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懐かしき想い人
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そんな二人にも相変わらずだなぁと思う。
あの頃よりは随分と大人になっただろうし、平気かと思ったけどそうでも無かったらしい。
「直輝、何か頼む?」
「いやこの後ご飯行くし大丈夫。 それより祥ちゃんは何も食べなくていいの?」
「ンッ。 う、ん……大丈夫だよ」
向かいに座る直輝の手が伸びてきて頬に触れる。寒い外からやってきた直輝の手はひんやりとしていて、綺麗で骨張った指でくすぐられるとふるっと体が震えた。
「それで、どうして遠山さんと会ったわけ?」
「えっと俺が困っててそれで、」
「困ってたって何かあったの?」
「あ……それは、その」
矢継ぎ早に質問されてどもってしまう。素直に言うべきか、言わざるべきか宙を仰いでいた時。隣でコーヒーを飲んでいた涼夏が口を開いた。
「逆ナンに遭ってる所を助けただけ。 やましい事は何も無いからその胡散臭い笑顔辞めてくれない?」
「……それはどうも。 ナンパって男?」
「ふふっ、真っ先に男にナンパされたか心配されてるけど相変わらずだねー、祥は」
「お、女の子達だった! もう、涼夏も笑うなってば……。 これでも昔よりはまともになったんだから」
「それはそれは良かったですなぁ〜」
直輝の言葉にププッと吹き出す涼夏を軽く横目で一瞥するも、特に悪びれる様子もなくニヤニヤと笑い返されてしまった。
「で、それにしても天使様はいつまで王子様モードなわけ? もうとっくにバレてんだし辞めたら」
「……、ハァ。 なら言わせて貰うけどお前何で居る? 俺達の邪魔だって分からない程馬鹿だったか?」
「だからさっきも言ったじゃん? 祥とたまたま外で会ったんだって」
「ナンパから助けてくれたってな」
「そうそう」
「ふーん。 じゃあ、さっさと役目を終えた人はお帰り下さい? あ、もしかして馬鹿だから出口が分からなかったんですか? 仕方ないから俺が送ってやろうか」
「う〜わ、その顔腹立つ……相変わらず性格捻じ曲がってんね。 中学の時から言ってるけどこんな男の何処が良いんだかさっぱりだわ」
「それは光栄だな。 俺もお前みたいな女は願い下げだ」
悠々と笑顔を浮かべて涼夏をおちょくる直輝は普通は絶対隠す筈なのに、腹黒さを隠すこともせず真っ黒オーラを放っている。
冷めた目つきで涼夏を見ているし、涼夏も涼夏で慣れた悪態にヒラヒラ手を振っては直輝の言葉をスルーしていた。
「害虫女」
「アンタがな!」
「ゴキブリ」
「失礼なやつ」
「髪の毛黒いしちょっとやそっとじゃ死ななそうだからな。 お前にそっくりだろ」
「ふっ、髪が黒くてゴキブリなら、アンタはウジ虫か何かなの?」
「やっぱり馬鹿だろ。 お前知ってんのか? ウジ虫は害虫のゴキブリと違う」
「虫に違いは無いでしょ」
「ゴキジェットでもプレゼントしてやろうか?」
「私は生ゴミでもプレゼントした方がいい?」
この二人、本当は相性良いんだろうな
もう段々、小学生みたいな言い合いになってきたし。未だに続くウジ虫がどうとかこうとか。飲食店だし、少しは場所を弁えた方がいい気がする。
幸いにも周りにはほかのお客さんが居なかったから良かったけど、きっと食事中の人が居たら嫌な気分になってただろう。
「なんか、二人とも小学生みたいだね」
「「は?」」
うん、息もピッタリだ……
喧嘩はしていても仲が悪いわけじゃない事は分かってる。
だからそんな二人のやり取りに慣れている事もあって、特に心配するつもりもない俺は一通り喧嘩が終わるまで大人しく待つ事にした。
涼夏の隣で、パチパチと透明で綺麗な緑色に弾ける粒を見ながらメロンソーダを飲んで平和だったんだ。
──不意に襲ってきた違和感に身じろぐ迄は。
「っ?!」
ビクッ、と肩が揺れる。
机の下で、スリスリと足が何かに撫でられていた。
原因が何かだなんて考えずとも分かりきってる事で。
その違和感の元凶である直輝を睨みつけても、一つも変わった様子はなく涼夏をからかって遊んでいる。
一方、俺は必死に絡めてはヤラシイ触れ方をしてくる足から何とか逃れようと藻掻くも、俺とは違う直輝の長い脚はどんなに逃げても追いかけてきていて、笑みを浮かべながら攻防戦を静かに繰り広げていた。
「ッ、ん」
「祥?」
「あ、ッゃ、……ごめ、何もない。 ッ、メ、ロンソーダが器官に入ったみたい。 アハハ……気にしないで」
変な声が出たせいでどうしたのかと心配してくれた涼夏に慌てて笑い返す。
咳き込む振りして見を屈めると震える体を誤魔化した。
「ッ、……ぅ、ん」
不意に襲ってきた刺激にどうしても声が漏れてしまう。
涼夏がいるって言うのに何考えてんだ直輝!いやもう何も考えて無いんだろうな……
どさくさに紛れて直輝の足が股間に触れてきたお陰で、メロンソーダ迄コップから零れてしまった。
机を拭きながら、グリグリ服の上からアソコを押し潰してくる足の甲を抓ってもビクともしない。
逆に強く押し潰されてしまって、ピクピクと震える体がいつ涼夏に気付かれてしまうか不安が襲い掛かってきて、恨めしさに直輝を睨んでもコッチを見てないから全くの無意味だった。
「ッあぅ、なお……っ!」
「んー?」
「ゃ、め……直輝ッ、」
「変な祥ちゃん。 気分でも悪い?」
「〜〜ッ!」
頬杖付いて首を傾げると、その綺麗な笑顔で見つめてくる。しれっとした顔して、本当に不思議そうなふりするもんだから腹がたって仕方ない。
何が気分でも悪い?だよっ!
