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真剣
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この手をとれば…帰れるのかな?
―でも。
また同じ毎日が、始まってしまうだけじゃないか!?
嫁だの。
歳だの。
絶食系だの。
比べられて、貶められて、笑われる。
「もう、ほっといてよっ!!」
振り払って、全力で逆方向へ走り出したのに、余裕でついてくる。
―ムカつく俊足!
そういや、陸上部だったっけ。
「ひとりじゃねえよ!」
思わぬ大声に、ピタリと足が止まった。
―えっ?
「だから!お前は1人じゃねえってばっ!!」
―どういうこと!?
「もうずっと前、中学入った頃から、米田さんは気付いてたって。」
「っ!?」
―バレてた!?
青ざめたぼくを見て、長峰くんは頭をかいた。
「―運動会でさ、仮病使ったろ?やっぱネックは組体操だよな、って。崎谷さんも、スッゲー心配してたんだぞ?」
凍り付いたままのぼくに、優しい言葉が染み込んだ。
「今日だって、水沢さんがメールしてくんなきゃ、捕まえらんないとこだったんだからな?」
―え…?
まさか、あの人が!?
「まさか、ってか?だけど、マジだ。結城が1人で黙々と歩いてコッチ向かってる。もしかしたら、って報せがあった。」
「なんで…」
急に存在感を増した幼友達は、小さな呟きも聞き逃さなかった。
「さあ。なんでだろーなぁ?とりま、帰ろーぜ。」
「やだよ。」
「じいちゃんだったら、とっくに寝てるだろ?」
そういう問題じゃない。
「決めたんだ。ぼくは帰らない。」
「そこ、行く気なのか?」
メモを見て、長峰くんが顔をしかめた。
「いや、そういう訳じゃ…。」
口ごもると、畳み掛けるように都合が良い言葉ばかりが、降ってきた。
「なぁ。せめて、行き先くらい、決めてからにしろよ。それまで、ウチに泊めてやるからさ。」
泊まるったって、長峰くんちは、ぼくの家から5分も離れてない。
「絶対にバレるし。意味ナイじゃん?」
クルリとコッチを向いた目は、真剣だった。
「…俺が、ひとりにしたくないんだ。」
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