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伝えぬ想いは掌に還る
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▽旅行1日目の後半。ここからは耀瑞生編になります。2日目になりましたら再び直輝祥へと戻ります。
◇ ◇ ◇ ◇
『夕飯の時間、ずらした方がいいかもなぁ』
親族だと紹介された女将さんに会いにいった耀さんは、部屋へと戻ってくるなりそう言った。
では何しにアンタは女将さんのところへ行っていたのか。そう言ったものを伝えに出たんじゃなかったかと視線で訴えれば、力が抜けてしまうような気の抜けた笑みを返された。
訝し気に耀さんを睥睨していても仕方がない。小さく嘆息すると、「悪いな」といい再び部屋を出ていく後ろ姿を見送った。
「……つまんな」
広く趣のある部屋に一人残されて、今朝からずっと思っていたことがこぼれ落ちる。
庭もついており、四季折々の花が蕾を開き景色が楽しめる。
その上離れにある数個しかない上質な部屋は、各部屋に露天風呂がついていた。時間も人目も気にせずゆっくりと楽しめる。
そんな広すぎる部屋に俺一人。
幸いひとりごちた所で他に誰も聞く人は居ない。聞く耳立てたとしても聞こえやしないだろう。
別に、旅行に不満がある訳では無いんだ。祥や直くん達とこうして遊ぶのは新鮮で、寧ろ楽しいとも言える。
じゃあ何が不満かと問われれば、そんなもの、あの親父以外何物でもない。
陰鬱な思いを晴らす為、気分転換に散歩でも出ようと起き上がったところで気づいた。耀さんはこの事に気づいて気を使ってくれたんだと。
隣の部屋から──祥達が泊まる部屋から──何やら声が聞こえてくる。その色が非常に甘く艶やかな事に気付き、なんだか力が抜けてしまった。
それと同時にふつりと不満が湧き上がった。
「疲れる、ほんと」
力が抜けるままに、へなへなとその場に座りこむ。ぽてっ、と膝を抱え込んで横になると静かに目を閉じ、深い淵からやってきた睡魔に身を委ねた。
「起きたか?」
髪を撫でられる感覚に意識が浮上する。
「ん……え、今何時?」
「七時前。夕飯の時間は三十分後」
寝ぼけ眼のまま辺りを見回し背中がムズ痒くなる。俺が寝ていたのはいつの間にか耀さんの膝の上だった。
女の子でもあるまいし、この歳にして鍛えている男の太股は、柔らかいどころか硬くて寝心地のいいものではない。
それでも触れる手は酷く心地よくて、再び瞼を閉ざすと静かに、大きくて暖かな手に擦り寄った。
「お前のこういうところは本当に猫みてぇだ」
「……うるさいなぁ。黙ってなでてよ」
「猫は我侭が多いもんなのかね」
優しい手つきが少し乱暴なものになる。不満げに見上げると、俺の視線をわかった上で悪戯に笑い、再びわしゃわしゃと撫で付けられた。
「疲れたか?」
「ううん……寝たからへいき」
「まだ眠いなら俺達だけ後で食うように手配するぞ」
「そこまで我侭なつもり無いよ。いくら身内だって言っても最低限の心遣いは大切でしょ」
「まあな。瑞生はいい子だな」
頭に乗っかったままの手を払い睥睨する。そんなことで褒められるほど俺は餓鬼じゃあない。反抗の意を含み頭を撫でる耀さんの手をペチペチと叩いた。
その後は膝の上から身を起こし、着崩れてしまった浴衣の裾を合わせる。
畳の上に視線を落とした時、すぅっとうなじを撫でられ思わず肩を竦めて後ろにいる耀さんを冷めた目で見ると、くつりと喉を鳴らして嫌な笑みを返された。
「瑞生チャンのそーゆー顔、俺好きよ」
「……うっざぁ」
「寝起きはいつも機嫌悪いな」
