず上のシャツを脱ぎながらタオルで体でも拭いて瑞生を見張るかと思った時シャワーの音に混じって不安そうな声が聞こえてくる。
いやぁ見張りなんていらないだの何だの言いたいんだろうが酔って吐いた様なやつを風呂に一人ぼっちには出来ない。
溺れたり何かあったら大変だ。
瑞生の我侭もこればかりは譲ってやらないと思った時、曇りガラスが開かれて湯気と共に伸びてきた手のひらが腕を掴んで引っ張りこまれた。
「何言ってんらよ〜、アンタも一緒に入るの!」
「は?!」
「なに? 不満? 文句あんのぉ?」
「いや瑞生……」
「グダグダ言わないれ早くっ」
「お、おいっ! ちょ、危なーー」
────ガシャン
響く浴室にけたたましい音がする。
瑞生との押し相撲の結果二人揃って床に倒れ込んでしまった。
転ぶ時に瑞生の体を抱きしめたまま尻餅をついたケツはビリビリ痛んで腰をやったのかと思ったらヒヤッとした。
「み、瑞生……お前……ぎっくり腰になったらどうすんだよ」
「……」
「……ったく。 ほら、降りろ」
「やだ」
「は?」
「……やなの」
「……」
シャーと流れるシャワーのお湯が頭に降り注いで服を体を濡らして行く。
瑞生の服も俺の服も、もうとっくにびしょびしょだ。
濡れた肌に瑞生のおデコがくっついて、聞こえた小さな否定の声はシャワーの音に負けるほど小さい。
「嫌って言われてもなぁ……どうしたら」
「なんで」
「……」
「ねぇなんで俺のこと追いかけてこないの?」
「……瑞生?」
「なんで言い訳しないの? 許して欲しくないの? どうしてそうやって嘘でも何でもついて俺に許して貰おうってしないの?」
「……」
「俺のこと好きなら卑怯な事してでも追いかけてきてよ……っ。 夏紀さんのせいにしてでも俺に許してもらってよ……っ」
座る俺の膝上に跨って向き合った瑞生が肩口におでこを預けて静かに話すその言葉に、力が抜けていく。
どんな言い訳したって何も変わらないだろ……、そう心で返した返事は瑞生には聞こえないまま。
壁に背中を預けると少しだけ冷たいタイルの温度が肌を刺激した。
「夏紀さんの事庇ってんの」
「……違う」
「嘘だ……庇ってる……どうせ夏紀さんの事悪く言われるのが嫌だから」
「瑞生。 聞け……庇ってるんじゃなくて、もしも言い訳して逃れても俺は結局瑞生を取り戻せたか? 瑞生はそんな俺の嘘に黙って頷いたのか?」
「〜〜っ」
「……嘘一つついたら、またそれを守る為に重ねて嘘を付いていかなきゃならねぇだろ。 そうやって何度もついた嘘を本当に瑞生は許せんのか?」
「ッ、分かんない」
「……」
「分かんないよッ!」
「ーーっ」
顔を上げた瑞生と目があって、その表情に心臓が鷲掴みにされたように痛む。
……どうして俺はいつも泣かせるんだろう
ポロポロと瑞生の猫目から涙が零れていた。
後から後から続いて止まらない大粒の涙を見て、微かに動いた手のひらはやっぱり涙を拭ってやる権限も無いなんて弱気な考えによって動かす事さえ出来ない。
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