アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
金鳳花 8
-
白い男が荒い息を繰り返していると
ジャラッ
鋼の揺れる音がした
男がハッと表情を変えると共に
キーン
と鳴り止んでいた鋼の音が次第に大きくなり
音はそのまま鳴り続ける
「くっぅ」
男が苦しそうに小さく呻くと
膝から崩れ落ち
左腕を抱えてそのまま蹲る
*
*
*
シューシューと煙りをあげていた鶯の鬼
消え入りそうであったその息遣いが
次第に荒々しくなり
その胸を大きく動かしはじめた
うっすら開いていた目が瞬きを繰り返し
力無く投げ出していた手足がピクリと動いた
その時
「ぐあっ…ぐぐ………くぅぅ」
鬼が顔を歪めて呻く
視線を正面に向けて
生気の戻った鋭い目でそれを睨む
呻く鶯の鬼の首に
大きく紅い肌をした鬼の手が
その喉をギリギリと絞め付けていた
紅い手の鋭い爪が鶯の肉に食い込む
ジャラリ
紅い腕に巻き付いた鋼の鎖が音を鳴らす
「ぐうぅぅ」
まだ覚醒したばかりの鶯の鬼は
歯を喰い縛り耐えるだけで苦し気である
その瞳に映る者の姿は
紛れもない白い男の姿であった
鶯の鬼の喉を絞める紅い鬼の腕は
白い男の左袖から鎖に巻かれて伸びていた
白い髪は少し逆立ち
隠れていた顔の左反面が露になっている
鶯の鬼を睨んだ左目は血のように赤く
その左頬には鬼にしかない鬼証が
血管の様に浮き出ていた
先程の行為で赤く濡れた口許が
白い肌に不気味に笑う
『死に損ないが』
間違いなく男の口から発せられたその声は
白い男の声とはまったく別人の声だった
「き………さまっ………」
鶯の鬼は目を見開いて白い男の赤い目を睨み
絞り出す様に言った
まだ形の戻らない
骨を剥き出しにした手で
紅い鬼の手首を掴む
白い男の赤い目が
鶯の鬼の手に一瞬気を取られた時だった
『ぬぅっ………姫………イチ……』
『邪魔をするな!!』
白い男の姿をもつ鬼が顔を歪めて声を荒げる
力の緩んだ紅い手から
逃れる様に鶯の鬼はよろめきながら
立ち上がると男との距離を取った
白い男はその場で荒い息を繰り返す
ギチギチと
紅い腕に巻き付いた鋼の鎖が
まるで蛇の様にその腕を絞め上げるのが見えた
「焔〈エン〉………止めろ」
乱れる呼吸の間に白い男の声がした
男は右手で左腕を隠す様に着物を正し
其処をグッと右手で掴む
キーンと鳴り続けていた鋼
その音が消えると
白い男の体がその場にドサッと崩れ落ちた
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 27