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「それにしても凄いタイミングだったね」
「ん? 直輝には近くに行くって伝えてたぞ」
「え?! そうなんだ」
リビングに聖夜と綺月さんを案内すると、しーちゃんが嬉しそうに出迎えてくれた。
柔らかい体を抱っこしながらソファへ腰を下ろすよう二人に伝えて、直輝はずっとベタベタして来てうざかったからお茶くみに行かせて追い払う。
先程の事があって少し気恥しかったけど聖夜と綺月先生が仲良さ気に話している姿をみるとそれもいつの間にか吹き飛んでいた。
「直輝が聖夜の連絡に返すのって意外……」
「ああ、それな。 だから俺じゃなくて綺月さんにしてもらった。 直輝も綺月さんには優しいからな」
「あははっ、確かに」
「俺の悪口?」
「うん、直輝の性格の悪さについて」
「祥ちゃん俺に喧嘩売ってる?」
「う、売ってない!」
「直輝君も、祥君も、仲が良いですね」
綺月さんの柔らかい話し方と微笑みに思わず顔が熱くなる。別に仲良く無いですって答えたらもっと笑われて恥ずかしい。
おぼんに来客用のカップを二つと、直輝と俺専用のカップを持った直輝が戻って来てまた顔が熱くなった。
なんであいつは、自分専用のカップが何処にあるのか分かるんだろ……。ずっと昔からある直輝専用の食器を未だに残していた事がバレた事にも、特に変わったそぶりも見せずソレを当たり前に使う直輝にも何故か胸がギュッとする。
同棲したら、こんな感じなのかな?なんて昔なら考えもし無かったそんな未来の姿をほんの少しだけ、想像してしまう。
想像しては勝手に赤らんでしまう顔が恥ずかしくて、直輝からカップを受け取るとゆらゆら漂う湯気へ視線を落とした。
きっと昔の俺なら、未来のことなんて考えなかった。考えてそうじゃなくなる事も、不確か過ぎることに夢を見るのも嫌だったから。
でもいつの間にか当たり前の様に未来を想像してる自分に気づいて物凄く恥ずかしくて、それと同時に未来の話を当たり前の様にする直輝の癖が俺にもしっかり移ってると思うとちょっぴり嬉しくも思えた。
「綺月先生は紅茶ですよね?」
「わぁー! ありがとう直輝君、相変わらず気の利くいい子ですね」
「いえいえ、聖夜が普段お世話になってるんで」
「おいっ、 お前は俺の保護者か何かなのか?」
「何だよムッツリ。 綺月先生が俺に取られ無いか不安なのか?」
「ちげーよ」
「ふーん?」
「ちげーよ!」
「煩いなぁ。 分かったから早く取れよいつまで俺に持たせる気だ? お前はブラックコーヒーな」
「……おう」
綺月さんには手渡しで「どうぞ」なんて優しく笑いかけて居たけど聖夜には顎で勝手に取れなんて命令している姿に思わず笑ってしまう。やっぱり性格悪いよね、って聖夜と視線を合わせて微笑みあった。
でも、それも結局は懐かしい光景で高校以来のこの空気感に何だか胸が熱くなる。聖夜を直輝が弄って、それを見て綺月さんが笑って。気づけば俺達は時間も忘れて遅くまで話込んでいた。
楽しい時間ほどあっという間に過ぎてしまうのが悲しい。もう帰っちゃうの?と思わず喉まで出掛けた言葉はすんでのところで直輝によって塞ぎ止められる。
「ムッツリ、これお土産」
「おう、ありがとうな。 家に帰ったら綺月さんと二人で開けるわ」
「気に入ると思うよ、祥がずっと悩んでたから」
「ふっ、ありがとな祥。 また遊びに来るから」
「う、うんっ! じゃあね聖夜、綺月先生もまた来てください」
思わず俺へと向けられた視線にドキッとした。
だって、……直輝が手なんて絡めてくるから。
思わず見上げても直輝は爽やかな笑顔のまま。でも指先は誘う様に翻弄してくるから顔が熱くなる。
二人にバレない様にこっそりと背中で隠れて手を繋がれて、言葉にしなくても分かるその気持ちが伝わってくるから。
今も親指で手の甲をくすぐってはからかってくる直輝に、俺はただ弄ばれるばかりでバクバク煩い心臓を落ち着かせると、二人の背中を見送った。
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