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酔っ払いと意地っ張り
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「あ……う……俺、悪くらいもん」
「……」
ぐるぐるした世界で直輝の顔が一瞬だけ悲しそうに歪んだ気がした。
「……どうでもいいけど。 ボタン締めるからジッとしてろよ」
「いやらって! 熱いから脱ぐのっ」
「なら外行けば良いだろ」
「行かないッ! 俺、ここにいる……直輝はおんらの子とイチャイチャ、してればいいらんか……直輝にはぁ、関係ないらろ」
「……あのなぁ」
ハァと長く吐かれた溜息。
なんで。なんで、直輝にそんな顔されなきゃならないんだ。
溜息つきたいのはコッチだ馬鹿。
「脱ぐのは許さない」
「うぅっ……なんれらよ!」
「俺の恋人だからだ」
「……ふぇ?」
「お前は、俺の恋人だから。 他人に肌なんか見せるな。 服の下を暴いていいのは俺だけだからだ」
「……」
「分かったなら、とっとと──」
「うるさいッ」
ポチポチ、ボタンをとめ直す直輝の言葉を遮るように両腕を大きく広げると思い切りほっぺたパチンッと挟み込んだ。
「……うるさいんらよ……」
「……」
驚き瞠目している直輝は何が起きたのか分からないって顔で俺を見てくる。その表情が可愛くてププッと吹き出すと頬を掌でぐにぐに揉んだ。
「……おれと、直輝は、付き合ってるろ?」
「付き合ってるだろ。 違うのか?」
「……じゃあ、ハイ、ちゅー」
「ッ、お前──」
付き合ってるんだから、キスしても良いんだよ。
ぐらん、ぐらん揺れてる体で腰を少し上げると直輝に飛びついてキスをした。
ちゅーて何度も口をくっつけて離して、薄くて形のいい唇に歯を這わせて噛み付く。驚いて逃げようとする直輝が気に入らないから手のひらに包んだほっぺたを一層強く挟み込んだ。
「ンッ……ぷはぁ! 直輝とちゅーしていいの、俺らけ……」
「……お前……」
「何してるの、今度は直輝の番らよ」
「は?」
ボケっとしてる直輝にまたムッとする。
俺がしたら今度は直輝が俺にする番なのになんで早くしてくれないのって、モヤモヤ。
「ちゅー、って。 早く俺にも、なおから、ちゅーってしれよ……」
「……」
「……らんで……しれくらないの……」
目線を合わせた直輝の瞳が冷たい。
ああそう言えば、直輝は俺に怒ってるんだっけ?
怒ってる時は態度もいつもよりうんっと傲慢だ。俺のことも「お前」って言うし。俺の名前は俺じゃないー!って喧嘩した事あったなぁ……それ、いつだったかな。ずっと、ずっと昔の記憶だった気がする。
ああもう、直輝は俺のこと、本当に嫌いになったんだろうか。
「……俺のこと嫌い?」
「そんな事言ってないだろ」
「じゃあ……なんで……」
そんな事無いって言っても「好き」とは言ってくれないんだな。
いつも、あんなにもしつこく言ってくるのに。昨日もずっと俺に抱きついて好き好きってライオンみたいにじゃれてきた癖に……もう、俺のこと……ッ
「……昨日は、好きって言ったくせに……俺のこと大好きって言っらくせに……ばーか、直輝らんかどっか行っちゃえ……俺のこと嫌いな直輝らんか、俺も嫌いらもん」
顔、見たくない。目も、合わせたくない。
だって冷たい顔してる直輝怖い。
直輝から離れて直ぐ後ろの角へ移動する。体を丸めて顔を下げた。だるま座りすると両膝におでこをくっつけてうずくまる。
「祥」
「……」
「祥、」
「祥は居ないよ……どっか行っちゃったもん」
「目の前に居るのは?」
「……祥じゃない……直輝が怖いから家出してるろ……心の祥はどっか行ってるもん……直輝のせいだ」
「本当に?」
「……うん」
「じゃあ俺が大〜好きな。 可愛いくて、俺を困らせるのが上手な恋人は目の前にいないのか?」
「……ッ!」
「今、目の前に居たら沢山キスしてやろうと思ったんだけどなぁ。 困ったなぁ……これじゃあキス出来ないな」
「……」
「そっかぁー、なら俺は探しに行かなきゃな……家出しちゃったんならここにいても意味ないしな」
「……うぅ」
「じゃあ俺は家に帰ろうかな」
「え?! ダメ!」
膝から顔を上げて直輝を見上げる。
ああ、怖いから見たくないって目を瞑ったのに、直輝は俺が考えて居たような顔はしていなかった。
「あれ? どうして君が俺を止めるの?」
「……ょ、だから」
「聞こえない」
「家出は嘘だもん!」
「ふーん?」
「でも……嘘じゃない」
「どっちだよ」
「……直輝が、俺のこと嫌いにらったら、心は本当にどっか行っちゃうもん。 痛いの嫌だから、感じたくないから……嫌われたら、もう要らない……心なんか要らない……もうあんな思いしたくない」
「……」
「だから……直輝に嫌われた時は……俺も俺とばいばいする……」
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