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2015/02/14/AM 誤解
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「碧、そんなに緊張しなくていいよ」
「………は、は…いっ」
真冬の休日、大通りを走る車内で碧は車のシートにその身体を収めて所在なげに時折流れる風景を目で追っては俯いていた。
緊張するなと言っても無駄なことはわかっていたが、何も声を掛けないよりはいいかと思ってそう言ったものの、碧は相変わらず膝の上に拳を作って小さくなって固まっている。
「今日は駅に車を置いて電車で行こうと思っているんだ…たまには電車もいいでしょ?」
「は、はい…っ、嬉しい…です」
僕は碧のあまりの緊張に思わず笑ってしまった。
きっと何を言っても意味の無さそうな碧に一応大洗先生が僕にとってどんな存在か軽く伝えておこうと思う。
言葉だけでは理解は難しいだろうけど、何も知らずにいきなり会わせるのもあまりに不親切だと思ったからだ。
「大洗先生はね、僕の大学の時の恩師なんだ」
「…………」
「当時とても人気のある准教授でね、僕の理解者のような人なんだ」
「理解者…ですか?」
「そう、僕の本質もわかってくれる人でね……だから碧と同じだよ」
「!」
黙ってしまった碧に『碧と同じ』という表現はちょっと誤解を生んだのかもしれないと一瞬左を見ると、真っ赤にした碧の顔が視界の端に映りまた僕は笑みを漏らした。
どうやら既にすっかりと誤解をしているみたいだ。
訂正してもよかったが、僕とまだ見ぬ大洗先生との情事を想像しているであろう真っ赤な碧が可愛らしくて僕は何も言わなかった。
あの艶のある黒髪を纏う小さな頭の中で僕はどんな姿で乱れているのだろうと思うと、それはそれでとても心地のいい興奮を生んだからだ。
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