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一筋の光
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*・*・*
「──そっか、やっぱり認めちゃったからだったのか…」
「……うん」
俺と歩人は今、中庭の大きな木の下のベンチで人1人分の距離を空けて座っている
さわさわと木漏れ日と葉々が揺れる中、歩人は依然として、何もかも空っぽのままだった
…歩人は実は、あの悪ノリ野郎との事件のすぐ後に、心の中ですでに告白をしていたらしい
いつかこの気持ちはなくなるだろう、と思い素直になってしまった、とのこと
そのことを昨日俺とミ話して思い出し、あれだけ長い間経ってもまだ想い続けていたんだ、と気持ちにうそをつき続けるのをやめた
緒方は「男」である自分を決して好きにならない、それでも「好き」だと何度も言葉にしてしまい、ついに抑えていたものが決壊して溢れ出てしまった、と…
「…あのさ…」
「ん?」
「何でいつもみたいにからかったりしねぇの?」
「…そうされたかった?」
「そんな趣味はない…けど、普段の慧となんかちょっとちがうから…」
あー…うん、どちらかというとこっちのが本来の俺なんだけどね…
でも、そんなこと歩人には死んでも言えない
「…失恋した気分になってる友人からかったら、流石に人としてアウトだろ
俺だってそれくらいの分別はあるつもりさ」
「…ちがう、”気分”なんかじゃない」
「……。」
「失恋はもう、決まってたようなもんなんだ
自覚した時点ですぐに散るような、どうしようもない恋だっ…く…ずっ…うぅ…」
「…お、おい…泣くなよ…!」
「…だって、慧…ぅ…無駄に優しくしてくんだもんっ!ごんな…ズッ…落ち着けるどころ連れてきて…また、話、聞いて…」
ぽたぽたと止めどなく涙を流す歩人に、痛いほど胸が締め付けられる
(……。)
歩人はきっと…
その気持ちが恋だと気付いても、完全に花開いてしまうのは半ば無意識のうちにセーブし続けてしまっていたんだろう
”こう”なることが分かっていたから…
八分咲き、九分咲きときて、そうなる度に抑え込んで…
半年近くもずっと、そう耐えたまま…
(……。)
この…細くて今にも壊れてしまいそうな身体を、思いっきり優しく抱きしめてやりたかった
でもそれは、俺が今すべきことじゃない、とぐっと堪える
じゃあ、何をすべきなのか?
(……。)
…俺が、歩人と緒方の間に見えた「可能性」を伝えるんだ
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