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2015/02/14/AM 赤信号
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「……ち、違い……ます……っ………!」
碧の絞り出すような細い声。
「?」
「………それは……その…詳しいことは……先生と…大洗さんとの……大切な思い出……だから」
「!」
「先生が教えてくれるなら………ですけど……俺が……自分から興味で……聞くのは……いけないことだと…思って……」
「…………」
碧の予想外の言葉に僕は思わず言葉を無くした。
碧の考えは僕の思っていた下らない嫉妬などの先に存在していた。
きっと碧は自分の欲求よりも、僕という人間、そして会ったことのない大洗先生の人権を尊重したのだ。
幼い碧にそこまでの意識はないのかもしれないけれど、僕と大洗先生の過ごした時間を、碧が大切にしてくれているのだ。
碧の言葉を信じれば、興味がないわけじゃないらしい。
確かにあの真っ赤に染めた頬が僕と大洗先生の事を想像しているのは明らかで、最初にその関係がいつまでのものだと聞いてきたのは碧の方からであるわけだから、全く興味がないことはないと考えるのが自然だろう。
『気にならない』のではなく、『気にしない』と言った碧の言葉には自制心が含まれているのかもしれない。
そんな事を言われてしまったら、困ってしまう。
下らない悪戯、大人げない嘘。
碧はそうやっていつも、その細い身体を震わせて自分よりも僕を選ぶのだ。
「へ、変なこと……聞いちゃって……すみません…」
僕は僕が好きじゃない。
改めてそう思う。
自分の気持ちや思いより何よりも僕を優先する碧の愛情が、醜い僕を追い詰める。
汚したと思っても穢れることなどない、美しい碧。
碧がこんな僕を愛してくれるから、何とか僕は僕でいられる。
僕たちの関係は、いや、僕は。
碧の存在に支えられているというのに。
「…………冗談が過ぎたね」
「え?」
「僕が好きなのは碧だよ」
「!」
横目で見た碧の顔はさっきまでの会話の中で一番赤く染まっていた。
大洗先生との事を伝えようと思っていたのに、次に信号が碧の頬の同じ色になったら恥ずかしがる唇を塞いでしまおう、そんな事が頭を占領して僕はひとり微笑んだ。
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