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【後日談】一夜の夢、一生の誓い …18
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帰りの支度を終えたマキさんにも気付かず、俺は姿見と睨めっこしていた。
俺、やっぱり変じゃない?
このまま外に出て行く勇気も自信も…
湧いて来ない。
そんな俺にマキさんが「佐藤くん」と声をかけてきた。
振り向くと、マキさんがスマホに耳を当てて誰かと通話しているようだった。
「……あ!お疲れ様です。牧村ですー。今、だいじょう…あ、ハイ!写真送ったんですけど、どうでし……あ、ですよね!ですよねっ!…ありがとうございます!…はい。それ、本人に言ってもらえないですか?何か自信がないみたいで。今、隣に……はい。…はい!」
誰かと話し出したマキさんは、耳に当てていたスマホを俺に差し出した。
「はい。篠崎店長だよ。実は、出来上がりの佐藤くんの写真をさっきメールで送っといたんだ」
「えっ?」
遥香さん?
グイッとスマホを押し付けられて条件反射で受け取ると、通話口から『もしもーし』と声が聞こえてきた。
「あ、はい…」
そろりとスマホを耳に当てると、遥香さんの興奮した声が聞こえてきた。
『あ、陸くん?写真見たわよー!すごい良いじゃない!完璧!かなり可愛い!』
「あ、ありがとうございます。あの…ホントに色々とお世話になってしまって…」
『いいの、いいの!何てったって、陸くんは私の弟みたいなもんだし!遠慮はいらないわ!あー!雅くんの驚く顔が見たい!きっとメロメロよ!メロメロ!うわ!なにそれ!超見てみたい!雅くんのそんな顔、超見てみたい!ちょっと今からそっち行って、影から観察してようかな…』
め…メロメロ?
想像出来ないけど…
遥香さんの言葉に戸惑っていると、さらに遥香さんは続けた。
『自信がないなんて言わないでね?堂々としてれば大丈夫だから。変にコソコソしてる方が目立つよ?私を信じて。ね?だってホントに変なら、姉としてそんな子と弟を並んで歩かせたりしないわよ。でしょ?』
「あ…」
言われていることは最もだ。
俺の見た目が変なら…そんな子と身内が一緒に歩くのなんて、嫌な筈。
『ね?…今日のこと、雅くんもすごく楽しみにしてると思うし。あー、そうだ。もし、雅くんが色々ワガママ言っても、付き合ってあげてね?…雅くんを…宜しくね?』
「え?あっ…あの、こちらこそ」
雅治さんが我儘を?
んん?
何かよく分からないけど、宜しくされちゃった。
とりあえず、遥香さんとの会話は、俺に不思議な自信を与えてくれた。
通話を終えると、マキさんから「良い顔になったね。さぁ、悔いの残らないように楽しんでおいで!」と、背中にバシリと気合を入れられた。
マキさんは、仕事の残りがあるからと、すぐにお店に帰って行った。
「はぁぁ〜…」
一人になった部屋で、最初に出たのはため息。
少し震えているのは緊張のせいかもしれない。
しばらく鏡の前から動けずにいると、雅治さんからスマホにメッセージが届いた。
"予定通り退社出来そうです。約束の時間通りに、駅で。"
ただの文面なのに、ドキリとした。
雅治さんと、もうすぐ会う。
こんな俺を見たら、どう思うか。
それ以前に、気付いてくれるのか。
気付いたとして…受け入れてくれるのか。
色んなことがモヤモヤして、ドキドキして…
俺はバッグから紙袋を取り出した。
それは、マキさんからもらった、クリスマスプレゼント。
一緒に入っていたマキさんのメモ曰く「さらに女になるため」の…あるアイテム。
雅治さんが喜ぶから、と言うより、完全な自己満足かもしれない。
けど、俺はそれを試してみたくてウズウズしていた。
いや、ある意味、この日が来る前に試してはみたんだけど。
雅治さんと会う時に…今日この日に…使ってみたくて。
「はぁ…」
ため息と言うか、小さく深呼吸を一つして、俺はその紙袋の中身を取り出した。
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