アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
因縁
-
翌朝。
まだ早い内から、ぼくに会いにやって来たのは。
じいちゃんと米田さんていう、変な取り合わせの2人だった。
「ワシの親父はな。九州の出で、有名な祭り狂いじゃった。」
ぼくの顔を見るなり、じいちゃんが話し出した。
「祭りが近い頃になるとな、やれ寄り合いじゃ、練習じゃ、言うてな、家に帰って来ん。祭りが終わって、何日がたってやっと、帰って来る。そんなバカちんじゃった。」
じいちゃんの生まれは九州だって、母さんにきいた事があった。
たしか、中学を出てすぐ、お兄さんを頼ってこの町へ来たって…
―あれっ?
でも。ぼく、そのお兄さんって人にも、その家族にも一度も会った事が無いよね?
「ワシと兄貴は、血の繋がらん兄弟でな。せやが、兄貴はワシの面倒をようみてくれる優しい人じゃった。ワシをあのデタラメな親父から、引き離してくれた…。」
―へぇ。
デタラメか…。
じいちゃんは、父親に対して強い憎しみを持ってるみたいだ。
「それで?」
「一緒に住んでおったんは、少しの間でな。ある日、フラッと居らんようになった。ちょうど、祭りの屋台の仕込みが始まるいう頃にな。誰に訊いても判らん。手がかりも全く無い。まるで風に吹かれて消えたみたいじゃって、そう皆が言うた。」
―消えた?
「信哉も、兄貴も、親父とは真逆でな。口には出さんやったが、祭りを嫌がっとった。」
信哉と言うのは、ぼくの父親のことだ。
そんな話、今はじめて聞いた。
「なんで…?」
言いながらも、ぼくは解っていた。
「たぶん、おまえと同じ理由だろうな。」
重々しく米田さんが言った。
―ぼく、だけじゃない?
ゆっくり顔をあげると、長峰くんと目が合った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
18 / 48