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2015/02/14/PM Hot chocolate
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今日はもし酒を飲むことになってもいいようにと、電車での移動を考えていた。
大洗先生との会話には上等でアルコール度数の高い酒を少しだけ嗜むのがよく似合う。
一気に飲み干すのではなく、口の中で香りが立つまで温めてそれを時間をかけてゆっくりと飲み込む。
鼻に抜ける豊潤な香りと喉を焦がしながら熱い液体が自分の身体に吸い込まれていくその感覚が、大洗先生との会話とどこか似ているような気がするのだ。
今日は碧と先生の連れる少年がいるから多分あまり飲むことはないのだろうが、最初からそうしようと思っていたそのままのルートで待ち合わせのホテルへ向かう。
碧と電車で移動するのはなんだか新鮮で僕は駅の売店でミルクチョコレートを一枚買ってみる。
少々子供じみていたかなと買ってすぐに後悔したが、手渡した途端にぱっと表情を明るくした碧を見て少し安心した。
「……ちょ、チョコレート貰っていんですか?」
そう言いながら宝物でも貰ったみたいに頬を赤らめる碧を見て、何のことだかよくわからず頷いたが、目的地に近づくにつれ揃えたように小さな紙袋を持つ若いカップルの姿を見て、今日がバレタインデーというイベントが行われている日だと気づいて碧の反応に納得した。
碧が車に置きっぱなしにしていいと言ったあの紙袋もきっとそういう意味のものなのだろう。
大事そうにしまったポケットの中の板チョコに微笑む碧が少し不憫になって声を掛ける。
「碧、それはただのおやつだよ」
「え?」
隣に座りぴくっと身体を揺らした碧に耳打ちをする。
「……帰ったらもっといいチョコレートをいっぱい食べさせてあげる」
そう誰にも聞こえないようにゆっくりと耳許で囁いてやると、何か艶かしいものを想像したのか碧は急に顔を赤くして俯いた。
へえ。
碧も少しは大人になったのかもしれない。
以前まではきっと言葉通り、チョコレートを食べるだけを想像して子供らしく喜んだだけだったろうが、今の碧には、僕が碧の体温で溶けた純度の高いチョコレートをその小さな口に何度も味あわせている姿がちゃんと浮かんでいるのかもしれない。
甘い香りと悩ましい碧の身体。
媚薬のようなそれを身体を纏わせて、劣情に震え僕を欲しがる碧の姿が、碧の頭の中にも映っているのかと思ったらそれはとても喜ばしい。
「そうだ…中に白いチョコレートを入れて……それがゆっくりと溶けていくのを見ているのもいいね」
「!」
また顔を出した悪戯心でそう言葉を続けてみると、碧は瞳を大きく上げて固まる。
碧の中で膨らむ淫らな想像を掻き立てるように、僕は耳許でそっと吐息を漏らしてみる。
久しぶりに乗った電車のエアーコンディショナーは外気温よりとても高い設定になっていて、コートを着たままの僕らには不快感を覚えるほど暑かった。
ただでさえ蒸してしまうくらいなのに碧は更に顔を赤くし徐々に体温を上げていた。
「ふふ……こんなところで何を想像しているの?」
碧の白い耳朶がピクンと揺れる。
「白いホットチョコレートも美味しそうだなと思っただけだよ」
たっぷりと時間をかけてそう囁いてから体勢を戻すと、真っ赤なまま俯く碧。
きっと勝手にしてしまった淫らな想像を恥じているのだろう。
ぎゅっと閉じた瞳が痛々しいくらいの後悔を表していて、それが可哀想でいじらしい。
ああ、なんて可愛らしいのだろう。
もしかしたら碧に会ってみたいと仰って下さった大洗先生の目には今の碧はまだまだに映ってしまうかもしれないが、僕にとってこの碧の従順であろうとしている癖にいつまで経ってもなかなか染まれない部分もまた碧の魅力の一部に思えるのだ。
そして思いを馳せる。
大洗先生が連れるその『潤』という名の少年はどんなに従順で美しく可愛らしいのだろう。
あの大洗先生にあんな瞳をさせる彼は先生にとって、どんな存在なのだろうと、僕はそんなことを思わずにはいられなかった。
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