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回顧
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ドクドクと胸が音を立てている。
幸二が、フィルム2本分も撮ったものが、一体何だったのか、この封筒を開ければ判るのだ。
ー兄ちゃん
緊張で、両手が震えた。
「じゃあ、開けるよ?」
おっとりとした孫の動作を見るのさえ、今の自分には苦しい。
信吉は右手で胸を押さえた。
「わぁ!見てっ」
視界を埋め尽くしたのは、無数の笑顔だった。
「ねぇ、これって。じいちゃん、だよね?」
興奮しているのか、孫の大きな目が更に大きく開いている。
画面の中心で、眩しいくらい、無邪気に笑っている子供。それは、かつての自分……。
「すごいね。とっても上手だし。それに何より、写ってる人、皆しあわせそうだ」
言われてみれば。
写真に写ってる人たちは、どこか皆安心したような、穏やかな表情をしている。
「そういう人やった。兄ちゃんは」
いつの間にか、他人の懐に入り込んでしまう。
「そげなとこだけは、親父に似とったんかもしれんなぁ」
表に現れる性格は真逆だったが、底に流れている本質は似通っている。親子とは、そうしたものなのかもしれない。
久しぶりにゆっくりとしあわせな頃へと思いを馳せてみた。
「あのさ、じいちゃん。幸二さんて、本当に、じいちゃんと血のつながってるお兄さんだったんだよね?」
「あぁ、間違い無い」
「だったらさ、この住所、どこだか判る?」
いつになく硬い表情で孫が差し出したハガキには、流麗な筆跡で見知らぬ住所がしるされていた。
「これは?」
「フィルムが入ってた箱の底にあったんだ。もしかしたら、お兄さんの知り合いかもしれない。少し、ネットで調べてみたら。今もこの人の家族がここに住んでるみたいなんだ」
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