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.(美影side)
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辺りがざわざわと騒がしい。
校門の前で美影は顔を顰めた。
はっきり言ってうるさい。
こういうのは囃されるのが好きな奴にでもやればいい。少なくとも、俺は望んでないからやめていただきたい。かと言って、そう簡単になくなるようなものでないことは知っているけれど。
「そんなあからさまに嫌そうな顔してー。ちょっとは演技でも、嬉しそうな顔しときなよ美影」
うるさい奴が増えた...。
陽気な声と共に現れたのは瀬奈茅影。大変、大変不本意だが俺の兄だ。
「俺は普通だ。お前が甘すぎなんだよ茅影」
茅影はとにかくチャラい。いつも女子を侍らせているし、時には男をも侍らせてることがあるくらいだ。特定のは作らない主義だと語っているがかと言って誰とでも、というのはあまり好ましくないと思う。まぁ茅影の人生なのだから好きに生きてもいいのだろうが、将来恨みを買って殺されそうな気がする。
「冷たいなー、お兄ちゃん泣いちゃう」
「泣いとけ。俺は知らん」
シクシクと泣き真似をする茅影。その仕草は茅影がやるとはっきり言って気色悪くて、茅影を見ないようにして踵を返した。
「捺稀!待ってって転ぶから!」
ドンッ
「おわっ」
軽い衝撃。目に映るのはミルクティー色の髪。感じるのは咄嗟に抱き締めた人肌の温もり。
「わっご、ごめんなさい!俺、ちゃんと見てなくて...」
整った顔立ちと中性的な声。
一人称が俺だということを考えれば、男なのだろうが、一瞬女かと思ってしまった。
動揺しているのか揺れ動く暗く淀んだ茶色の瞳。
その瞳の焦点は合っていなくて、どこを見ているのか視線は宙を彷徨いながら、その薄い唇からは謝罪の言葉が述べられる。
「いや、別に平気だけど...そっちこそ怪我は...?」
「あ...」
「兄ちゃん!ごめんねー先行っちゃって。怪我とかしてない?教室行こっか」
口を開きかけた男の言葉を遮った可愛らしい声。ふと目をやると、想像とは違った長身の男が一人。
「捺稀!もう、人にもぶつかっちゃったじゃん!本当にごめんなさい!さようなら」
知り合いだったらしい。ペコリと一度頭を下げて去っていく男。
俺はしばらく放心していた...。
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