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酔っ払いと意地っ張り
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頭がボーとする。
人の動きがブレて見えるし全身熱くて目がやけに潤むから熱の時みたいだ。
「瑞生さん……」
「んー?」
「……直輝、どこですかぁ?」
「直くんならあそこに居るよ? 行く?」
「……」
フワフワしてる中、たった一つだけはっきりしてる気持ちは直輝の側に行きたいってもので、やけに力が入らない体を起こして瑞生さんの指差す方を見たら自然と眉間に皺がよる。
「なんで……」
なんで俺と居た時は全然笑ってくれなかったのに、今はあんなに笑ってるの……
それも屈託無く笑っていていつもの作り笑いなんかじゃない。少し子供っぽく見える俺の大好きな笑顔で、尚更見ていて嫌になる。
「喧嘩したの?」
「へ?」
「直くんと別々に座ってるし一度も話して無いし」
「……知りませんっ。 勝手に女の子とイチャイチャしてればいいんですあんな奴」
「ふっ、本当二人揃って素直じゃないよねぇ」
そんな事、ない。
瑞生さんの言葉にムッとしてダルマ座りして身を縮こませると、ジョッキを手に取った。
「あ、もう飲むなってば」
「嫌だっ」
「祥! 言う事聞きなさい」
「嫌ですッ今日は飲むって決めたの……最後だから良いでしょ瑞生さん……」
「……」
「駄目ですか?」
「そんな目で見られたら許しちゃうんだけど……。 はぁ、後で直くんに何されても俺は知らないからね」
「わーいありがとうございます〜」
「酔っ払いに何言っても無駄か……」
横でゴニョゴニョ聞こえたけど上手く聞き取れなかった。でも笑っていたから大丈夫だろう。
くるんっと横を向いて隣で歌う上機嫌なオーナーに合わせながら、ダルマ座りしている体をユラユラと前後に揺らす。
俺の好きな歌だったから、ニコニコ笑いながら聞いていたら勢い余って後ろに倒れ込んでしまった。その時にゴツっと床に頭を打ってみたいで、脳みそがビリビリする。
「ちょ、祥平気? 凄い音したけど」
「……痛い」
プッ、と吹き出してケラケラ瑞生さんに笑われる。周りにいた先輩達も笑いながら「アホ」と言ってくるから益々眉間に皺が寄った。
アホじゃない……。
それよりも頭痛い。ズキズキする。
「う……痛い……」
ズキズキ後頭部が痛んでクラクラする。隣に直輝が居なくて泣きそうになる。
いつもなら直ぐに「大丈夫?」って笑いながら撫でてくれる手が、隣に無い。
突然物凄く寂しくなって、直輝によしよしして欲しくて周りをキョロキョロ見渡してみても、さっきまで座っていた筈の場所には姿が見えなかった。
「……直輝どこぉ」
「え、祥?」
じわっと目に涙が滲んできて、強く唇を噛んだ。
……帰っちゃったのかな
直輝、もしかしたら先に帰っちゃったのかもしれない。俺のこと嫌になってさっき仲良くしてた女の子ともしかしたら……
「え、ちょっと泣いてるの?」
「……泣いてません」
「そんなに痛かった?」
「……うん……痛い……ッ」
「あははっ、おいで頭撫でてあげる」
「うぅッ、瑞生さんッ」
ふわりと優しく微笑まれて噛み締めていた唇がプルプル震える。泣くな、泣くなって強く手のひらを握りしめた時瑞生さんにおいでって腕を引かれた。
崩れる様にして瑞生さんの肩口に顔を埋めると、シャツを握りしめて痛みに耐える。
……痛い。凄く痛い。
心臓がズキズキして堪らない。
よしよしって撫でてくれる瑞生さんの手は優しい。だけど違くて。俺が知ってる手の温度じゃない。
直輝の手を求めてるのに、直輝の手は今もきっと女の子の手を握ってるんだって思うと泣きそうになった。
さっきチラリと見ちゃったんだ。直輝と真っ赤な顔して笑ってる後輩が手繋いでるのを。
お酒を流し込んで無理矢理無いことにしたのに、その光景がまた頭に浮かんでくるから心臓がもっと痛くなって堪らず胸のあたりを強く握りしめた。
「なお……どこ……」
「あ、直くん居ないね……外かな?」
外……
女の子と外に行ったの?
瑞生さんの言葉が上手く聞き取れなくて頭の中をぐるぐる掻き回す。
キャッキャッて楽しそうに笑ってる後輩と直輝の手が握られてたのも、腕を絡められても笑ってるだけだったのも。
全部全部もしかしたらその子を気に入っていいなぁって思ってたからなのかもしれない。
「みずぎざん……っ」
「んー?」
「直輝に嫌われぢゃっだぁ」
「ん、ん? ちょっと聞き取りにくいんだけどそれは無いと思うよ」
「……」
「それより鼻水ふこっか」
ズズッ、と鼻水を啜っても泣くの我慢してるせいかまた出てくる。
あ……、瑞生さんのシャツについちゃったかも。
チラリと瑞生さんを見上げると目が合って、ゴシゴシ鼻水拭いてくれる瑞生さんに素直に謝った。
「瑞生さん……鼻水ついたぁ」
「え?」
「ごめんなさい」
「ふふっ、大丈夫。 それよりもかなり酔ってるね〜幼稚園児みたいだよ祥」
「酔ってないれす。 幼稚園児も違いますもん……やっと22になったんれすからね!」
「そうだねぇ、も〜可愛いなぁ祥は。 このまま持って帰りたいよ」
「……? 瑞生さんも、可愛い」
可愛い、可愛いって瑞生さんが頭を撫でてくるけど、何だか目の前がグラグラしてよく分からない。それに俺なんかより瑞生さんの方がいつもよりニコニコしていて頬がほんのり赤くて、可愛かった。
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