このド変態。後で絶対殴ってやる……。
「それで? お前の連れは何時に来るんだよ」
「あっ、そうだそろそろ行かなきゃ! さっきもう少しで駅に着くって連絡来てたんだった」
「っ、涼夏行くの? 送るよ」
「大丈夫、大丈夫! 直ぐそこだし」
「でも、──ぅアッ……!」
「え、祥?!」
「〜〜ッ、ご、ごめッ、っんぅ、大丈夫……ちょっ、と体調、悪いのかもッ」
慌てて立ち上がる涼夏に釣られて立ち上がろうとした時、グラリと眩暈がした。
頭の奥がチカッと光った途端全身の力が抜けていく。一際強く直輝の足が股間をぐりぃっと押し潰してきたせいで、下半身がビクビクと震え出す。
「祥、体調悪いなら座っとけ」
「ッ、はぁ、はぁ……直輝、後で話あるからッ」
「何の話だろ? 楽しみだなぁ」
ニッコリ笑う直輝の顔面にオシボリ投げてやりたい。
さっきまでのイタズラに触れてくるのとは違う衝撃にすっかり腰が抜けた俺はガクリと椅子に座り込むほか無かった。
「祥大丈夫? 本当危なっかしいんだからなぁ……あんまり、色々無理しすぎないでよ? たまには自分の為に休んだりしなね。 友達もすぐそこ迄来てくれるらしいし私は大丈夫だから。 ね?」
「俺が送るよ」
「は?」
「へ?」
「心配なんだろ。 だから俺が送るからいい。 祥ちゃんはそこで少し休んでた方が良いんじゃないのか? それ以前に立てないだろ?」
「〜〜ッ、直輝の馬鹿!」
「ふっ」
まさかの言葉に涼夏も俺もポカーンとしてしまった。
聞き間違いかと思ったけど直輝は立ち上がるとコートに袖を通しながら「早く行くぞ」と涼夏に声をかけている。
俺が今どんな状態か分かっているのか、態と背を向ける時こっちを振り返ってしたり顔で笑うとさっさと出て行ってしまった。
……もう本当、あいつ、絶対許さない!
ゴン、と音を立てて机に突っ伏す。
バクバク五月蝿い心臓は、熱を持った下肢を冷ます間ずっと羞恥に染まり埋まりたくて仕方なかった。
その後暫くして帰ってきた直輝はどうしてか物凄く機嫌が悪かった。涼夏と言い合いしていた時の軽いノリなんてものは無くて、何かあったのか不安になるほど。
だけど何を聞いても応えないし、挙句には「まだアイツのこと好きなの? より戻したい?」とか物凄く馬鹿げた事聞いてくるから。
必死にそんな事ないって言ったのに、ふーんとかそんな気持ちのこもってない返事ばかりで何言っても聞く気無い様子。
結局気づけばお互い喧嘩腰で言い合いをしていた。
珍しく直輝も辛辣な態度で、信じようとしない姿に腹たって言いたい事言えよって突っかかったら「態々二人でいるぐらいだし本当は好きなんじゃね?」とか言うから「くだらない」って俺が言ったのが物凄く気に入らなかったらしい。
そこからはもう全く目も合わせてくれなかった。謝ろうとしても距離取られて、結局そのまま送別会へ辿り付いてしまった。
誰も涼夏を好きだなんて。ヨリを戻したいだなんて言っていないのに。馬鹿だ直輝は。
だけど、全く気持ちを表に出さない直輝が珍しく出してくれたのにそれを"くだらない"だなんて。気持ちを勢いのまま否定した俺は……大馬鹿者だ。
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