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宮入
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突然、目の前に鮮やかな黄色が迫ってきた。
「おいっ!!結城、早く来い。」
有無を言わさず、ぼくを引っ張る強い腕。
コレは、たぶん、長峰くんだ。
知らない内に、僕らの町の屋台は、商店街を抜け、カメラ店の前の曲がり角に入っていた。
もうすぐ、鳥居が見える。
「早く口上言ってくれ。それから何処へでも行けよ。」
…ああ、そうだ。
今は祭りに集中しなくちゃ。
「三番手、新町。宮入準備、整いまして候。」
「整いまして候!!」
精一杯張り上げた僕の声に合わせて、担ぎ手の皆が声を上げる。
「行っくぞおっ!!」
鳥居をくぐった屋台が、急な石の階段を上り始める。
「おい、後ろー!何やっとる?!もっと押せやーっ!!」
「前はそのまま、真っ直ぐ。声に合わせて、進め!!」
危険極まりない、この祭り一番の見せ場。
それが、この階段上りだ。
男の意地というか
凄まじい気迫が、ジリジリと神社の本殿前へと上がってゆくのを、観客は固唾を飲んで見守る。
ぼくも、町の人の行列の一番後ろから、揺れつつも少しずつ上がって行く屋台の屋根の金鯱を見ていた。
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