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カーニバル
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カーニバルの後の気怠い午後。
まだその祭は終わってはないが、碧は一足先に部屋に戻って窓からその様子を眺めていた。
街のそこら中で子供たちの声が聞こえ、アコーディオンが奏でる陽気な音楽が人々を祭に酔わせている。
楽しい空気だけが街を包んでいて、碧は自然と顔を綻ばせていた。
しばらくその様子を眺めていると碧の身体は、その余韻にすっかり心地よく疲れさせられていているのに気づく。
浮かれた気持ちのままさっき食べたたくさんのお菓子や果物で満たされた身体はすぐに微睡みを運んできて、碧は窓から離れると寝る場所を求めて部屋の中に視線を巡らせた。
チョコレート色のタイルの埋められた床、ミントグリーンの壁、紺色のタペストリー、オレンジ色のソファー、古い木で出来たテーブルセット、その上に並ぶ色とりどりのお菓子と瑞々しい果物と花。
碧は徒にテーブルの上の紫色の砂糖菓子をひとつ口に含むと、ソファーへと歩き出す。
壁に掛けられた鏡をふと見てみると、道化師の格好をした自分と目が合った。
左目の下に描かれた涙のメイクはお気に入りで、碧は鏡の前で微笑んでみる。
泣きながら笑うその顔はちょっと不思議で、ああ早くこの姿を見てくれないかなとまだ帰らない部屋の主のことを思う。
外は楽しいカーニバル。
碧は床のタイルを木靴でコツコツと鳴らし、口の中の甘い砂糖菓子を溶かしながらソファーに身を投げた。
肌に馴染む橙色の革のシートに丸まって、近くにあった象牙色のブランケットにくるまる。
開けっ放しにした窓から聞こえる人々が今日の日を喜ぶ賑やかな音を眠りの共にして、碧はゆっくりと瞳を閉じた。
今日は楽しいカーニバル。
早く貴方に会って今日見た美しい全てのものを伝えたい。
そして貴方の笑顔が見たい。
碧は細められる琥珀色の瞳を思い浮かべ柔らかな眠りに落ちていった。
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