「からかうなよ。低血圧なんだから」
「嫌がられると、興奮する」
「へ〜、立派なご趣味ですねー」
意地の悪い笑み。
目が合うとより深く悪戯を考えた子供のように無邪気な笑みを見せられて、不意に高鳴る心臓に呆れた。
何見てもかっこいいと思うあたり俺って相当馬鹿だよねぇ……。
「ねぇオジサン」
「おいおい、その呼び方は酷いだろ」
「じゃあおにーさん」
「それはそれで悲しくなるものがあるな……」
何なんだこの人めんどくさい。
注文の多い耀さんに擦り寄り、どうでもいいことをいつまでも考えている男の肩を押すと、その上に跨る。
「おっ? なんだ?」
「夕飯迄、後三十分あるんだろ。なら先にこっちでもお腹いっぱいにしていいでしょ?」
「いやいや〜、流石に」
「若い俺の相手をするのは辛い? 男としても枯れちゃった?」
焚きつけながら、腰に巻いてある帯を解く。
はらりと開いた両方の裾から、既に勃ちあがり初めた肉棒を晒し、腰を前後に揺すった。
「こっちはもう、起きた時から準備出来てるよ耀さん」
「っ、」
仰向けに寝転ぶ耀さんを見下ろして、浴衣を肩迄脱ぎ滑らせる。
うーん、折角なんだから浴衣を着たままセックスしたいかも。全部は脱がない方がきっと、扇情的に映るのではないだろうか?
俺なら、折角の趣あるこの場でするなら着衣を身につけたままことに及びたい。逞しい肉体を浴衣の下に隠してる雄の色香を放つ男をどれだけ本気にさせるかで、頭の中はいっぱいだった。
耀さんが俺と同じ性癖や趣味をしてるかはわからないけど。浴衣の裾が肩を晒し、二の腕の辺りで止まった瞬間──俺の臀部に熱く硬いものが押し付けられた。
これって、誘惑成功ってことだよね?
「耀さんのも元気じゃん。短い時間に何回イケるかな、ね? 耀さん」
「……あんまり煽るなよ瑞生」
先程までの鷹揚とした男とは一変、今はもう獰猛な獣のようだ。
ぞくりとうなじに痺れが走って、自分でもさぞかしだらしない顔を晒しているんだろう。元々セックスは好きだけど、この人と交わるのは、心の底から満たされる。毎回気持ちよくて、怖いぐらい。
だかれ俺はこの、耀さんが好きだ。俺を欲しいと噛み付く様な男が好き。
必死になって、本能の赴くまま体を求めてくれるのは堪らなく愉悦を与えてくれるし愛されてると思える。
こうして煽って試さなきゃ、愛されてるか自信のない浅慮な考えを改めようと思わなかった訳ではない。
この人を信じて居ないということでもない。
ただ、耀さんの悠々と、どっしりと構えている様を隣で見ていると俺だけがいつまでも子供のように思えて、隣にいるのが時間の流れと共に重くなり、いまは少し息苦しくさえ思えていた。
「耀さん、ッ、早く抱いて」
ぺろりと耀さんの唇を舐めとった刹那、返事の代わりに、唇がおしつけられた。
噛み付くように唇を食まれて、口内を蹂躙する舌から唾液が送り込まれる。
一滴も零したくなくて必死に嚥下すると、まるで子供を褒めるかのように頭を撫でられ、気持ちよさにうっとりと眦が垂れた。
「瑞生」
「ん……っ、ぁ」
早急に埋め込まれた楔に全身が歓喜に震え上がる。
喉を反らし、唇を噛み締め、溢れ出る唾液が追いつかずに顎を伝い落ちていった。
その跡を耀さんの舌が追いかけていき、喉仏へと差し掛かった刹那強く歯を立てられる。
「あ……! かが、りさ……っ!」
このまま噛み付かれて息の根を止めてしまうのでは無いかとも思える激しさ、見つめられた情愛の熱さが倒錯的で。耀さんの髪に指を絡ませ強く握り締めると最初の絶頂を迎えた。
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