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大禍時
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「…何でも、ないよ…」
「……。」
…顔色が良くない。凍えて震えてるような、そんな顔
何でもなくないのは、すぐ分かった
「……。」
さっき緒方が見ていた方向へ目をやると
…真っ暗で、静まりかえった階段の踊り場
(……。)
…暗いところが苦手なんだろう
あの部屋も陽はそこまで入ってこないけど、薄暗いって程度
けれど、俺たち2人が見ているそこは、鬱蒼としていて底が見えにくいほどの暗さ
『…いないの、誰も』
『久しぶりに学校来て、たくさん人がいてわいわいしてて』
『家、帰ると…』
(……。)
…改めて、緒方の気持ちが分かった気がした
暗い、ってだけが単純にこわいんじゃない
たぶん緒方は、明るかったり人がいたり、そういう記憶のある場所が音もなく暗いのが苦手なんだ…
…ずっと両親と一緒にいたところが、帰る場所が1人きりになってしまったら、そんな風に思えてしまうのは不思議ではない気がする
「…あ、行かなきゃ…」
「……。」
足がすくんでる。よっぽどこわいのだろう
「…緒方」
「え…」
…ゆっくりと緒方へと近づき、右手を、そっと差し出した
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