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それから
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「…っ…藤川!」
突然名前を呼ばれて、思い切り腕を引っ張られた。
遠のきかけた意識が戻る。
「え……」
瞬間、目の前を電車が通過した。
それはもう、目の覚めるようなスピードで。
瞬く間に過ぎ去ったはずの列車の音が、まだ耳の中で聞こえている気がした。
「バカ!もう少しで撥ねられるところだったんだぞ!?」
そのまま立ち尽くしていると、明らかに俺に向けられた怒鳴り声。
ズキン、と頭が痛んで、風邪をひいていたことを嫌でも思い出す。
全身を襲うだるさにうんざりしながらも、声のする方を振り向いた。
「…真山…?」
少し前のセリフを頭が勝手に反芻して、さっきの電車は、この駅を通過する快速だったことに気付く。
もし、あのまま線路に落ちてたら…そしてあの時、咄嗟に俺を助けてくれたのは真山だった。
「…わりぃ…サンキュ」
驚いたけど、反射的にお礼を言う。
でも、真山があんなでかい声出すなんて。
「…よかった、無事で。怪我してないか?」
「え…あぁ、大丈夫」
なんだこれ。
真山が思ってたより優しい。
ほとんど話したことないのに。
「風邪ひいてるみたいだったから気になってたんだけど…まさかそれでふらついたのか?」
「あー、うん…ちょっとクラクラして…」
「なんでもっと早く病院に行かないんだ」
「…こんな急に悪化すると思わなくて…」
ぼそぼそと言い訳をしていると、ホームに電車がやって来る。
方向も同じだから、とりあえず一緒に乗り込んだ。
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