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夢の時間、光るキス
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*
『果たして諸君はこの部屋から出れるかな……?アハハ、アハハハハ!!!』
男性のしゃがれた声に不気味な口調。心臓がどくりと嫌な脈を打つ様な高らかな笑い声と共に元々薄暗かった部屋は真っ暗闇に包まれた。
「……」
「扉開いたな」
「…………」
「祥、扉開いたよ」
「う、ウン?!」
「……」
とんっと肩を叩かれて思わず声が裏返る。見下ろしてくる直輝の口元はいやらしくつり上がっていて嫌な予感しかしない。
「もしかして祥さ」
「違うから!」
「何も言ってないけど」
「いやほんと全然違うから! 全然怖くないし全然ビビってもない!」
「へぇ〜、なら行こうか」
「ほんとに行くの……?!」
「当たり前だろ。 祥が言ったんだからな、お化け屋敷入りたいって」
「……はい」
にっこり笑顔を向けられて背筋がもっと凍る。無言の威圧が凄くて思わず敬語になってしまった。
どうして入りたいなんて言っちゃったんだろう……
余裕だと思ったんだ、子供向けのお化け屋敷なんてきっと楽しいだけで愉快だと思ったのに、入り込んだ部屋は思った以上に薄暗くて冷や汗が滲む。
こんな事全く予想していなくて、小さな子が悲鳴を上げるたびに俺もビクビク肩が揺れていた。
「な、直輝」
「んー」
「あれに乗るの?」
「だろ」
「落ちたりしない?」
「そりゃ大問題だね」
「落ちたらもしかして」
「まさか」
「っ」
「まさか、落ちたら幽霊に連れて行かれちゃうかもとか馬鹿なこと言うなよ」
「ま、まさか……!」
「良かった。 てっきり馬鹿な事言うのかと思った」
「……あはは」
人の波に沿って歩けば係員のお姉さん迄薄気味悪く覇気のない声で誘導している。
黒く丸い形をした3人掛け程の乗り物に乗って部屋を回るらしい。
言われた通り乗り込むと、案外スピードはゆっくりで横に良く回転をしたりするから視覚になっている背後も横も有難い事に良く見えてもっともっと恐怖心を煽られた。
「祥ちゃん」
「な、なに?!」
「怖くないならもっとそっち座れよ。 俺落ちる」
「やだ……」
「いや本当にそろそろ落ちそうなんだけど」
「うぅ」
黒い乗り物に乗って数分もしないでこれだ。中は真っ暗で愉快な音楽と良く見れば可愛いとも感じるお化けのキャラクターは、昔幼い頃に見たキャラクターマンガの主人公だった。
冷静にそんな事考える事が出来る反面、俺達よりも前の乗り物に乗った子達から悲鳴が聞こえる度に俺まで一緒に緊張しちゃう。
お陰でジリジリと無意識に隣の直輝に詰め寄って、言われる通り直輝は端っこの端っこ迄体を詰めていた。
「抱きしめてやろうか?」
「は?!」
おずおずと離れようとした時パシッと手首を掴まれてそんなこと言われた。
抱きしめるってここで?!どこで?!なんて目を回していたら今度は直輝が俺に詰め寄ってくる。
「怖いんだろ?」
「こ、っ怖くないってば」
「嘘つき。 ずっと下見てた癖に」
「だって」
「ここ真っ暗だし、皆それぞれの方向いてるから誰にもバレないよ」
「い、要らないっ!」
ニヤニヤしてるから思わずいつもの反射で突き放してしまって後悔。
意地で思った以上に距離を取って端まで来たことを後悔したのは直ぐの話だった。
グルグルと左右に動く事がやけに激しく大きくなって、90度回転したと思ったらそのまま後ろを向いた状態でグネグネとした下り坂をマシンが降りていく。
前向きじゃないまま緩やかに落ちていく事がこんなにも怖いなんて事知らなかったなんて、後悔しながらふと横を見た時、あたり1面お墓の中。
目の前の草むらから急に不気味な人形が飛び出て叫び声も出ないままビクッと体が飛び跳ねる。
「ヒッ?!」
驚き過ぎて叫び声も喉に詰まったまま、今迄溜め込んだ恐怖心が一気に爆発した。
「う、っ、あ、ああ!」
「っ、おい祥!」
「やだっ……! やだ、お化け嫌だっ!」
「お化けってただの人形ーー」
──ガタンッ!!
「?!」
足元からせり上がってくる恐怖心に耐えられなくて、頭の中を巡る良くない妄想は心臓を早める。
足首掴まれたら?!手首掴まれて引っ張られるかもしれないし、もし俺だけ変なの見てたら?!
そんなこと考えたら止まらなくなって直輝に必死になってジタバタと助けを求めたらマシンが急停止をした。
それも後ろ向きで落ちてるこの状態のまま。
恐怖心はピークに達して、知らぬ間に目の端から何か水が零れ落ちた。
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