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傷だらけのラブソング
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「だから俺は、お前を許してやるって言ってんだ」
「……意味がわからない」
「俺が許したら次はお前が誰かを許すばんって事だろ。簡単なことだろうが。頭が良くてもそういう所本当に疎いなお前は」
起きていることを処理出来ない僕をおいてけぼりにして、龍騎は話を続けた。
そして最後には笑顔を見せた。八重歯が見えるほど、口角を上げて。懐かしい、夏の日差しを感じさせるような風が吹き抜ける笑顔を。
***
「あ! お前こんなところに居たのかよ!」
「……」
「おい、どうしたちんちくりん」
龍騎の笑顔を見てからの記憶がぱったりと無い。いつの間にか僕はブランコの周りを囲む赤色に塗られた手すりに腰をかけていたし。さっきまで冬にしては晴れやかで高かった青空は赤と紫のグラデーションが彩っていた。
「何ボーとしてんだ」
「……」
爽さんこそ何をしているんだ。手紙は読んだんでしょう?もうこの部屋には来ませんって、関わるのは面倒だって僕が置いた手紙読んだんでしょう。
「大丈夫か?」
「……どうして、居るんですか」
「あー? お前の手が必要だからだろうが」
「そうじゃなくて、僕が書いた手紙──」
手紙読んだんでしょう?
そう、問いたかったのに爽さんが声を被せたおかげでかき消されてしまう。
「その話は後だ。勝手に決めてんなよな。俺の意思はガン無視かよ糞野郎」
不機嫌そうに眉を釣り上げて、だけど少し悲しそうな瞳で言うから言い直す事を辞めた僕は乱暴に手を取り勝手に歩き出す爽さんに連れられるがまま歩き続けた。
ずっと問いたかった事は頭の中をグルグルと回るだけで、サラサラと揺れるアッシュブラウンの髪を目で追いかけてはどうしてか口を開くことは出来なかったんだ。
龍騎の言葉がグルグルと首を締め付けたままだから。愛されたい。許す。前に進め。だなんて言うから、どうしたらいいか分からない。どうやって許したらいいか、愛したらいいか分からない。
もしかしたら爽さんのこと、好きかもしれないだなんて怖くて……怖くて怖くて認められないんだ。
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